【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
「まだ皇軍艦隊は見つからんのか」
「はっ、未だUボートの索敵網に捉えることができておりません。正体不明の強力な霊電子攻撃を受けているとの報告が入っております」
「祭司どもめ、役立たずが」
一向に明瞭にならない戦況報告に、獅子公ハインリヒは忌々しげに毒づいた。
帝国の二大諸侯であるアルブレヒト熊公とハインリヒ獅子公。現在、アルブレヒトは宣戦布告してきた大八洲皇国と、それに呼応したサッポロ条約機構への警戒のため、東部戦線に釘付けとなっていた。
対してハインリヒは、帝国国防軍による連邦侵攻の足元を固めるべく、西部戦線の兵站維持を担っている。その過程で占領下に置かれたフランクス領の平定と防衛も、彼の領邦軍の担当だ。連邦との戦争が終結すれば、皇帝から多大な領土割譲が約束されており、ハインリヒの野心は膨らむ一方だった。
「くそ、まさか皇国がこれほどの大規模戦力をこちら側へ差し向けてくるとは……」
現在、皇帝フリードリヒⅣ世が率いる機動要塞は連邦領内で猛威を振るっており、連邦軍にフランクス領を奪還する余力はないはずだった。手薄な後方の守備に過ぎないと考えていたハインリヒにとって、東部戦線を飛び越えて皇国艦隊が侵攻してきた事態は、完全に計算外だった。
「せめて敵の進攻ルートが判明すれば、戦力の集中もできるのだがな」
「最新の解析でも、ノルマンディ星系とパドカレー星系のどちらに現れるか特定できておりません。参謀本部の意見も割れておりますが、現状はパドカレー側を推す声が優勢です」
ハインリヒの苛立ちを受け、副官が慎重に答える。
フランクス国境に位置するノルマンディとパドカレー。どちらも居住可能惑星を持たない資源採取用の星系に過ぎず、戦略的な重要度は低い。だが、どちらに敵が現れるにせよ、艦隊を駐留させれば星系外からの膨大な補給維持費が発生する。二箇所同時展開は、領邦軍の財政にとっても大きな負担であった。
「ノルマンディ側の迎撃準備は整っているのか?」
「はっ、重力子魚雷の敷設は既に完了しております。総数600機。着空と同時に敵を包囲・殲滅する手はずです」
「……それで足りると思うか?」
「太陽系攻防戦では連邦艦隊に多大な出血を強いた実績があります。ですが、皇国を相手にどこまで通用するかは未知数でありますな」
「敵が罠に飛び込んでくるのを祈るしかなかろう」
戦力の分散を恐れたハインリヒは、主力をパドカレー星系に集結させ、ノルマンディは自動迎撃網による「罠」に留めるという博打を選んだ。
帝国軍にとっての最大の障壁は、侵攻目標を秘匿し、帝国側の目を完全に封じている皇国の術士――巫女たちの存在であった。
――
「ショタ……じゃなかった、可愛い少年祭司どもめ。お姉さまがお尻ぺんぺんしてあげるからね(じゅる)」
「ナゴミ姉さま、よだれ、よだれ」
皇国の霊電子戦艦SS-5501『そうりゅう』の艦橋で、妹の呉ナトミから冷ややかなツッコミを受ける艦長、呉ナゴミ。
『そうりゅう』を旗艦とする第1霊電子艦隊は、開戦前から連邦とフランクス王国の周辺宙域に潜伏し、膨大な情報収集を続けてきた。
彼女たちは、先行した連邦軍の魔女と帝国の少年祭司による術式戦を克明に観察・分析し、その完璧なカウンターを用意していたのだ。かつての赤壁戦争で魔女たちに煮え湯を飲まされた経験が、今、最高の形で活かされている。
帝国のUボート部隊は個艦の能力こそ限定的だが、
だが、皇国の巫女たちが仕掛けたのは、より根源的な干渉――