【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
「ノルマンディー星系までが
「たぶん、そうなんじゃない?」
『かが』の大会議室からの帰り道、二人の少女が並んで歩いていた。
瞳を輝かせる三沢ナユと、どこか生返事のユイ。二人は先ほどまで統合任務部隊の全体会議に出席していた。会議には第01護衛隊群や自由フランクス艦隊の幹部もホログラムで参加しており、久々にトロワの姿を拝めたナユは、これ以上ないほど上機嫌だった。
会議の報告によれば、各地のレジスタンスの活躍によって領邦軍の防衛網はズタズタになり、一部の宙域では撤退も始まっているという。だが一方で、隣国ローマリアを経由して帝国国防軍の主力が移動を開始したという不穏な情報もあった。真の勝利は、彼らを完全に打ち倒した時にこそ得られる。
熱っぽく語り続けるナユの斜め前を歩いていたユイが、通路の角に差し掛かったところで唐突に足を止めた。不意を突かれたナユが、その背中に衝突する。
「あいたっ! もう、どうしたのよユイ」
「……しっ」
ユイは何かを避けるように、通路の陰へと身を潜める。ナユが不思議に思って角からそっと覗き込むと、そこにはレイの姿があった。そして、その周囲には三人の女子隊員が群がっている。
「ああ、
「……別に、なんでもないわよ」
「ほーーーん?」
ナユがユイの顔をじろりと覗き込むと、ユイは気まずそうに視線を逸らした。
二人が聞き耳を立てていると、女子たちの賑やかな笑い声が聞こえてくる。
話の内容は、どうやらレイに剣術のコツを教わっているようだ。レイはいつもの真面目さで丁寧に解説しているのだが、対する彼女たちは「さすがレイ君!」「知らなかったぁ」「すごーい!」「センスいいですよね」「そうなんだ!」と、いわゆる『女のさしすせそ』を連発するばかりで、真剣に教わろうという気配は微塵も感じられない。
下心は見え見えだった。彼女たちはただ、レイとのお喋りを楽しみたいだけなのだ。
「なるほどねぇ。まあ、レイ君、最近は一段といい男になってるものね」
「そ、そうかな?」
「そうよ! 前まではどこか少年っぽさが残ってたけど、背も伸びて顔つきも精悍になってきたじゃない。飛行隊の女子たちの間でも、密かに株が爆上がり中なんだから」
「へ、へぇ……」
女子人気が高いと聞いて、ユイがどこか嬉しそうに、しかし複雑な表情で俯く。その様子を見たナユの口角が、意地悪く跳ね上がった。
「んで? やっぱり妬いてんの?」
「んなっ、なな、何よそれっ!」
みるみる顔を赤くして表情を激変させる親友。ナユにとって、これほどからかいがいのある相手はいない。
「いいじゃない、付き合ってるんだから多少の嫉妬くらい当たり前でしょ?」
「えっ、あ……付き合ってないよ?」
ニヤニヤしていたナユが、瞬時に凍りついた。彼女はゆっくりと首を傾げる。
「……は?」
「な、ナユ、顔が怖いって!」
ナユの瞳から光が消え、至近距離まで顔を近づけてきた。
「そんなわけないでしょ。あんたたち、あんなに分かりやすかったのに」
「だって、本当にそうなんだもん……」
「……ちょっと、こっち来なさい」
消え入るような声で俯くユイの手を掴み、ナユは力強く歩き出した。