【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
「至急、救助用魚雷を射出!」
『ひゅうが』艦長、舞鶴ユカが鋭い指示を飛ばす。先行したHF隊12機が全滅するという、最悪の事態に陥っていた。パイロットは全員脱出に成功しており、現時点で死者は出ていないが、一刻も早い回収が必要だ。
この救助には重力子弾頭を外した魚雷が流用される。無人機の魚雷が脱出したパイロットの救助に向かう。
艦長の隣に控える副長が、額の汗を拭いながら制帽を被り直す。
「それにしても、12機すべてが大破するとは……」
「ええ。作戦を切り替えます。副長、各艦長へ通信を繋いで」
「はっ!」
――
「閣下、敵艦隊が二手に分かれました」
「ほう、動きがあったか」
「4隻は第六惑星上空、残る4隻は第五惑星軌道上へと遷移する模様です」
カムイ州の第六惑星クシロは、巨大なガス惑星だ。水素、ヘリウム、アンモニアなどで構成されるその大気は、厚さ4,000kmにも及ぶアンモニアの雲に覆われ、独特の縞模様を描き出している。
アルブレヒトは、手元のモニターを覗き込みながら執事長に問うた。
「第六惑星の上空だと? 何が狙いだ」
「恐らくですが、高重力下ではHFの能力はかなり制限されるので、HFを避けるため惑星上空で迎え撃つつもりなのでしょう」
「ふむ。艦隊決戦を挑んでいる訳か」
「はい。ここで無視して第五惑星へ向かえば、背後を突かれ挟み撃ちを食らうことになりますな」
執事長は元軍人であり、戦術・戦略に深い造詣を持つ。その分析に納得したアルブレヒトが号令を下す。
「なるほどな。ならば望み通り、艦隊決戦で叩き潰してやろう。艦数はこちらが勝っているのだ。全艦、第六惑星へ向かえ。
「かしこまりました」
黒鷲と呼ばれる元連邦の義勇HF隊は、先の戦闘で16機すべてが健在であった。現在は軽空母『ド・グラース』にて損傷したモジュール装甲の換装を終え、再び戦場へと舞い戻ろうとしていた。
随伴していたフリゲート2隻は領邦軍の直轄に組み込まれたため、『ド・グラース』は単艦で先行することになる。義勇軍という不安定な立場ゆえ、危険な任務であっても命令に従うしかなかった。
――
アルブレヒト率いる領邦軍艦隊は、軽空母1隻、駆逐艦2隻、フリゲート6隻の計9隻。対する皇国軍は、第六惑星に留まる第03護衛隊の4隻。
数的優位を背景に、領邦軍は巨大ガス惑星の裏側から接近した。惑星の巨大な影を盾にし、主砲の射線を遮りながら間合いを詰める。
眼下に広がる縞模様の雲を見下ろしながら、軽空母『オイローパ』を中心にV字陣形を形成。皇国軍艦隊を半包囲するため惑星上空を回り込む。
「敵は単縦陣を維持しているな。射線が通り次第、先頭艦へ集中砲火を浴びせよ」
アルブレヒトが命じる。その間にも、艦隊上空では魚雷同士の迎撃戦と直掩HFによる激しい小競り合いが続いていた。
「そろそろだな。よし、砲撃開……」
「閣下! 艦隊直下より多数の反応! 魚雷です! 真下の雲を突き抜け、最短距離でこちらに向かってきます!」
「何だと!?」