【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

174 / 292
Part-C

ないごてなんじゃ(何故なんだ)!?兄貴!」

「まあ落ち着け」

 

 思わず皇国語(サツマ弁)が出てしまうシロウ・カデナに対して、冷静に連邦語で返す兄ジロウ。

 

 シロウは一時的な休暇で実家に帰って来た。そのとき連邦軍統合参謀本部員の兄ジロウも帰って来ていると知り、一目散に兄の部屋に飛び込んだ。

 

「第5艦隊の待機についてだろう?」

「そうだ!何で帝国を追ってはいけないんだ!」

 

 執務室の机をバンッと叩いて兄に迫る。

 

 シロウの所属する第5艦隊は、(ルート)99会戦で帝国軍の機動要塞に敗戦した。艦隊はほぼ半壊になり、シロウ率いる第3機動騎士団にも被害が出ている。一度体制を整え、再度出撃になるかと思っていたら、統合参謀本部から待ったが掛かり帝国軍の追尾と接触自体が禁止された。

 

「第5艦隊も被害を受けている。それを回復させる必要があるだろう」

「他の艦隊と連携できれば可能だろう!」

 

 味方には少なからず死傷者が出ている。敵討ちとはいわないが、シロウとしては帝国軍を放置することは許されない。

 

「他の艦隊も同じだ。連邦艦隊全体として戦力が半減している」

「しかし!」

「まあお前の気持ちは分かる。だが統合参謀本部の決定は変らん」

 

 シロウは机から手を放し、一旦深呼吸して落ち着こうとした。

 

「何故だ。戦力はまだ十分あるはずだ。聞けば他艦隊も待機命令が出ているそうじゃないか。このままでは帝国に連邦領土を蹂躙されるぞ」

「これまでのように追跡し攻撃を行っても被害が増えるだけという判断だ。一旦防御を固めて重要拠点の防衛に努めることになった」

「重要拠点?」

「12貴族を中心にした星系州領土だ」

「そ、そんな一般市民はどうなるんだ?」

 

 既に10星系が帝国軍に襲われている。今のところ市民には被害はないという報告だが、いつまでそうか分からない。連邦市民を守るための連邦軍が市民を防衛しないとは。

 

「結局12貴族。それも上位の爵位を持つ貴族の意向が強いということだ」

「そんな……」

「俺たちもそれは分かっているだろう?ずっと12貴族の立場を享受してきたのだから」

 

 シロウの家、カデナ家は12貴族だ。ただその中では新参もので元々大八洲(おおやしま)皇国だったカデナ家が連邦に渡ったのはおよそ150年前。サツ・ジゲン流などの武芸や武力を評価され、12貴族に加わった。

 

「くぞ!結局軍も貴族の言いなりかっ!」

「まあ、聞け。この件はまだ内密して欲しいんだが、ラムシュタイン卿が帝国に襲撃された。ついに12貴族にまで手が及んできた。うちも例外ではないかもしれんな」

「ラムシュタイン家……ヒルデガルドの所か」

 

 円卓の騎士団(Knights of the Roundtable)の一員であるヒルデガルド・ラムシュタインの実家が被害にあった。本人は家のことを毛嫌いしていたようだが。

 

「と、言う訳で第5艦隊はうちの星系州の防衛に入って貰った。もしグーム州に帝国の機動要塞が来たら頼むぞ」

 

 カデナ家のあるグーム州には第5艦隊の基地があった。もちろん第3機動騎士団の本部も同様。

 

「半減した戦力で防衛か……」

「それがカデナ家の立場だ。ただうちはまだましで、私設軍を頼るしかないところもあるからな。それに時間の問題かもしれん」

「ん?なにがだ?」

「これも他言無用だが、皇国軍がフランクス奪還に動いた」

「皇国が?」

「ああ。既にフランクス内に入ったらしい。フランクス及びローマリアが開放されると帝国軍の兵站に問題がでる。機動要塞も補給なしでいつまでもいられないだろう。いずれ撤退するというのが統合参謀本部の見解だ」

「くそ、自国を防衛するのに皇国軍だよりか。何が銀河国家群一の連邦軍だ。貴族を守るためだけの軍隊ではないはずだぞ。情けない……」

 

 シロウは悔しがった。これまで最強を自負してきた軍がこのありさまとは。同じ円卓の騎士団の団長である友人のアラス・エルメンドルフの言葉を思いだす。

 

(アラスが言った『連邦の根源的な問題』貴族社会の歪み。それが顕在化しているな。アラスも立場上辛いだろう。俺も同じ立場になっちまった……)

 

 情けなさと己の無力さにシロウは涙を一筋流した。

 

 

続く

 




評価、ご感想お待ちしています。

【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。