【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
皇紀4903年10月5日21時。ノルマンディ星系外縁部の虚空に、突如として複数の光点が弾けた。
帝国領邦軍が敷設していた感知式の重力子魚雷が、空間の歪みに反応して一斉に起動。飢えた鮫の如く光の源へと殺到する。
光が収まった中心に座していたのは、皇国護衛艦隊第01護衛隊群に所属するDDG-5179『まや』。
『まや』は
真空の宇宙で、魚雷同士の凄絶なドッグファイトが始まった。AI搭載の無人機である魚雷には有人機のような
さらに現れたのは『まや』一隻ではない。皇国護衛艦隊が保有する重力子魚雷護衛艦(DDG)計8隻が、一斉にこの宙域に現れたのだ。物量と性能で帝国側の防衛線を完全に凌駕したDDG隊は、自艦を無傷に保ったまま、帝国の迎撃網を数分足らずで全滅させた。
――
「『まや』より入電。宙域の掃海作業、完了しました!」
「帝国軍の反応は?」
「広域
「よし。全艦、
「了解!」
人型搭載護衛艦DDH-5183『いずも』の艦橋。統合任務部隊を率いる横田ハジメ武将補は、迷いなく決断を下した。
「陛下、これよりノルマンディ星系へ進入いたします」
「はい。……案外、あっけないものですね」
指揮官席の後方に控えていた
「事前の霊電子戦で勝利し、敵の『目』を潰してありますから。巫女たちの働きを、後で労ってあげてください。……とはいえ、完全に無傷ではありません。今回の掃海戦で、我が軍も魚雷の30%を喪失しました。星系内での迅速な補給が肝要です」
「分かりました。計画通り、このノルマンディを反攻の橋頭堡としましょう。自由フランクス艦隊にも伝えてください。……例の放送、予定通りお願いします。と」
「御意」
無人機の消耗だけで済んだのは僥倖だが、3割という数字は決して小さくはない。一度奪われた領土を奪還することの厳しさを、女帝は改めて噛み締めていた。
「シズカ、第1霊電子艦隊の旗艦艦長は、確か呉家の娘でしたよね?」
「はい。呉ナゴミ2等術佐です。特別な恩賞の準備を。陛下から直々にお言葉を頂ければ、彼女もさぞかし喜ぶことでしょう」
「ええ、そうしましょう」
傍らに控える侍従長、佐世保シズカに女帝が微笑む。皇国の頂点にしてシントウ教の首座たる女帝からの激励は、術士にとって至高の栄誉であった。
まさか当のナゴミが、モニター越しに帝国側の「ショタ」を品定めして涎を垂らしているなど、露ほども知らずに。