【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-C

「こ、これは……伝説のカツドゥーン!」

 

 第二食堂では、ユイ、レイ、ナユ、そして横須賀リンが遅めの昼食を囲んでいた。テーブルには、後から到着したトロワ、デルフィーヌ、ゴウガの分の丼も用意されている。

 

「ドゥーン? 単なるカツ丼だよ、トロワ」

 

 湯気を立てる丼を前に、レイが呆れたように答える。当然、レイのお手製だ。

 

「で、でもカツドゥーンといえば、取り調べ室でデカさんに奢ってもらうものでは?」

「いつの時代のドラマだよ……」

 

 どうやらトロワは皇国語を習得する際、旧時代の刑事ドラマやアニメを教材にしたらしい。その独特な偏見に、ゴウガがなぜか「分かってるじゃねえか」とニヤリとした。

 

 揚げたてサクサクのトンカツに、甘じょっぱい割下と半熟の卵が絡む。全員が箸を動かし始めると、食堂に心地よい静寂が訪れた。

 

「お、美味しい! トレビアンだよ、レイ!」

 

 トロワは器用に箸を使い、デルフィーヌも匙を併用しながら上品に食べ進める。ゴウガは言わずもがな、無心でかき込んでいた。

 

「どうも。でも、皇居でもっと豪華なものを食べてきたんだろ?」

「皇居の食事も素晴らしかったけど、あちらは高級料理ばかりだったからね……。こういう丼ものは出なかったよ」

「なるほどね」

 

 国賓扱いでの会食では、気楽に丼を啜るわけにもいかないだろう。味よりも緊張が勝っていたトロワにとって、このカツ丼は最高のチョイスだったようだ。

 

 

 食後の賑やかな時間は短く切り上げられ、本題の会議が始まった。第二食堂の一角をパーテーションで区切り、ユイが進行を務める。

 

「今回の議題は、皇軍とフランクス軍のHF隊連携についてです。管制を担当する、第402人型術式作戦隊の横須賀リン1等術尉、お願いします」

 

 リンが立ち上がり、空中にナノボットのスクリーンを展開した。

 

 これまでは両軍別々の管制システムを用いていたが、先日の合同訓練で連携の齟齬が浮き彫りになった。その解決策として、管制を一つの統合ユニットへ集約することになったのだ。

 

「フランクス軍第12F海軍航空隊12機、および皇軍第401飛行隊の32機、計44機の管制を私が一括して行います」

 

 一人で扱うにはあまりに膨大な数だ。母艦からのサポートがあるとはいえ、先行する術式作戦機への負担は計り知れない。

 

「でも、一人でそれだけの数を捌けるの? 大丈夫?」

「心配してくれてありがとう、ユイ。でも、そのためにサン先生から特訓を受けてきたの。任せて」

 

 リンは自信に満ちた笑みを浮かべた。

 

 これまでの『人型早期警戒機(AEW)』という枠組みを超え、彼女は『人型早期警戒管制機(AWACS)』としての機能を獲得しつつあった。サンから伝授された特殊な術式(Script)を組み込み、探知・追跡・指示系統の大部分を自動化することで、一人のオペレーターが一個連隊規模の指揮を可能にする。このために、リンは苦手なプログラミングを血の滲むような努力で習得した。

 

 その師であるサン・ディエゴは、現在、舞鶴シュユと佐世保アラヤを連れて帝都の第01護衛隊群へ向かっている。第04護衛隊群での実戦経験を共有し、皇軍全体のレベルアップを図るためだ。

 

 402隊で自分一人だけ残されたことに少しの寂しさを感じつつも、リンの瞳には強い使命感が宿っていた。

 

 

 

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