【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
「ようやく捕まえたぞ。帝国の機動要塞」
第4艦隊司令官フランク・フレッチャー中将が、勝利を確信したように独りごちた。
目の前の大型スクリーンには、完璧な球体を描く星――元地球の衛星『月』が映し出されている。録画ではない、リアルタイムの望遠光学映像だ。
地球自由連邦内の銀河航路を執拗に追跡し続け、ついにここ銀河航路
この不安定な暗黒星雲を貫く直線航路
「司令! 機動要塞の反対側に新たな霊子反応を捕捉! 距離30光秒!」
「おお、来たか!」
帝国の機動要塞を挟み撃ちにする形で
「よし! これで第4、第5艦隊による完全な挟撃体制が整った! 全艦艇および第5艦隊に通達。これより『ハンバーガー作戦』第2段階を開始する!」
「「「Aye, aye, sir!」」」
まず「ハンバーガー」の名が示す通り、機動要塞を二つの艦隊で挟み込む。
もし要塞が逃走を図り次元弾道跳躍を試みても、この回廊の横幅では準備加速のための距離が圧倒的に足りない。要塞が加速できる方向は第4、あるいは第5艦隊が待ち構える前方か後方のみ。その瞬間にありったけの重力子弾頭を叩き込めば、時空間の歪みによって跳躍を阻止できる。この状況下において、要塞に逃げ場はなかった。
第1段階である「封じ込め」は達成された。作戦は第2段階、要塞戦力の削り取りへと進む。
機動要塞は内部に2個艦隊規模の戦力を収容している。これら機動戦力の排除は最優先事項だ。まず敵艦隊をおびき出して各個撃破する。艦隊の数こそ同等だが、総艦艇数およびHFの数では連邦が勝る。要塞という「守るべき背後」を持つ帝国艦隊は自由な機動を制限されるため、事前のシミュレーション通りに艦隊行動を展開できれば、十分に抑え込めるはずだ。
そして最終の第3段階で要塞そのものを攻略する。要塞は強力な魔術砲火を備えているため、艦隊の接近は困難だ。そこで主役となるのがHF隊である。艦隊による揚陸支援砲撃の雨を降らせ、その隙を突いてHF隊が要塞基部や開口部へと突入。内部侵入に成功すれば、勝利は揺るぎないものとなる。
「よし、各艦砲撃開始! 敵艦隊を炙り出せ! だが深追いはするな、要塞の魔術攻撃の射程には踏み込むなよ!」
連邦軍艦隊による遠距離砲撃が幕を開けた。散発的なこの攻撃自体に要塞を破壊する威力はないが、無視すれば確実に岩盤が削られる。帝国側も座して死を待つわけにはいかず、いずれ艦隊を突出させざるを得なくなるだろう。
持久戦に持ち込まれても、連邦側には後方に盤石な補給艦隊と、さらに長大な補給線が確保されている。物量戦こそが連邦の真骨頂だ。対して要塞側の補給は搭載分に限られる。連邦領内に侵入して2か月、要塞内の資源は確実に枯渇し始めているはずだ。
砲撃を続けてしばし経過したが、敵艦隊に動きはない。フレッチャー中将は、このまま月の岩盤を少しずつ削り取れば、いずれ勝利の女神が微笑むと確信し、薄く笑みを浮かべた。
しかし、その直後。
「司令! 艦隊後方に霊子反応多数! 次元弾道跳躍による着空反応です!」
「何だと? 補給艦隊が座標を間違えて現れたのか?」
「いえ! ……霊測より照合! 味方識別信号なし! 敵艦隊です!」
「馬鹿なっ!?」
「空母『グラーフ・ツェッペリン』以下、複数の艦影を確認! 帝国軍第1機動隊群です!」
時を同じくして、反対側の第5艦隊の後方にも敵の増援が出現した。2個艦隊で要塞を挟むはずが、帝国艦隊、第4艦隊、要塞、第5艦隊、帝国艦隊という、最悪の多層挟撃を受けてしまったのだ。
自軍をパン、敵を具としたハンバーガー。だが現実は、連邦艦隊こそが幾重ものパンに挟まれた具――某有名バーガーショップの「ビッグ〇ック」の如き有様だった。
このままでは、連邦の誇る二個艦隊が、無慈悲に平らげられてしまう。
「ぜ、全艦反転! HF隊、直ちに出撃せよ!!」