【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-B

「Rose of bluish purple, bind and restrain with your thorns!(紫紺の薔薇よ、その棘で縛り上げ、拘束せよ!)」

 

 第6機動騎士団所属、魔女型HFEF-111A レイブンの両手から、不気味に光る紫紺の蔦が伸びた。それは死神の触手のように、接近してきた帝国軍のHFティーガー2機へ瞬時に巻き付く。

 

「痺れちまえ! このドワーフ共が! 霊子茨鞭(Aether thorn whip)!」

 

 イザベラ・マルムストロームの鋭い詠唱と共に、2機のティーガーに猛烈な魔術の稲妻が走った。過負荷を受けた敵HFは機能を停止。帝国兵は機体を放棄し、操魂球(Cockpit Sphere)を射出して離脱していく。

 

 だが、危機は去っていない。ティーガーは3機1組の小隊で襲来していた。残る1機が片手斧を振り上げ、無防備なイザベラへと肉薄する。本来、霊電子戦機であるレイブンは、このような凄絶な接近戦を演じる機体ではない。

 

「Fxck! Fuxk! Fucx!」

 

 イザベラが毒づきながら撃墜を覚悟した、その瞬間。

 

 迫りくる敵HFの胸部から、鋭い銀の針が突き出した。ティーガーは痙攣するように震えた後、すべての力を失い沈黙する。操魂球ごと貫かれたのだ。その背後から、深紅の影が姿を現す。

 

『姐さん、大丈夫っすか!?』

 

 敵を背後からレイピアで一突きにしたのは、同じく第6機動騎士団のラファエル・フランシスが駆る魔剣士型YHFF-17 コブラ。型式の『Y』が示す通りコンペに敗れた試作機だが、特異な反射神経を持つラファエルにはこの機体が最も馴染んでいた。

 

 鎧を纏う一般的な騎士型とは一線を画す、真紅の騎士服を思わせる装甲。羽飾りが付いた帽子が、戦場において異彩を放っている。

 

 

「……助かったわ、礼を言うわね」

『いいんすよ。それにしても姐さん、この戦場、マジでヤバくないっすか?』

 

 連邦軍が要塞を挟み込んだはずが、別の宙域で待機していた帝国主力艦隊に逆に包囲されるという皮肉な展開。

 帝国は連邦艦隊が隣の空域から跳躍する瞬間に合わせ、入れ替わるように隣へ跳躍。その後、連邦の背後へと再び跳躍して戻ってきたのだ。次元弾道跳躍中はお互いに干渉できないという法則を逆手に取った、精密かつ大胆な戦術だ。

 

 狩人のつもりが、気づけば檻の中にいた。第4艦隊は今、帝国艦隊と要塞の強大な火力に挟み込まれている。

 

 戦域は狭隘な回廊であり、敵味方のHFが至近距離で入り乱れる混沌の極致と化していた。高密度のガスや塵が渦巻く高重力の回廊の外へ弾き飛ばされれば、機体は霊子出力が低下し、最悪脱出不可になる。全力を出すことすら許されない制限下での格闘戦。

 

「ええ……連邦と帝国の霊電子戦が拮抗しているわ。お互いの欺瞞情報が交錯して、マップがまともに機能していないわね」

 

 イザベラの仮想視界には、敵と味方の識別が秒単位で入れ替わる狂った戦域図が映し出されていた。イザベラ自身も霊電子攻撃(AEA)霊電子防護(AEP)術式(Script)を限界まで回しているが、膠着状態を打破できない。随伴する霊電子戦艦『アナポリス』すらも、敵の猛攻を防ぐので手一杯だ。

 

『連邦の霊電子戦能力が負けてるんすか!?』

「……まだ負けてはいないわ。でも、これまで経験したことのない強力な干渉を受けている」

 

 帝国のUボート部隊に所属する少年祭司たちの術とは明らかに異なる、重層的で洗練された波動。何か、未知の部隊がこの空域を支配している。

 

「ラファエル、嫌な予感がするわ。……いい、意地を張らずに生き残ることだけを考えなさい」

『了解っす。……姐さんも、死なないでくださいよ』

 

 ラファエルが離脱するのを見届け、イザベラはレイブンを再加速させる。黒い帽子にローブを纏ったその姿。霊子を循環させ大きく広げた黒いマントは、その名の通り、戦場に舞うレイブン(ワタリガラス)の翼のように美しく、そして不吉に広がった。

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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