【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第三十七話 発動
Part-A


「レイ、ここいいか?」

「ゴウガか。いいよ。おかえり」

「おう」

 

 『かが』艦内第二食堂でレイとゴウガが同じテーブルを囲み、食事を始める。メニューは二人ともA定食。本日のメインは分厚いハムカツだ。

 

 ちょうど昼食時ということもあり、食堂内は多くの人で賑わっていた。第二食堂は尉官以上の階級が利用する場所であるため、周囲は皆、落ち着いた雰囲気の士官ばかりだ。ちなみに下士官以下は第一食堂を利用することになっている。

 

「実家に行ってたんでしょ? どうだった?」

「着くなり親父に怒鳴られたよ。私情よりも軍務を優先しろってな」

 

 三沢ゴウガの実家である三沢家は、五大武家に数えられる名門であり、代々皇国の北方守護を担う一族だ。今回侵攻を受けたカムイ州に本家がある。ゴウガは家族を案じて特別に許可を得て惑星に降りたのだが、実家では手荒い歓迎を受けたらしい。

 

「でも、惑星自体に被害はなかったんでしょ?」

「おう、もちろん親父も家族もピンピンしてたよ。ただ、万が一惑星に攻撃があった場合でも住民全員が即座にシェルターへ避難できるよう、常に訓練を欠かさない。あそこは国境の要衝だからな。『俺たちは相応の備えと覚悟をしている。余計な心配をせず、軍人としての本分を全うしろ』って追い返されたよ」

 

 カムイ州は帝国領邦軍艦隊による奇襲を受けたが、第03護衛隊群の死力を尽くした防衛戦により、辛うじて撃退に成功した。だが無傷というわけにはいかず、殉職者も出ている。艦数やHFの性能差を考えれば、絶望的な状況でよく戦い抜いたと言えるだろう。特に巨大ガス惑星の過酷な環境を逆手に取った戦術は、現在統合幕僚本部でも高く評価され、詳細な分析が進められている。

 

「あと、従兄のリュウジ兄……三沢リュウジ1等武尉の見舞いにも行ってきた。こっちも元気そうだったけどな。念のための検査入院だそうだ」

「相手は黒鷲(くろわし)部隊だっけ?」

「ああ、黒いイーグルだ。乗っていたのは亡命した元連邦兵らしいな。最新の零式でも手を焼く相手に、旧式の96式でよく持ちこたえたもんだ。最後には落とされちまったがな」

 

 統合幕僚本部は、当初の侵攻を領邦軍による小規模なものと予測していた。帝国軍は地方の領邦軍と中央の国防軍に分かれるが、主力の国防軍は現在、地球自由連邦への侵攻作戦の真っ只中にあり、主戦力が西側に集中しているはずだったからだ。

 

 そのため一個護衛隊群で十分対処可能と踏み、第01護衛隊群を装備更新のために首都星系へ呼び戻していたのだが、その隙を突かれた形となった。伏兵として元連邦兵を含む義勇軍を組み込んできたのは完全に想定外であり、情報戦略上の失策と言わざるを得ない。

 

「リュウジ兄と戦った黒いイーグル隊は、パイロットの練度も相当なものだったらしい。一体どこの部隊なんだろうな」

「ああ、それなら既に判明しているよ。元連邦軍第5機動騎士団、第501および第506機動戦闘飛行隊の一部だって」

「機動騎士団かよ。連邦のバリバリのエリート部隊じゃないか。強いわけだ」

 

 機動騎士団は皇国の機動航空団に相当する組織で、全戦力がHFで構成されている。通常、空母1隻につき一個騎士団が配属されるが、空母が大規模整備などを行う場合、別の空母に乗り換える。有事であれば常に前線に居続ける最強部隊だ。

 

「具体的な搭乗者の名前も分かっているみたいだ。ユイの知り合いがいたって、彼女ひどく落ち込んでいたよ」

「ほう……」

 

 黒いイーグル隊の中には、HFF-111C アードヴァークも混じっていた。そのパイロット、ヒルデガルド・ラムシュタインは、合同訓練リムロックでユイと親交を深めた女性だ。

 

(ユイを悲しませるなんて許せない。もしヒルデガルドさんが敵として立ちはだかるなら、いっそボクの手で……)

 

「ん? レイ、どうした? なんか顔が怖いぞ」

「いや、なんでもないよ。そういえばナユはどこ行ったの?」

「ああ、姉さんなら『ちょうかい』に行ってるよ。群司令部会議に参加するんだと」

「ユイと同じところか。やっぱり例の件かな」

「だろうな。……お、丁度時間のようだぜ」

 

 ゴウガが端末で時刻を確認すると同時に、食堂内のナノボット・ビジョンパネルに注目が集まった。

 艦内放送が流れ、全乗組員に皇国公式放送を視聴するよう通達が出る。

 

 数瞬の静寂の後、画面に皇国の若き女帝が映し出された。いつもの華美なドレスではなく、珍しく軍服を纏っている。その姿は、いつもの慈愛に満ちた美しさよりも、厳格な凛々しさが勝っていた。

 

「ついに始まるんだね」

「ああ」

 

『皇国民の皆さま。全銀河国家群の皆さま、こんにちは。(わたくし)は、大八洲(おおやしま)皇国の帝です』

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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