【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-D

『こちら飛行科! 直掩機発艦します! 砲雷科、注意せよ!』

「砲雷科了解! お前ら味方機に当てるなよ!」

 

 フレンドリーファイアを警戒しつつ、皇国軍のHFが甲板から飛び出す。

 

 指示された座標へ向かうが、視界を遮る雲の厚みに翻弄される。気流に足を取られぬよう格闘戦の間合いを測っていると、目の前に突然、巨大な影が躍り出た。黒いイーグルだ。

 

 敵も銃撃をあきらめ、既にバスタードソードを抜き放っていた。騎士盾を構えた重厚なシルエットが迫る。

 

 不意の遭遇に、互いに一瞬の硬直が生じた。だが、すぐに火花を散らす斬り合いが始まり、荒れ狂う気流に流されながら、双方は手探りで刃を交わす。

 

 過酷な環境下で、敵も攻めあぐねてはいた。だが数的優位は揺るがない。直掩機が防ぎきれなかった隙を突き、イーグルたちが『ひゅうが』へと襲いかかる。

 

 

「機関部G25ブロック被弾! 気密隔壁破損! 負傷者多数!」

「衛生員、急行して! 該当ブロックを隔壁閉鎖、ダメコン用キューボットを射出!」

 

 艦橋に悲痛な報告が重なる。普段なら鉄壁を誇る霊殻体も、惑星の重力圏ではその半分も機能していなかった。

 

 艦の外壁から、複数のキューボット(Cubot)が射出される。その中の一機が、イオンドライブを全開にして雲の底へと降下していった。被弾した際の爆風で、船員2名が船外へと放り出されている。

 

 キューボットがアームを限界まで伸ばし、落下する二人を間一髪でキャッチ。このまま惑星の中心へと落ちていれば、待っているのは惑星深部の凄まじい圧力による圧壊死だ。彼らは文字通り、死の淵から引き揚げられた。

 

 だが、安堵する間もなく副長が厳しい報告を告げる。

 

「艦長、被害状況です。2名の救助には成功しましたが、内部誘爆により死傷者が出ています。死者3名、重傷5名、軽傷7名。……それに、機関部にも深刻なダメージが。超弦相転移機関の一部が破損。機関科が懸命の応急処置を行っていますが、もって数分です」

 

 舞鶴ユカの脳裏に、先ほどガス惑星の奥深くへ消えていった敵フリゲートの光景がよぎる。あの艦に乗っていた者たちは、今ごろ大気の深層で塵も残らず押し潰されているはずだ。

 

「第07護衛隊は?」

「まだ到着していません!」

「……浮上して雲を抜けましょう。その後、総員退艦命令を発令します」

「艦長……艦と運命を共にする、なんてことは言い出さないでくださいよ」

「いつの時代の話をしているの。……私には、生き残って殉職者の家族に報告する義務があるわ」

「……了解しました。本艦浮上、総員退艦用意!」

 

 苦渋の決断が下されたその時、通信士が叫び声を上げた。

 

「待ってください! 緊急通信を受信!」

「どこからだ!」

「第04護衛隊群旗艦『かが』です! カムイ州外縁に到達、直ちに本空域へ進入するとのこと!」

 

 

 第04護衛隊群の到着を確認した敵HF隊は、即座に撤退を開始した。増援の艦隊に恐れをなしたか、軽空母と合流して戦線を離脱していく。

 

 『ひゅうが』は、総員退艦という最悪の結末を回避することに成功した。

 

 侵略を企てた帝国領邦軍はラヴァーグ国方面へと逃走。急行した第04護衛隊群は、追撃よりもまず、傷ついた第03護衛隊の救助に全力を注いだ。

 

 カムイ州を巡る帝国の電撃的な侵攻は失敗に終わった。しかし、双方合わせて百数十名に及ぶ尊い命が失われ、両国の間には拭い難い遺恨が刻まれることとなった。

 

 

続く

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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