【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

129 / 300
Part-C

『現在、第04護衛隊群が全速で急行中だ! それまで何としても持ちこたえてくれ!』

「了解いたしました、群司令」

 

 『ひゅうが』の艦橋は、かつてない衝撃に包まれていた。敵が連邦の最新鋭機イーグルを運用しているという事実。なぜ帝国の艦隊に、敵対しているはずの連邦機が混じっているのか。

 

 舞鶴ユカ艦長が皇都の群司令との回線を切ると、副長が即座に問いかける。

 

「状況はどうでしたか?」

「第04護衛隊群が増援に来てくれるみたい。でも、彼らがここへ着くまでは私たちだけで耐えるしかないわ」

 

 数でも性能でも勝る黒いイーグル隊。舞鶴は即座に状況を群司令部に上げ、近隣の艦隊に応援を要請していた。

 

「持ちますかね、私たちの96式で……」

「持たせるしかないわ。イーグルの正体も判明した。太陽系攻防戦で捕虜となった連邦兵の一部が帝国に亡命。彼らで構成された『義勇軍』が、今回実戦投入されたらしい」

「亡命した元連邦パイロットですか。道理で動きに迷いがないわけだ……」

「ええ、領邦軍よりも練度が高いと思った方がいいでしょうね」

 

 『ひゅうが』の艦載機は、旧型の星菱96式だ。最新の零式でもイーグルには苦戦を強いられたと聞く。パイロットの練度は高いが、埋めがたい機体性能の差が、じわじわと戦場を侵食していた。

 

「艦長! 敵艦隊、加速を開始! 第七惑星軌道付近にて会敵します!」

「副長、『みょうこう』『あたご』に伝達。雷撃戦用意!」

「了! 雷撃戦、用意!」

「私は人型出力炉(HFR)へ移ります」

「はっ!」

 

 重力子魚雷護衛艦DDG-5175『みょうこう』、DDG-5177『あたご』から、扇状に広がる魚雷が放たれた。HF戦の劣勢を、魚雷の飽和攻撃で挽回する。だが、HFの防衛線が崩壊すれば、本艦が直接攻撃に晒されるのは時間の問題だ。

 

 HFRへと向かう舞鶴ユカの額から、一筋の冷や汗が伝い落ちた。

 

――

 

『01! こちら05! 07と08が撃墜されました!』

『こちら09、直撃を受けました! 制御不能、脱出します!』

『04です! 89式小銃では相手の装甲を貫けません!』

 

 301隊の各機から、悲鳴にも似た損害報告が相次ぐ。黒いイーグルの装甲は驚異的な硬度を誇り、96式の標準装備である89式200mm小銃を容易く弾き返していた。対して敵の騎士槍バルカンから放たれるモーターガトリングの弾雨は、皇国機の装甲を紙のように切り裂いていく。

 

(ゴウガが言っていたのは、これか……!)

 

 三沢リュウジは、従弟であるゴウガがリムロックでイーグルと対峙した際の話を思い出していた。第401飛行隊はその教訓から装備を更新しているそうだが、後方の第03護衛隊群にはその恩恵はまだ届いていない。まさかこんなところでイーグルと戦闘になるとは誰も予想していなかった。

 

「01より各機! 小銃は捨てろ! 抜刀して近接格闘戦に持ち込むんだ! 装甲の隙間、関節部を狙え!」

 

 無茶な命令であることは分かっていた。イーグルは騎士盾を備え、近接戦闘においても隙がない。さらに敵パイロットは実戦を潜り抜けてきた精鋭。性能差を技量で補おうにも、相手の技量もまた自分たちと同等かそれ以上だろう。

 

 このままでは全滅を待つばかりだ。リュウジは冷静に戦場を俯瞰し、後方で陣頭指揮を執る機体を捕捉した。

 黒灰色の塗装は他のイーグルと同じだが、シルエットが異なる。リュウジは小銃を投げ捨てると、その一機に向けて突撃した。

 

 敵リーダー機がリュウジに気づく。その機体が悠然と長槍を構え、迎え撃つ体勢を取った。

 

(長槍だと? 連邦機にそんな装備は……!)

 

 激突は一瞬だった。正面から最短距離を突き進んだブルーフォレスト01は、回避不能のタイミングで放たれた一突きに、吸い込まれるように飛び込んだ。

 

 長槍が、星菱96式の胸部装甲を無慈悲に貫く。

 

 操魂球(Cockpit Sphere)による緊急脱出。遠ざかる視界の中で、三沢リュウジは画像解析システムが吐き出した敵機の名称を目にする。

 

 そこには――HFF-111C アードヴァーク、と表示されていた。

 

 

続く

 

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。