【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
『現在、第04護衛隊群が全速で急行中だ! それまで何としても持ちこたえてくれ!』
「了解いたしました、群司令」
『ひゅうが』の艦橋は、かつてない衝撃に包まれていた。敵が連邦の最新鋭機イーグルを運用しているという事実。なぜ帝国の艦隊に、敵対しているはずの連邦機が混じっているのか。
舞鶴ユカ艦長が皇都の群司令との回線を切ると、副長が即座に問いかける。
「状況はどうでしたか?」
「第04護衛隊群が増援に来てくれるみたい。でも、彼らがここへ着くまでは私たちだけで耐えるしかないわ」
数でも性能でも勝る黒いイーグル隊。舞鶴は即座に状況を群司令部に上げ、近隣の艦隊に応援を要請していた。
「持ちますかね、私たちの96式で……」
「持たせるしかないわ。イーグルの正体も判明した。太陽系攻防戦で捕虜となった連邦兵の一部が帝国に亡命。彼らで構成された『義勇軍』が、今回実戦投入されたらしい」
「亡命した元連邦パイロットですか。道理で動きに迷いがないわけだ……」
「ええ、領邦軍よりも練度が高いと思った方がいいでしょうね」
『ひゅうが』の艦載機は、旧型の星菱96式だ。最新の零式でもイーグルには苦戦を強いられたと聞く。パイロットの練度は高いが、埋めがたい機体性能の差が、じわじわと戦場を侵食していた。
「艦長! 敵艦隊、加速を開始! 第七惑星軌道付近にて会敵します!」
「副長、『みょうこう』『あたご』に伝達。雷撃戦用意!」
「了! 雷撃戦、用意!」
「私は
「はっ!」
重力子魚雷護衛艦DDG-5175『みょうこう』、DDG-5177『あたご』から、扇状に広がる魚雷が放たれた。HF戦の劣勢を、魚雷の飽和攻撃で挽回する。だが、HFの防衛線が崩壊すれば、本艦が直接攻撃に晒されるのは時間の問題だ。
HFRへと向かう舞鶴ユカの額から、一筋の冷や汗が伝い落ちた。
――
『01! こちら05! 07と08が撃墜されました!』
『こちら09、直撃を受けました! 制御不能、脱出します!』
『04です! 89式小銃では相手の装甲を貫けません!』
301隊の各機から、悲鳴にも似た損害報告が相次ぐ。黒いイーグルの装甲は驚異的な硬度を誇り、96式の標準装備である89式200mm小銃を容易く弾き返していた。対して敵の騎士槍バルカンから放たれるモーターガトリングの弾雨は、皇国機の装甲を紙のように切り裂いていく。
(ゴウガが言っていたのは、これか……!)
三沢リュウジは、従弟であるゴウガがリムロックでイーグルと対峙した際の話を思い出していた。第401飛行隊はその教訓から装備を更新しているそうだが、後方の第03護衛隊群にはその恩恵はまだ届いていない。まさかこんなところでイーグルと戦闘になるとは誰も予想していなかった。
「01より各機! 小銃は捨てろ! 抜刀して近接格闘戦に持ち込むんだ! 装甲の隙間、関節部を狙え!」
無茶な命令であることは分かっていた。イーグルは騎士盾を備え、近接戦闘においても隙がない。さらに敵パイロットは実戦を潜り抜けてきた精鋭。性能差を技量で補おうにも、相手の技量もまた自分たちと同等かそれ以上だろう。
このままでは全滅を待つばかりだ。リュウジは冷静に戦場を俯瞰し、後方で陣頭指揮を執る機体を捕捉した。
黒灰色の塗装は他のイーグルと同じだが、シルエットが異なる。リュウジは小銃を投げ捨てると、その一機に向けて突撃した。
敵リーダー機がリュウジに気づく。その機体が悠然と長槍を構え、迎え撃つ体勢を取った。
(長槍だと? 連邦機にそんな装備は……!)
激突は一瞬だった。正面から最短距離を突き進んだブルーフォレスト01は、回避不能のタイミングで放たれた一突きに、吸い込まれるように飛び込んだ。
長槍が、星菱96式の胸部装甲を無慈悲に貫く。
そこには――HFF-111C アードヴァーク、と表示されていた。
続く