【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-B

 皇国において、子供を授かった女性は必ず共同の公的施設に入ることになっている。

 

 これは皇国民に課せられた絶対の義務であり、例外は認められていない。その施設は開魂機関清浄(しょうじょう)院と呼ばれ、恒星や惑星の重力干渉を排除した星系外縁部の宇宙ステーションに設置されている。

 

 女性は妊娠後期から清浄院に入院し、出産、そして乳幼児の育児期間をそこで過ごす。

 

 清浄院の入院費や滞在費はすべて国費で賄われ、子供が三歳になって退院する際には、生活を支えるための多額の支度金まで支給される。出産に伴う経済的・精神的負担が極めて小さいため、皇国の人口は着実に増加を続けてきた。そして、この低重力下での育成環境こそが、すべての皇国民を開魂者(Openian)たらしめる鍵であった。

 

 ユイとレイもまた、この清浄院で生を受ける。二人の母親、横田ユリアと星菱カズミは同時期に入院していた。もともと親戚同士としての面識はあったが、清浄院での再会を機に二人は急速に親交を深めていった。閉鎖的なステーションでの集団生活において、心を許せる友人の存在は何よりも心強かったに違いない。

 

 出産はカズミの方が一ヶ月ほど早く、後を追うようにユリアもユイを産んだ。二人とも難産とは無縁の安産で、母子ともに健やかな滑り出しだった。皇国の最新医療技術の粋を集めた清浄院において、医療事故が起きることは万に一つもない。当然、ユイもレイも天賦の霊力を持つ開魂者として成長していった。

 

 

 なぜ開魂者を育成するために、わざわざ居住惑星を離れた低重力環境が必要なのか。

 

 それは、魂より湧き出る霊子を制御するために不可欠な、脳内の霊子変成器官(Aetherion Transformer)の発達に関係している。

 この器官は物理的な実体を持つ臓器ではなく、脳の発達プロセスにおいて形成される複雑な神経ネットワークの一種だ。

 強すぎる重力の干渉は、この繊細なネットワークの構築を著しく阻害してしまう。そのため、脳が劇的に発達する0歳から3歳の期間を低重力下で過ごすことが絶対条件となるのだ。ちなみに、一見無重力に見える衛星軌道であっても、そこは依然として惑星の重力井戸の中にあり、重力の根幹である空間の歪みが大きいため、器官の発達には適さない。

 

 実は重力下で生まれた普遍人(Normalian)であっても、魂からの霊子の湧出そのものは存在する。しかし、霊子変成器官を持たない彼らにはそのエネルギーを認識することも制御することもできない。過去の地球においても、極めて稀にこの器官が先天的、あるいは後天的に発達し、霊子を操ることができた特異な人間が「超能力者」や「魔術師」として記録に残されていた。

 

 

 ユイもレイも、清浄院の恵まれた環境で順調に育っていった。定期的に行われる霊子出力の測定において、二人はいずれも同年代を大きく上回る数値を叩き出していた。

 

 通常、母親の霊力が高いほど、その子供も高い素養を持つ傾向にある。霊力とは出産というプロセスを経て、母親の魂を株分けするようにして子供へと継承されるからだ。そのため、有力な術者の家系は代々強大な霊力を維持しやすい。また、この「魂の株分け」を担う女性の霊力は、平均して男性の三倍以上の出力を誇る。

 

 だが、この継承には避けられない代償も存在した。株分けを行った母親の霊力は一時的に著しく低下し、その後ある程度は回復するものの、出産前の絶頂期まで戻ることは稀である。術者としての全盛期が若い女性に集中しているのは、この魂の継承という生命の神秘ゆえであった。

 

 子供たちは三歳になるまで母親と共に過ごし、退院直前の数ヶ月間は子供同士の集団生活を通じて、教育と社会性を学ぶ。

 

 ユイとレイが言葉を交わし、互いを認識したのはその時であった。もっとも、あまりに幼い日の記憶ゆえ、当人たちはその瞬間のことを明確には覚えていないのだが。

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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