【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第四十六話 分断
Part-A


 『魔女の森』と称されるノーフォーク魔術同盟の本部は、ケンブリッジ州の州都ブリッジン星にある。

 

 この惑星は豊かな森林に恵まれ、衛星軌道上からも鮮やかな緑が確認できる。その多くは入植後に植林されたものだが、中には二千年前の移民時に地球から直接持ち込まれた貴重な原種も含まれていた。

 

 魔術同盟の本部はその深い森に抱かれるように鎮座しており、驚くべきことに建物自体も重厚な木造建築で構成されている。

 

 人類が銀河系に進出してまだ二千五百年。大きく育った樹木は銀河全体を見渡しても希少であり、紙の原材料ですら高価な代物だ。まして建築資材としてこれほどの分量を投入するのは、極めて贅沢な、あるいは狂気じみた伝統の誇示と言えた。

 

 それでも本部が木造であるのは、魔術士としての譲れない矜持があるからだ。

 

 現代の術式兵器には導霊性に優れた合金神金(orichalcum)が多用されているが、かつては木材こそが霊子制御の主役だった。地球脱出時の移民船においても、霊子(Aetherion)を循環させる回路として特殊加工された木材が用いられていたという。

 遡れば、太古の地球にいた数少ない魔術士たちが携えていたのも「木の杖」であった。魔術士にとって、木という素材は魂の根源に触れるための特別な媒介なのだ。

 

 

 その歴史ある板張りの通路に、コツコツと小気味よい足音を響かせながら歩く女性がいた。黒い鍔広の帽子に、深い闇を切り取ったような黒のローブ。魔術同盟における最高礼装を纏ったその姿は、まさに魔女そのものだ。

 

 彼女の名はイザベラ・マルムストローム。12貴族の子女であり、円卓の騎士団(Knights of the Roundtable)の一員でもある。

 

 イザベラが廊下の角を曲がると、前方の扉から出てきた人物と鉢合わせになった。

 

「あら、ブレマー義姉さん」

「ん? イザベラか。久しぶりね」

 

 現れたのは、やはり黒の正装に身を包んだ美しい魔女。連邦軍の戦略情報収集艦SSGN-1736『オハイオ』の艦長、ブレマー・キトサップだ。彼女はイザベラの兄と婚約しており、将来はマルムストローム家の一員となることが決まっている。

 19歳のイザベラと、義姉となる予定の27歳のブレマー。二人は以前から家族同然の良好な関係を築いていた。

 

 二人は自然と肩を並べ、語らいながら歩き出す。

 

「イザベラ、今日はどうしてここに?」

「連邦軍の配置換えが決まりましたので、その報告に伺いました」

 

 イザベラが所属していた第6機動騎士団は、先の(ルート)99会戦において、帝国の機動要塞に完膚なきまで叩きのめされた。母艦である空母『レキシントン』が轟沈するという凄惨な敗北の中、彼女は駆逐艦に拾われ、命からがら戦場を脱出したのだ。

 

「そう、大変だったわね」

「はい。それで、第6機動騎士団の配置換えになりました」

「どこの所属になるの?」

「新設される第8艦隊です。太陽系攻防戦からの生還者を中心に編成が進められています」

 

 連邦軍が誇る7個の主力艦隊(ナンバーフリート)は、帝国の侵攻により第2、第3、第4艦隊が消滅。第5艦隊も戦力の半分以上を喪失している。

 首都ロードンの防衛を担う第1艦隊は、偶然にも遠征中であったため全滅こそ免れた。だが、母港である衛星『青い月』の基地が要塞の砲撃で壊滅したため、補給拠点と膨大な物資、人材を失い、身動きが取れずにいる。

 残る第6、第7艦隊は無傷だが、広大な連邦全土をカバーするにはあまりに手薄だった。

 

 新設の第8艦隊にしても、即戦力として機能するには、まだ相当な時間を要するだろう。

 

「ほんとにクソドワーフ共がやりたい放題しやがって」

「ええ、全く。ファッ〇ンドワーフですわ」

 

 帝国を嘲笑う隠語である「ドワーフ」。気心の知れた間柄ゆえか、二人の会話には自然と毒のある言葉が混じる。

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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