【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第五十一話 告白
Part-A


 ユイは決断した。が、未だ前に進むことができていない。

 

 レイと2人っきりで話したいのに、中々時間が取れない。

 

 ユイは何とか時間を作って話そうとしても周りに誰か居たり、折角2人になっても帝国軍がちょっかい掛けに来てスクランブルが発生したりと、兎に角タイミングが悪い。

 

 中隊長としての執務もこなさなきゃいけない状況で、あまりの間の悪さに気ばかり焦る。

 

 今も、昼食の時間をちょっと早めに第2食堂に行ってみた。レイを見つけて話しかけたが。

 

「あ、レイ!あのね!」

「ユイ。ユイもお蕎麦食べる?」

「へ?」

 

 レイの手元を見ると、お盆に2つの器が乗っている。器からはホカホカとした湯気が立っていた。

 

「お蕎麦?」

「うん。師匠……給養員の浜松アキト1等武曹から、そば粉を貰ったんだ。もうすぐ年末だろ?年越し蕎麦用に仕入れたんだけど、試しに打ってみろって言われて作ってみた」

「作ったの!?」

「粉からね。お待ちどうさま」

 

 お盆はテーブルで待っていた2人の分だった。それぞれの前に手打ち蕎麦を置く。

 

「おー!来た来た!美味そう!」

「いい香りですわね」

 

 蕎麦には大き目の海老天が乗っていた。待っていたのは、三沢ゴウガとデルフィーヌ・ランディヴィジオ。たまたま食堂に居たらしい。

 

「手打ち蕎麦とか久々だぜ!よく作れたな?」

「師匠に教わりながらだけどね。天ぷらは流石に冷凍ものだけど。ユイ座って待っててね。直ぐ持ってくるから」

「う、うん」

 

 そう言って調理場に引っ込むレイ。あっけにとられたユイはデルフィーヌの隣にストンと座る。

 

 デルフィーヌは本来自由フランクス艦隊所属だが、今は連絡員として『かが』に乗船していた。

 

「では早速いただきまーす!」

「ゴウガ、レイさんを待たないんですの?」

「熱いうちに食べないと。麺が伸びちゃった方が申し訳ない」

 

 豪快にずるずるーと啜るゴウガ。隣のデルフィーヌは顔をしかめた。

 

「ちょっと食べ方が汚いですわよ」

「これが正式な蕎麦の食べ方でぃ!てやんでぃ、べらぼうめ!」

「べ、べら??」

 

 2人が漫才をしている間にも、レイがお盆を持って来た。ユイの前に蕎麦を置いて、自分の分も置きながら座る。

 

「「「いただきます」」」

 

 ゴウガを除く3人も蕎麦を食べ始める。デルフィーヌは最近、箸に慣れてきたようで優雅に蕎麦を口元に運ぶ。

 

「あら美味しい。パスタとは随分違う感じですのね。口にさわやかな香りが広がりますわ」

「蕎麦粉の風味だね。蕎麦粉と小麦粉の割合は、蕎麦粉が8割、小麦粉が2割で打ってるよ。二八そばっていうんだけど」

「ほうほう。このスープも美味しいですわね。コク?を感じますわ」

 

 器を持ち上げて豪快につゆを啜るゴウガを横目に、木製お玉でつゆを味わうデルフィーヌ。

 

「それは出汁に含まれるうま味だね。鰹節で作るんだ」

「なるほど。フランクスのフォンドボーみたいなものかしら」

 

 レイとデルフィーヌの会話を呆然と聞きながら蕎麦を食べるユイ。

 

「どうしたのユイ?美味しくなかった?」

 

 レイがユイの様子に気が付き心配そうな顔を向ける。

 

「え?いやすごく美味しいよ!」

「よかった」

 

 やさしい笑顔に戻るレイ。ユイは心配してくれたことに心の奥が温かくなる。ふとデルフィーヌを見ると優しい笑顔をしていた。

 

「ふふふ、ユイさんとレイさんは仲がよろしいんですのね」

「え?あははは。そういえばデルフィーヌさんは、トロワさんと離れて寂しくないんですか?」

 

 ユイは誤魔化すように話題を変える。

 

「そうですわね……寂しいのはそうなんですけど」

 

 現在、自由フランクス艦隊と皇軍は、次々に星系州の開放を行っている。帝国領邦軍の抵抗は少なく、ほぼ無傷で済んでいた。

 ただ予定されていた進軍速度からは少し遅い。惑星から帝国軍を叩きだし、降下すると民衆の大歓迎を受けた。そして必ずパレードが行われ、そのおかげで進軍に時間が掛かっている。

 民衆からの歓迎パレードなので無下にする訳にもいかない、トロワもパレードに参加して笑顔で手を振っていた。

 

「毎度毎度パレードに参加するのに大変な準備がいるそうよ。同僚が悲鳴を上げていました。陛下が大変なときに傍に居れないのは残念ですわ」

 

 デルフィーヌは小さな溜息をつく。その様子が可愛かったのでユイはお近づきになりたいと思う。

 

「ねぇ、デルフィーヌさん。フィーってお呼びしてもいいかしら?」

「ええ、良くってよ。私もユイって呼ぶわね」

 

 お蕎麦を食べながら微笑み合う。レイは何も言わず頷いていた。

 

 

「「「ご馳走様でした」」」

「お粗末さまでした」

 

 蕎麦を食べ終わった4人はそれぞれ動き出した。ゴウガがデルフィーヌを訓練に誘う。

 

「さあ、デルフィーヌ。シミュレーターで勝負するぞ!」

「食べたばかりですのよ?」

「敵は待ってくれないからな。なんだ?負けるのが怖いのか?」

「そんな訳ないでしょ!ギッタンギッタンにしてやりますわよ!」

「さすが悪役令嬢。その意気だ」

「そのアクヤクレイジョウというのが何か分かりませんが、馬鹿にされているのは理解できますわ」

「んじゃ、早よ行くぞ」

「もう、しょうがないですわね……」

 

 デルフィーヌは連絡員として来ているが、戦力として遊ばせておくのは勿体ないので、ゴウガと僚機を組んで貰っていた。本来の僚機であるナユは中隊の指揮に集中する。

 前はケンカばっかりしていたが、随分と仲良くなったもんだ。ぎゃいぎゃいと言い合いながら2人は揃って食堂から出て行く。レイもお盆を持って後片付けに調理場に戻って行った。

 

 ぽつんと残されたユイ。

 

「はっ!しまった!レイに言うタイミング逃した!」




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【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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