【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
旧フランクス王国の首都惑星パリーヌ。その廃墟のようなビルの一室に、一人の男が血相を変えて飛び込んできた。
「おい! 銀河ネットに繋げ! 早くしろ!!」
「どうしたんだ、そんなに慌てて」
薄暗い部屋の中、数人の男たちが一つのテーブルを囲み、展開されたナノボットのウィンドウを凝視する。
画面に映し出されていたのは、一人の少年であった。
『フランクス王国の同胞たちよ! ワタシは、帰ってきた!』
その力強い宣言の主は、自由フランクス政府代表、そして元フランクス国王シャルルⅢ世その人であった。
『長く待たせてすまない! 多くの英霊たちが捧げた命が決して無駄ではなかったことを証明するために! 再びこの地にフランクス王国の旗を掲げるために! ワタシは、祖国解放の先陣として帰ってきた!』
食い入るように画面を見つめる男たちは、フランクスのレジスタンスだった。
帝国に占領されてから1年8ヶ月。この地を統治してきたのは、規律に厳しい帝国国防軍ではなく、ハインリヒの領邦軍であった。
国防軍の戦力が連邦侵攻に割かれた結果、フランクス各州には急造の「保安隊」が配置される。帝国領邦で募集されたこの部隊は、実態を言えば食い詰めた海賊崩れやならず者の集まりだった。
彼らは大規模な虐殺こそ控えていたが、その振る舞いは粗暴の極みだ。立場を悪用した商店からの強奪、些細な理由での暴行が日常茶飯事となっていた。
特に民衆を苦しめたのが「レジスタンス狩り」という名の私刑だ。確かな証拠もなく一般市民を「反逆者」と決めつけて拘束し、密告を奨励して疑心暗鬼を煽る。偽の密告すら検証せずに処刑を行うその蛮行に、パリーヌの治安は底なしの泥沼へと沈んでいた。
だが、その圧政こそが、皮肉にも人々の団結を生んだ。当初は個人のささやかな抵抗に過ぎなかった動きは、密告の網を潜り抜けて地下へと広がり、やがて巨大なネットワーク――「レジスタンス」へと成長した。保安隊への憎悪は今や沸点に達している。
「リーダー……ついに、この時が来たんだな」
「ああ、間違いない」
リーダーと呼ばれた男は、元フランクス王国軍局所泡艦隊のHFパイロットであった。
ケンダルク星系での激戦。退却する艦隊を逃がすため、殿となって帝国軍のティーガーに撃墜された過去を持つ。幸いにも
あの絶望的な撤退戦。最後まで戦場に留まり、敵を蹂躙した国王専用機ラファール隊の雄姿を彼は忘れていない。殿を務めた国王は、次元跳躍の直前、星系全体へ届く広域通信でこう言い放った。
『フランクスよ! ワタシは必ず戻ってくる!』
その言葉を信じ続け、耐え忍んできた。
そして約束が今、現実のものとなった。国王は演説をこう締めくくる。
『……フランクス王国民よ! ワタシは、ここに帰ってきた!』
配信が切れると同時に、リーダーが椅子を蹴って立ち上がった。
「よし、反撃の開始だ! クソ野郎どもを追い出し、祖国の土を取り戻すぞ! 各地のレジスタンスに連絡! それからローマリア解放戦線にもこの映像を送れ! 今こそ合流の時だ!」
「「「おおおおおおお!!」」」
部屋を揺るがす咆哮。男たちの瞳には、一年半ぶりに希望の火が灯っていた。
続く