【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-B

 海賊の兵隊たちが、武器を手に次々と目的の通路へと集結していた。自分たちの船に突き刺さった衝角の先端が、通路の壁を突き破っている。周辺は即座に樹脂製の補修材で封鎖され、艦内の気密は維持されていた。

 

 衝角からの強襲乗船はこの時代の常套手段だ。兵隊長らしき男が怒声を張り上げる。

 

「敵が出てきたら一斉射撃だ! 弾をケチるんじゃねえぞ!」

 

 兵たちは少し離れた場所にバリケードを築き、レーザー小銃やミサイルランチャーの銃口を、突き刺さった鉄の嘴へと向ける。

 

 極限の緊張感の中、誰かがごくりと唾を飲み込んだ。その瞬間、三角柱の衝角の先端がギギッ、と重苦しい音を立てて開き始めた。

 

 完全に開放されたその奥から、一人の人影がのっそりと姿を現す。

 

「う、撃て!! 撃て撃て撃てぇ!!」

 

 無数のレーザーとミサイルが一点に集中し、通路は瞬く間に爆風と閃光に飲み込まれた。海賊たちはバリケードの陰に隠れ、衝撃波をやり過ごす。

 

 轟音が止み、煙が立ち込める中、男たちが恐る恐る顔を上げた。

 

「……やったか?」

 

 お決まりの言葉が漏れる。だが、煙の奥から一筋の黄金の光が飛び出した。

 

 その人影は眩い黄金色の動甲冑に身を包み、騎士盾(カイトシールド)を構えながら、猛然とこちらへ突っ込んでくる。

 

「な、なんだあいつは!? 撃て、撃ち続けろ!!」

 

 黄金の騎士は凄まじい集中砲火を盾一枚で弾き飛ばし、バリケードへと強行突入。パニックに陥った兵たちを、右手の片手剣が一閃する。彼らも動甲冑を纏っていたが、剣はその装甲を紙のように切り裂いた。鮮血が通路の壁を赤く塗り潰していく。

 

 指揮を執っていた兵隊長は、その圧倒的な力の前に、踵を返して真っ先に逃げ出す。それを見た他の兵たちも、武器を投げ捨てて我先にと逃走する。

 

 黄金の騎士は歩みを止めることなく、冷徹な追撃を開始した。その足音は通路の奥へと消えていく。

 

――

 

「マジかよ……ギルのやつ、一瞬の躊躇もなかったな。普通、あの弾幕を前にしたら少しは怯むだろ……」

「流石は『勇者』ギル殿だ。覚悟が違う」

「まあ、依頼主(クライアント)から被害の詳細を聞いたとき、あいつ本気でブチギレてたからな……」

 

 黄金の動甲冑、ギルが視界から消えると、衝角の先端から新たに二人の人物が降り立った。

 一人は深緑色の動甲冑を纏い、背に身の丈ほどの大剣を背負っている。もう一人は青い動甲冑で、穂先の鋭い短槍を携えていた。

 

『こちらカイヤ。状況を報告して』

「こちらクロゥ。ギルが一人で突っ込んで行ったぞ。もう、あいつ一人でいいんじゃね?」

『そういうわけにはいかないでしょ。ギルにはブリッジを目指してもらっているわ。クロゥとアムルは、人質の解放に向かって。今アリーシャが海賊船のコンピュータをクラッキングして人質の場所を走査しているわ』

「ほいよ」「了解だ」

 

 黄金の動甲冑がギルバート・デヴォンポート。緑色がクロヴィス・ポーツマス。青色がアムル・クライド。突入チームの全メンバーである。『自由の女神』号の乗員は、ブリッジの三名と合わせて六名しか居ない。

 

 嵐が過ぎ去った後のような凄惨な通路を歩いていると、再び通信が入る。

 

『クラッキング完了。人質までのマップを転送します。ルート上の全隔壁のロックを強制解除しました』

「ありがとうアリーシャ。流石だな」

『アムルも気をつけてくださいね。以上です』

 

 マップが動甲冑のバイザーに投影される。人質が監禁されている区画への最短ルートが鮮やかに示された。

 

 ルートに従って進むと、進路が上方へと折れている箇所に差し掛かる。クロゥは見上げるような位置にあるハッチを見て、小さく溜息をついた。

 

「こっちか……って、タラップが降りてねえじゃねえか」

 

 手動式のハッチらしく、遠隔操作が効かなかったようだ。

 

「ふん。貴様の得意な2段ジャンプでぴょんぴょんと飛び上がればよかろう。それとも蔦がなければ登れんのか、この猿め」

「ああん? んだと、このトカゲ野郎。表へ出ろ、コラ」

 

 動甲冑越しに激しく睨み合う二人。アムルは身軽なクロゥを「猿」と揶揄し、クロゥはアムルの兜の装飾が竜を模していることから、彼を「トカゲ」と呼んで煽り合う。

 

 そんな二人を挟み撃ちにしようと、海賊の増援が押し寄せた。今度は白兵戦用の武器、湾曲刀カットラスを装備している。銃が効かないなら近接戦で、という目論見だろう。

 

「死ねえっ!」

 

 海賊は、言い合いを続ける二人の背後から、カットラスを振り下ろす。

 

「「うるさい!!」」

 

 一瞥もくれぬまま、二人の刃が海賊を切り伏せる。通路の両側から迫った海賊たちは、あっという間に地に伏した。

 

「ふん。ウザいな……。さっさと行くぞ」

「分かっている。私に命令するな」

 

 何事もなかったかのように、二人は跳躍一番、上の通路へと飛び上がり、先を急ぐ。

 

 クロゥとアムルは会えば喧嘩ばかりしているが、実戦になれば阿吽の呼吸を見せる。皮肉にも、最も気の合う相棒同士であった。

 




評価、ご感想お待ちしています。

【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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