【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
『
「がっはっはっ! よいぞ! さすがはキミヒトの娘だ、威勢がいい!」
帝国軍第1機動隊群旗艦、空母『グラーフ・ツェッペリン』の艦橋。銀河ネット経由で皇国の公共放送を見届けていた皇帝フリードリヒⅣ世は、愉快そうに手を叩いた。
「喜んでいる場合ではありませんよ、陛下。これで帝国は、東西に敵を抱える二正面作戦を強いられることになります」
傍らに控える第1機動隊群司令、ハンプシャ・ポーツマス大将が冷静に苦言を呈する。帝国の西側では連邦侵攻が続き、東側では皇国が牙を剥いた。帝国は広大な版図を挟み撃ちにされた形である。
「構わん。皇国側の東部戦線は、各領邦軍の合同部隊に任せる。最悪、2、3の星系は奪われる覚悟も必要だろう。だが、連邦領の下賜を餌にすれば、アルブレヒト熊公とハインリヒ獅子公は競い合って奮闘するはずだ」
「西部戦線には国防軍を集中させるということですね。直ちに国防省から全軍へ通達を出させます」
「うむ。ただし、義勇軍と
「御意」
カムイ州への侵攻にはフランクス義勇軍の艦艇や元連邦兵のHF部隊が投入されたが、彼らの本籍はあくまで国防軍にある。
「して、黒鷲の働きはどうだった?」
「領邦軍との連携には問題ありません。HF戦も圧勝だったようです。さすがは連邦の最新型、イーグルといったところでしょうか」
「そうか。使い物になりそうだな」
「はっ。現在、連合義勇機動隊として再編中。第3、第4機動隊群の遊撃戦力として組み込む予定です」
「うむ、良かろう」
現在、帝国国防軍以外の戦力は、元フランクス軍のシャルルマーニュ艦隊、黒鷲と呼ばる元連邦軍の亡命者、そしてローマリア共和国軍の外洋部隊第一戦隊。これらを合わせれば、一万人規模の強力な増援戦力となる。
『陛下。準備が整ったようです』
「分かった。スクリーンを切り替えろ」
『はっ!』
艦橋オペレータからの報告を受け、皇国の放送を映していたモニターが閉じられ、別のライブ映像が大きく投影された。
そこに映し出されていたのは、地球の衛星『月』の威容であった。
「いよいよですな」
「ああ、歴史が動くぞ」
『カウントダウン開始! 発動まであと1分!』
スクリーンの中心に座する月の背後には、人類発祥の地――青く輝く『地球』の姿が見える。
『10、9、8、7、6、5、4、3、2、1……始動!』
カウントがゼロになっても、一見スクリーンに変化はないように見えた。
しかし数秒後、背後の地球がゆっくりと、確実に小さくなっていく。月の見かけの大きさは変わらない。
『始動成功! 第一段階クリアです!』
艦橋内に「おおーっ!」というどよめきと歓声が響き渡る。
『加速順調。各部機関正常。まもなく予定の跳躍ポイントに到達します!』
いつの間にか、地球の姿は点となって消えていた。緩やかに見えた動きだが、直径約3,470kmの月そのものが、既に秒速3,000kmという驚異的な速度まで加速している。
やがて、月がスクリーンから消失した。
再度画面が切り替わり、今度は『グラーフ・ツェッペリン』の外部光学カメラの映像が映し出される。
『最終カウントダウン!
皇帝も、艦隊司令も、全艦橋員も、固唾を飲んでその時を待つ。
『5、4、3、2、1……0!』
次の瞬間、スクリーンが一面、強烈な光に覆い尽くされた。
『
『重力波の乱れを観測!』
ホワイトアウトしていた画面が徐々に鮮明になっていく。
そこには、つい先ほどまで地球の傍らにあったはずの『月』が鎮座していた。太陽系中心部から40天文単位(AU)も離れた、冥王星の外縁空域に位置する『グラーフ・ツェッペリン』の目前に、それは現れたのだ。
『成功です! 月……いえ、
艦橋は割れんばかりの歓声に包まれた。皇帝とポーツマス大将も、張り詰めていた緊張から解放され、深い笑みを交わす。
「成し遂げましたな、陛下。おめでとうございます」
「うむ。実に壮観だ」
「まだ各部試験は必要ですが、まずは第一ハードルを越えました」
「ああ。これで、あの腐りきった12貴族どもに、真なる鉄槌を下すことができる」
「では、予定通り進めますか?」
「当然だ」
皇帝が指揮官席から立ち上がり、艦橋全体を見渡した。全将兵の視線が彼に集まる。
フリードリヒは力強く右手を振り上げ、全銀河を震わせる咆哮を上げた。
「これより
「「「
続く