【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
「何だと……!?」
皇帝の言葉に、団員たちは色めき立った。彼ら自身、12貴族の血を引くエリートだ。しかし、一族がそのような古代技術を隠匿しているなどという話は、一度として聞いたことがなかった。
『帝国に亡命した始まりの四家、ポーツマス家の協力により、帝国は古代地球のロスト・テクノロジーの解析に成功した。その力を運用し、連邦を簒奪し、民を欺き続けてきた12貴族を断罪する。それがこの
皇帝の声は次第に熱を帯び、最後には肺腑を震わせるほどの怒号へと変わった。
「な、何を言っている……!」
混乱のあまり、アラスの声は震えていた。
『これは連邦の民への挑戦ではない。全人類、全銀河国家群に対する裏切り者への審判だ! 帝国はこの力をもって12貴族を打倒する。貴族に従う軍も同罪だ、覚悟せよ。……案ずるな、庶民や民間人は審判の対象外だ。余は略奪のためにここに来たのではない』
繁華街から沸き起こるどよめきが、ベランダまで聞こえてくる。盲目的な殲滅戦ではないという皇帝の宣言に、ある者は安堵し、ある者は疑念を深めた。
だが、ここにいる団員たちは12貴族の末裔であり、連邦軍の軍人だ。皇帝の言う「審判」の矛先そのものである。
『では手始めに、この
皇帝は月を「機動要塞」と呼んだ。その言葉が終わるが早いか、赤き月の表面に異変が生じた。
暗赤色の大地を、無数の稲妻のような輝きが走り抜ける。その放電はやがて一本の巨大な光の柱となり、宇宙空間を切り裂いて
真空の宇宙に音はない。しかし、視界を焼き尽くすほどの極光が青き月の地表を穿つのを、誰もが目撃した。
そこには、連邦首都防衛隊の主力基地が存在していた。巨大な雷撃を受けた基地が内部から爆発し、崩壊していく様が、地上からもはっきりと観測できた。
「何だ!? 新兵器か!?」
「いえ、稲妻が放たれる直前、空中に巨大なルーン文字が展開されました。……あれは、魔術攻撃です」
「あれほどの規模の魔術だと!?」
「ええ。太陽系攻防戦で使用されたというルーン魔術の記録に酷似しているわ」
ビリーの叫びにミリィが答え、魔女であるイザベラが戦慄しながら補足した。
「ですが、威力が桁違いです」
「そうね。通常の魔術HFから放たれるものとは、根源的な出力が違うわ。あの要塞そのものが増幅装置となって、魔術出力を数千、数万倍にしているのかもしれないわね」
専門家の言葉が、事態の絶望的な深刻さを物語っていた。あの一撃で、首都防衛の要である基地は塵一つ残さず蒸発したはずだ。
茫然自失とする人々を見下ろすように、皇帝が最後通告を突きつける。
『これより連邦領内を蹂躙する。12貴族は首を洗って待つが良い。さらばだ』
皇帝の豪快な笑い声と共に通信が途絶した。
ほどなくして各機動騎士団から最優先の緊急招集が掛かり、円卓の騎士団の会合はなし崩し的に解散となった。
アラスは解散を宣言する際、自分自身に言い聞かせるように、低く鋭い声で告げる。
「あれが、汎ペルセウス帝国だ。……ゆめゆめ油断するな。必ず生き残り、戦場で再会しよう」