【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
「カイヤ船長、光学で船影を捉えました。最大望遠に切り替えます」
「例の海賊船ね? アリーシャ」
「はい。シルエットから、セイルの数と形状が依頼主の情報と完全に一致しています」
それほど広くないブリッジに三人の姿。中央の船長席には黒髪を長く伸ばした女性。前方のオペレーター席には、茶髪のショートヘアと金髪のウェーブヘアをなびかせる二人が座っている。いずれもまだ若い女性だ。
正面のメインスクリーンには、輪郭を強調された一隻の宇宙船が映し出されていた。
「
「えへへ、まーかせて!」
2人のオペレーター、アリーシャ・ノーフォークは電子・通信関連を担当し、セリア・パールハーバは霊子制御を担当している。アリーシャが冷静に船影を分析する傍らで、セリアは船長に褒められたのが嬉しいのか、年相応に照れ笑いを浮かべていた。
「カイヤ船長、海賊船が動き出しました」
「向こうもこちらに気づいたか。セリア、セイル収納、重力源推進停止、核パルスエンジンで一気に距離を詰める」
「りょーかい! 左右セイル格納開始! 重力源推進カット! 核パルスエンジン一番、二番、三番起動……水素カートリッジ装填完了! レーザー点火タイミングは船長席へ回すよ! You have control!」
「I have control、アリーシャ、全艦に緊急加速を通達」
「全艦に通達。これより緊急加速を行います。総員、至急シートに体を固定してください」
カイヤ船長の号令に従い、セリアが船体制御を、アリーシャが船内放送を迅速に行う。
『
セイルは恒星風による推進や恒星光発電に用いられる。この時代、霊子を蓄える
この宇宙船のメインパイロットは、船長のカイヤ・ノースウッド自身が務めている。乗組員は全員が開魂者だが、中でもカイヤの霊力は群を抜いていた。
「船長より総員へ! 耐G姿勢! カウントダウン、5、4、3、2、1……レーザー点火!」
ズドン、という腹に響く振動と共に、急加速のGが全身をシートへと叩きつける。
船体後部に並ぶ三つのノズルから核融合反応による凄まじい推力が噴き出し、モニターに映る海賊船との距離がみるみる縮まっていく。
この相対速度のまま激突すれば、海賊船を真っ二つに断ち割ってしまうだろう。
「減速まで、3、2、1……スラスター点火! 逆噴射!」
今度は逆に、シートから放り出されるような猛烈な負のGが襲いかかる。安全バーで固定していなければ、一瞬で前方のパネルに叩きつけられるほどの衝撃だ。
「アリーシャ、敵船の内部構造を表示させて!」
「了解。側面中央部、隔壁周辺の通路が突入ポイントに最適かと。メインモニターに赤いラインで投影します」
「ありがとう。これより衝角戦に移ります。……船体強化、開始!」
カイヤが船長席の肘掛けに埋め込まれた
海賊船から放たれる迎撃レーザーやミサイルが船体を叩くが、カイヤの強化を受けた船体には傷一つ付かない。
「敵艦と接触するわ! 全員、対ショック姿勢!」
再び凄まじい震動。鳥の嘴に似た鋭利な衝角が、海賊船の船腹へと突き刺さる。
「セリア、船内状況の確認! アリーシャ、強襲乗船通達!」
「船体に異常なしだよ!」「衝角準備室、強襲乗船を開始してください」
かつての地球で行われた衝角戦は、船首を突き刺して浸水させるのが目的であった。だがここは宇宙空間だ。当然ながら浸水はないが、代わりに衝角は「強襲用通路」へと変貌する。
目的は、敵船への直接突入による制圧である。