【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-D

 『かが』が通常空間へと躍り出た直後、先行していた第04護衛隊の汎用護衛艦DD-5105『いなづま』から、悲鳴に近い通信が飛び込んできた。

 

『こちら『いなづま』! 現在、赤壁連合の駆逐艦隊と交戦中! HFの数が圧倒的に足りないです! 『かが』、至急増援を求む!!』

 

 通信の主は『いなづま』艦長、佐世保フミ2等術佐。

 『いなづま』は着空直後、至近距離に赤壁連合・マンジュン国所属の駆逐艦6隻を捕捉。即座に戦闘へと突入したのだという。

 

 『かが』は即座に第一種戦闘配備を発令。重力子魚雷の射出と、HF隊の緊急発艦作業へと移った。

 

「待ち伏せ、でしょうか」

 

 矢継ぎ早に指示を飛ばした後、副長がぽつりと呟く。既にHFRに搭乗している艦長、呉ナナ1等術佐は、艦長席に投影された立体映像のまま静かに答えた。

 

「いいえ、おそらくは偶然よ。待ち伏せなら、置き魚雷などで着空の瞬間を狙い撃ちにするはずだもの」

「なるほど。報告によれば、敵方も慌てて攻撃を開始したようですからね」

「ええ。偶然にも同じ空域に着空したのでしょう」

「運が良いのか、悪いのか……」

「それは、これからの私達次第ね。霊探の状況はどう?」

 

 その問いは、艦橋のオペレーターへと向けられた。霊探術(Aether Radar)を制御している巫女装束の女性が、険しい表情で応じる。

 

「強力なジャミングを感知! 霊探の有効範囲は真っ白です!」

「了解。先行する人型早期警戒機と人型霊電子戦機の報告を待つしかないわね。霊測員、周囲に微かな感でもあれば即座に報告。一瞬の揺らぎも逃さないで」

「了解!」

「副長、群司令に現状を報告。第08護衛隊の投入は、一旦待機」

「はっ!」

 

 霊測員は、霊測術(Aether Sonar)を駆使して深淵なる宇宙の動静を監視する。

 

 霊探と霊測。これらは巫術士である「巫女」のみが制御を許される技術だ。高次元に広がるエーテル場を介し、霊波を観測する。

 霊波は高次元空間において光速を超えて伝播し、その波長や方向から敵の正確な位置を炙り出す。アクティブに放つ霊探、パッシブに耳を澄ます霊測。それぞれ状況に応じて使い分ける。

 

 何者かによる大規模な妨害で霊探が沈黙している今、霊測員の卓越した感覚のみが艦の生命線であった。

 

 その頃、砲雷科の管制室では、重力子魚雷の発射シーケンスが最終段階を迎えていた。

 

「諸元入力完了! 13番から37番、撃て!!」

 

 『かが』の側面に配されたVLS(垂直発射システム)が一斉に開放され、全長25mに及ぶ重力子魚雷が次々と虚空へと吐き出されていく。

 

 皇国が誇る89式魚雷のシルエットは、地球の海に棲まう最上位捕食者――サメを模していた。

 

 発射と同時に格納されていた鰭が展開され、魚雷は爆発的な加速を開始する。その鰭はHBLCフィンとして機能し、宇宙に光の尾を引きながら、瞬く間に視界から消失した。

 他国の魚雷が無機質な円筒形を基本とする中、皇国のそれは異彩を放っている。

 

 魚雷群は周辺宙域に散開。哨戒任務と同時に、敵側から放たれる魚雷への迎撃網を形成する。

 

 魚雷と母艦を繋ぐのは、超円環素子(Hyper Torus Element)によるリアルタイム通信。霊探が封じられた現状において、魚雷からもたらされる光学・電波観測情報こそが、この暗闇を照らす唯一の灯火であった。

 

 新星系。その地は着空の瞬間から、敵味方の鉄の巨獣とHFが入り乱れる、混沌の戦場と化していた。

 

 

続く

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/

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