【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
「そのための合同演習だ。詳細なスケジュールは別途展開する。具体的な打ち合わせを行うので、中隊長と補佐は残ってくれ。他、解散!」
飛行隊のメンバーが退出する中、中隊長のユイとナユ、そして補佐のレイとゴウガの四人が残った。
「事情は分かった。よろしくな、えーっと……シャルル様?」
「トロワでいいよ、三沢ゴウガ2等武尉」
「おう、俺もゴウガでいい。よろしく、トロワ」
ゴウガとトロワが力強く握手を交わす。ユイとレイの二人は、既にトロワを連れて皇都から『かが』まで戻る道中で面識があった。
そんな中、それまで黙っていた三沢姉弟の姉の方が、突如弟を乱暴に突き飛ばした。
「どわっ!?」
「あ、あの……私、三沢ナユ1等武尉です。……ナユって呼んでください……」
「ああ、よろしくお願いします、ナユさん」
ゴウガへの雑な扱いとは打って変わり、頬を赤らめながらしとやかに握手をするナユ。
「ね、姉さん……?」
床に尻もちをついたゴウガは、信じられないものを見るような目を向けた。これほど乙女な姉を見たのは生まれて初めてだ。やはり、世の中は顔なのか。
その後、フランクス軍局所泡艦隊の打撃空母『シャルル・ド・ゴール』、駆逐艦2隻、フリゲート4隻が皇国軍第04護衛隊群と合流。ホーロー国星系外縁部において、祖国奪還を掲げた凄まじい密度の合同演習が開始された。
――
『かが』艦内の通路を、ゴウガとトロワが並んで歩く。演習開始以来、レイを加えた三人で行動を共にすることが多くなっていた。
二人が先ほどの模擬戦の反省を語り合っていると、行く手に一人の少女が腕を組んで立ちはだかる。
「よしっ! 次は剣道場で一汗かこうぜ!」
しかし、それに気づかないゴウガは親しげにトロワの肩に腕を回す。
「そこの下賎な者! 陛下からその汚い腕を放しなさい!!」
少女は美しい金髪の縦ロールを揺らし、フランクス軍の制服に身を包んでいた。ドレスを着ていればさぞ高貴なお嬢様に見えるだろうが、今はその毅然とした態度が上回っている。
彼女の名前はデルフィーヌ・ランディヴィジオ。階級は中尉、トロワの副官だ。
「誰が下賎だ、誰が」
「貴方よ。ア・ナ・タ。早く陛下を放しなさい。馴れ馴れしいにも程がありますわ」
「あ゛? なんだぁてめぇ……」
「アナタこそ何なんですの?」
ゴウガとデルフィーヌは至近距離で激しく睨み合う。火花が散りそうな勢いだ。
「まあまあ、二人とも落ち着いて」
「陛下! 失礼いたしました」
トロワが苦笑して仲裁に入ると、デルフィーヌは一瞬で態度を軟化させ、満面の笑みで敬礼した。
「“陛下”はやめて。今は単なるトロワだからね。フィーにもそう扱ってほしいな」
「分かりました! へい……じゃなくて、トロワ様!」
「様も要らないんだけどね。まあいいか。ところで、何か用だったんじゃないのかい?」
愛称のフィーと呼ばれて舞い上がっていたデルフィーヌは、ようやく本来の目的を思い出した。
「あ、トロワ様! 横田ユイ1等武尉がお呼びです。第二食堂で今後の打ち合わせをしたいとのこと」
「分かった。ありがとう、フィー。一緒に行こう」
「はい! トロワ様!」
華やかな二人だけの世界を作って立ち去る様子を、置いてけぼりのゴウガが虚しく見送る。
「なんなんだ、一体……」