【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
「勅命である!」
第04護衛隊群司令、新田原マコト武将補の鋭い檄が飛ぶ。
先遣隊の出発式はDDG-5176『ちょうかい』の多目的ホールで執り行われ、会場は居並ぶ士官たちの熱気に包まれていた。『かが』からも多数の要員が参加しており、その中には横田ユイと星菱レイの姿もあった。ちなみに三沢姉弟は、機体調整の最終確認のため居残りである。
既に艦隊の出航準備は最終段階に入っており、巨大な球状宇宙ステーション『沖ノ鳥ベース』の周辺には無数の艦艇が展開していた。本来であれば、港湾施設で音楽隊の演奏や帽振れなどの華やかな式典が催されるところだが、今は一刻の猶予も惜しい。帝国打倒を掲げたこの大遠征には、片道だけでも三ヶ月に及ぶ長旅が待ち構えているのだ。
今回の遠征先遣隊には、第03護衛隊群と第04護衛隊群が抜擢された。
第03護衛隊群は先のカムイ州攻防戦で手痛い損害を被ったが、建造中だった第05護衛隊群の資材を優先的に回すことで、短期間での戦力回復を果たした。旗艦DDH-5181『ひゅうが』も修復と同時に大幅な近代化改修が施されている。実戦データに基づき、飛行甲板への霊符カタパルトの増設や、艦内動線の取捨選択が行われた。さらに艦載HFもすべて最新の零式へと機種転換を完了。搭載数も16機から20機へと増強され、以前とは比較にならない打撃力を手に入れている。
戦時体制へと移行した皇国において、戦力アップの波は全軍に及んでいた。
第一線のHFは例外なく零式へと更新され、旧式となった96式は地方警備を担う二桁護衛隊群へと譲渡。皇軍全体の底上げが図られた。
また、艦船自体の改修も進んでいる。『かが』級などもこれまでの戦闘経験を反映し、死角を排するための砲塔配置の微調整や、HF隊の緊急出撃をスムーズにするためのハンガー動線の見直しが行われ、より機動的な運用が可能となった。
遠征先遣統合任務部隊の指揮官である群司令から、改めて陣容が告げられる。二個護衛隊群を中核とした護衛艦16隻に、補給艦や工作艦を含めた大規模な編隊。その後方からはさらに二個護衛隊群が続く予定だ。まさに皇国軍の総力を挙げた一大決戦兵力である。
サッポロ条約機構の成立と地方隊の強化により後顧の憂いを断ち、皇軍は全機動戦力を投じる。距離にして300パーセクの超長距離遠征。目標は、汎ペルセウス帝国軍。
「打倒帝国のため、各位尽力されたし! 作戦名は
式典の余韻に浸る間もなく、各員は慌ただしく持ち場へと戻っていく。
ユイとレイも『かが』へ帰還するための連絡シャトルに飛び乗るべく、居住区の通路を急いでいた。
「群司令のお話、ちょっと長かったねっ」
「そうだね。初等科学校の校長先生の訓話みたいだった」
「それそれ! まさにそんな感じ!」
ユイが一歩後ろを歩いていたレイを振り返るが、その視線は空を切った。少し顎を上げて上を見上げ、ようやく視線が重なる。いつの間にか、自分たちの背丈の差は思っていた以上に開いていた。最近のレイの身体的成長は、目を見張るものがある。
(初等科のときは、アタシの方が少しだけ背が高かったのになぁ……)
ユイとレイが初めて出会ったのは、それこそ記憶もまだおぼろげな、幼い日のことだった。