【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第五話 戦場
Part-A


 舞台は移り、惑星カントウの衛星軌道。そこでは壮大な観艦式が執り行われようとしていた。

 

 観艦式とは、いわば艦隊版の観閲式である。精強な艦艇を披露することで軍の士気を鼓舞し、同時にその武威を国民に広くアピールすることが主目的だ。

 

 受閲艦艇と観閲艦艇、その双方が漆黒の宇宙を航行しながら、互いに威容を誇示していく。

 

 観閲官たる大元帥――すなわち(みかど)が座乗する艦は『御召艦』と呼ばれ、今回の栄誉を担うのは重力子魚雷護衛艦DDG-5173『こんごう』であった。

 

 重力子魚雷護衛艦(DDG)は、人型機動戦闘機HFが登場するまでは、宇宙戦における最高戦力として君臨していた。

 

 その主兵装である重力子魚雷は、高度なAIを搭載した自律型無人機だ。長時間の哨戒や偵察、さらには敵対魚雷の迎撃までも自力でこなし、敵艦を発見すると、自爆攻撃する。いわば自爆型ドローンである。

 

 霊子は重力子によって減衰する性質を持つ。重力子魚雷はその物理特性を利用し、霊子によって強化された敵艦の防御を無効化。その後、全質量をエネルギーへと変換して対象を破壊する。軍艦に展開されている霊殻体(Aether Force Shell)を通常技術で突破する唯一の方法だ。

 

 魚雷は無人機ゆえに、有人機では耐えられない超高機動が可能であり、かつての主力であった航空機型機動戦闘機ではもはや太刀打ちできない領域に達していた。

 

 一時は有人戦闘機不要論までが囁かれ、大量の魚雷を搭載した母艦としてのDDGが誕生したという経緯がある。

 

 しかし、HFの開発によって戦場のパラダイムは一変した。

 重力子魚雷の出力ではHFが展開する霊力場(Aether Force Field)を突破できず、さらには機動力においてもHFに凌駕されることが判明したのである。

 

 現在では第一線の座をHFに譲ったものの、対HF以外においては重力子魚雷は依然として絶対的な威力を誇っており、主力の一角を占め続けている。

 

――

 

 『こんごう』の航行方向とは逆向きに、受閲艦艇が長大な縦列陣形を形成し、観閲艦の眼前を次々と通過していく。

 

 蒼い惑星を背景に、多目的フリゲート(FFM)、星系警護護衛艦(DE)、汎用護衛艦(DD)、そして強力なDDGやDDHが、整然と隊列を保ちながら通り過ぎる。

 

 受閲艦艇と観閲艦艇の狭間を、HFの編隊が高速で駆け抜けた。アクロバット飛行を専門とする精鋭チーム、通称『ブルーインパルス』だ。

 

 彼らはダイヤモンド隊形やデルタ隊形を維持したまま、寸分の狂いもない展示飛行を披露する。一見軽やかに舞っているようだが、ここは巨大な引力を持つ惑星の至近だ。わずかな操縦ミスが、宇宙への放逐か地表への墜落を招く。極めて卓越した技量が要求される、まさに「神技」であった。

 

 ユイたちの母艦『かが』もまた、受閲艦艇の列に加わっていた。広大な甲板にはHFが整列し、観閲官に対し不動の敬礼を捧げている。

 

 零式人型機動戦闘機は基本的に明灰白色で統一されているが、中隊長であるユイの機体は鮮やかなスカイブルー、ナユの機体は深みのあるオリーブグリーンで塗装され、彩りを添えていた。

 

 『こんごう』が『かが』の真横を通過するその瞬間、突如として全回路に通信が割り込んできた。

 

「かがの諸君。NGS 6633宙域遭遇戦では、ご苦労であった。新星系警護でも期待する」

 

 それは、(みかど)直々の、威厳に満ちた御言葉であった。

 

 観艦式において個別の艦に直接お言葉が下されるのは、異例中の異例である。『かが』の艦橋は驚きと光栄に包まれ、ざわめきが広がったが、艦長であるナナだけは、冷静に別の意図を読み取っていた。

 

(……陛下も、連合の不穏な動きを完全に把握されている。ただの警護任務では済まないことが確定したわね)

 

 観艦式は無事に幕を閉じ、1週間後。

 『かが』を含む第04護衛隊群は、警護任務を帯びて本州を離れ、未開の新星系へと舵を切る。

 

 そこは、間もなく「戦場」へと変貌を遂げる場所であった。

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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