【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
談笑が続くなか、新たな団員たちが会議室へと姿を現した。
「あら、楽しそうじゃない?」
「けっ、お気楽な連中だぜ」
入室してきたのは、ウェーブの掛かった金髪に黒い魔女の装束を纏った女性と、長い金髪をなびかせ華美な騎士服を着こなした男性。
「マルムストローム様とフランシス様」
魔女の出で立ちをしたイザベラ・マルムストロームと、冷笑を浮かべるラファエル・フランシス。彼らもまた、12貴族の名を冠する特権階級であった。
「ふん、貴様か、メイポート。なぜ12貴族でもない者がここにいる。目障りだ、消えろ」
ラファエルが侮蔑の色を隠そうともせず、ミリィをなじりつける。彼は爵位を万物の基準とする徹底した「絶対貴族主義」の信奉者であり、格下を人間扱いしない傲慢さが骨の髄まで染み付いていた。貴族社会においては、むしろビリーのような博愛的な考え方こそが異端なのだ。
「おい、ラファエル! 言葉を慎め! ミリィの参加は団長の許可を得たものだ。彼女に謝れ!」
「良いのです、エドワーズ様」
「ミリィ……」
憤慨して詰め寄ろうとするビリーを、ミリィが静かに制する。ミリィの実家であるメイポート家も名門ではあるが、爵位は
「あら、メイポートさんがいても問題ありませんわ」
「姐さん?」
場を収めるように口を開いたのはイザベラだった。黒い鍔広の帽子を脱ぎ、悠然と円卓の席に着く。彼女はラファエルよりも年長であり、同じ第6機動騎士団の上官でもある。ラファエルは彼女を「姐さん」と呼び、唯一敬意を払っていた。
「だって、その格好……給仕に来たんでしょう? 早くお茶を頂戴?」
「はっ! なるほどな! 使用人としてなら置いてやってもいい。さすが姐さんだ、ひひひひ!」
イザベラの言葉はフォローなどではなく、より深い蔑みだった。確かにミリィは今日もいつものメイド服を着用している。
「なんだと!」
「良いのです、エドワーズ様。今すぐ準備いたします。マルムストローム様」
「さっさとなさい」
ビリーやジョージは憤怒の表情を浮かべるが、当のミリィが受け入れている以上、それ以上口を出すことは難しかった。
ピリピリとした不穏な空気の中、ミリィが淡々とお茶の準備を進めていると、再び重厚な扉が開かれた。
「お、集まっているな」
「アラスの兄貴!」
長身で威風堂々とした美丈夫、アラス・エルメンドルフが姿を見せた。彼は連邦軍第1機動騎士団の団長にして、円卓の騎士団の頂点に立つ男である。
「ミリィもよく来てくれた」
アラスの自然な受け入れに、場を支配していた棘のある空気が霧散する。ラファエルは忌々しげに鼻を鳴らしたが、それ以上の不敬は慎んだ。
彼の背後からは二人の人物が続いた。一人は第3機動騎士団団長シロウ・カデナ。アラスとは同い年の親友だ。
もう一人は、透き通るような白さを纏った少女。その長い髪は銀髪を通り越し、月光のように輝く白色。肌も白く、軍の白い制服も相まって全身白色の印象だ。彼女は、カタリナ・アヴィアーノ。12貴族の令嬢であり、アラスの婚約者でもあった。
アラスが円卓の窓際に腰を下ろすと、その両脇にシロウとカタリナが控える。他の団員もそれぞれの席に着き、ミリィだけがビリーの背後に静かに佇んだ。
「さて、これで全員だな」
「え?」
ビリーが思わず驚愕の声を漏らす。円卓には12の席が用意されていたが、埋まっているのはわずか8席だった。