【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第四十二話 追跡
Part-A


「全艦隊着空(touchdown)完了しました!」

「よし! 広域霊探(Aether Radar)で索敵せよ! 最優先だ!」

 

 地球自由連邦軍第4艦隊司令官、フランク・フレッチャー中将は、次元弾道跳躍(Dimension ballistic leap)からの着空と同時に矢継ぎ早に指示を出す。

 

 第4艦隊が移動してきたのは、連邦領内の銀河航路(ルート)206。銀河航路は線ではなく「点」の連続として存在する。次元弾道跳躍によって点から点へと飛び石のように移動するため、航路の途中で敵と遭遇することはない。跳躍した先の「点」にあたる空域で、しらみつぶしに目標を捜索する必要があった。

 

「霊探走査完了! 空域内に反応なし!」

「くそっ! また空振りか!!」

 

 この航路R206へ急行したのは、帝国の機動要塞がここへ現れるという予測情報を霊電子戦艦群から受け取ったためだ。しかし、いざ着空してみれば「もぬけの殻」という事態は、これで実に7度目を数えていた。

 

「役立たずの魔女共が!!」

「ひっ! す、すみません!」

「ああ、いや……すまん、君のことではない。我がブリッジスタッフは優秀だよ、分かっている」

 

 司令官の激昂に思わず肩を震わせた魔女姿の霊探員に対し、フレッチャー中将は慌ててフォローを入れる。

 

 赤き月(Roter Mond)と呼称される帝国の機動要塞が連邦首都ロードン星にその姿を現して以来、連邦軍艦隊は未だにその尻尾を捕捉できずにいた。要塞は連邦全土の銀河航路を、嘲笑うかのように神出鬼没に跳び回っている。

 

 魔女たちの霊電子戦艦群が要塞の着空先を予測し、情報を共有してはいるが、ことごとく外れてばかりだ。百戦錬磨の司令官も流石に疲弊の色を隠せず、椅子に深く座り直して重い溜息をついた。

 

(まあ、上手くいかない理由は分かっているのだがな……)

 

 銀河航路の規格は、国内線が1パーセク(約3光年)間隔、国際線が3パーセク間隔と定義されている。これは、現代の技術水準における次元弾道跳躍の最大距離3パーセクに合わせたものだ。軍艦も民間船も、この跳躍限界の規格に合わせて設計・調整されている。

 

 しかし、帝国の機動要塞は、確認されているだけで最大10パーセクもの距離を一気に跳躍できるようだ。網目のような国内航路を自在に飛び越えて移動する要塞の軌跡を、現行の理論で正確に予測するのは、もはや不可能に近い。

 

「どうされますか、司令官」

「一旦待機だ、艦長。交代で乗組員を休憩に入らせてくれ」

「了解いたしました」

 

 短期間に連続して次元弾道跳躍を繰り返してきた。スタッフの精神的・肉体的疲労は限界に近い。

 

 艦長が休憩の指示を出すのを聞き流しながら、フレッチャーは改めて手元の銀河航路図に目を落とした。

 

 現在、帝国の機動要塞を阻止するために投入されているのは、第4および第5艦隊。より大規模な戦力を投入したいのは山々だが、帝国の主力艦隊が二箇所の運河に集結している以上、防衛戦力を動かすわけにはいかない。カノープス運河に第6艦隊、サルガス運河に第7艦隊が張り付き、一触即発の睨み合いを続けている。

 

(太陽系攻防戦で第2、第3艦隊が壊滅していなければ、まだ戦力に余裕があったのだが。……それすらも、帝国の計算の内だというのか)

 

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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