【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
「かっ、固い!!」
横田ユイの駆る零式HFの初撃は、敵HFティーガーに防がれた。
射程ギリギリの正面からではティーガーのラウンドシールドもあり、99式2号250mm連装機銃でもダメージを与えることができない。
ユイは改めて距離を取ろうとするが、敵HFもそう簡単にはさせてくれない。
生身の体が異空間にあるお陰で高Gに潰れずに済んでいるが、目まぐるしく動く空間グリッドのラインが飛ぶように流れる。
球状モニタの空間グリッドは格子状に表示され、比較物がない宇宙空間の移動速度、方向が視覚的に分かるようになっていた。
真っ直ぐ飛ぶだけであれば、空間グリッドが後ろに流れるだけだが、今はグルングルンと回転し続ける。生身であれば三半規管が狂わされ強烈な目まいを起こすだろう。
青い零式と灰色のティーガーは様々な曲線を描く。相手の後ろを取るように、かつ速度を落さず総エネルギーをなるべく減らさない様に。
時間にして10秒未満の格闘の末、零式HFの運動性機動性、そしてユイの技能により敵HFの背後を捕えた。
「逃がさない!」
敵は右に左にと振り切ろうとするが、そうはさせない。ユイは照準が合う瞬間、トリガーを絞る。
肩に装備している連装機銃から放たれた
あのダメージでは戦闘は続けられないだろう。向こうのパイロットは同じ判断をしたようで、操魂球を射出して脱出。撃墜が確定し、ユイの対帝国戦での初
(99式機銃はティーガーに通用するみたいね。前の89式小銃だったら弾かれてたわ)
新装備が有効に働いた証拠だ。合同訓練リムロックは無駄ではなかった。
『01。こちら02。大丈夫?』
僚機である星菱レイから通信が入る。彼が牽制してくれたおかげで一機に集中できていた。
「02。こちら01。ありがとう大丈夫よ。他の状況は?」
『うん。敵HF10機全て撃墜。さっきのが最後だったよ』
「そう……以外と少なかったね。もっと領邦軍がこっちの星系にくるかと思ったけど」
先ほど戦ったのは、帝国国防軍所属の黒灰色のティーガーではなく、灰色に塗装された領邦軍のティーガーだった。
帝国国防軍がフランクス王国をまず占領し、防衛には帝国領邦軍が当たっている。フランクス開放のため侵攻してきた皇国軍は領邦軍と戦闘になっていた。
フランクス開放統合任務部隊は、現在艦隊を2つに分けて元フランクス王国首都惑星パリーヌに向けて進軍中。一つは第01、03護衛隊群と自由フランクス艦隊。もう一つは第02、04護衛隊群。元国王を先にパリーヌに入れるべく、第02、04護衛隊群は敵を引き付けたいところ。
現在の位置、シャルトル星系に狙い通り領邦軍が来たが、思ったほどの戦力ではなかったようだ。HFも少なく、第一中隊だけの出撃で済んだ。しかし他に集中している様子でもない。
『ちょっと前にトロワと通信したんだけど、どうやらフランクスのレジスタンスが蜂起して各地で頑張っているみたい。それで戦力が分散してるんじゃないかな』
フランクス開放には、こちらの艦隊だけでなく王国民の支援も必須だ。どうやら上手く動いているらしい。
「なるほど。この間のトロワさんの演説が効いたのね」
ノルマンディー星系に進出した際に、全フランクスに向けて銀河ネット経由でトロワが帰還を宣言した。熱の籠ったいい演説だったが効果はあったようだ。
領邦軍はそれほど強く無く、パリーヌ開放までは行けるだろう。
ただ油断はならない。太陽系で追撃されたように、国防軍が黙っているとは思わない。そこからが本当の戦いだ。
「じゃあ、帰艦しましょう。休憩できるうちにしておかないと」
『了解』
第401人型機動戦闘飛行隊第一中隊はDDH-5184『かが』に帰艦した。次の戦闘に備えるために。