【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
「ギル、これは一体どういうことなの?」
「……今まで黙っていて済まない。僕の先祖には、地球統合政府の職員がいたんだ」
話せば長くなる、と前置きして、ギルは仲間たちを空いている席へと促した。彼がコンソールを操作すると、まるで主を認めたかのように、機密情報の閲覧制限が次々と解除されていく。
事の起こりは、ギルの曽祖父の遺言だった。
彼によれば、ギルの先祖は大移民時代が始まる以前の地球において、地球統合政府の最高意思決定機関に名を連ねていたのだという。地球統合政府とは、人類の歴史上、初めて地球全土の統一を成し遂げた組織であった。
この政府の主導により、銀河への大規模な移民が開始されたのだ。そもそも政府が樹立されたきっかけは、地球歴2000年に発生した『大破壊』と呼ばれる未曾有の災厄だった。人類の半数が失われるという絶望的な状況下で、種を存続させるべく、銀河への移民計画が急ピッチで進められたのである。
「地球統合政府が移民を計画し、実行していた間、人類の間で国家間の戦争は一度たりとも起きなかったそうだ」
まだ重力制御の技術すら満足になかった時代。惑星の重力圏を脱出するだけでも、全人類の叡智と資源を結集する必要があった。協力なくしては、銀河はおろか太陽系内への進出さえも叶わなかっただろう。
地球統合政府は、全人類の共通目標として「宇宙開発」を掲げ、争いに向けられるはずだった膨大なエネルギーをすべて外宇宙へと向けさせたのだ。
移民船団が太陽系を後にするまでの間、政府の統治下において大きな戦争が起きることはなかった。テロなどの小競り合いは絶えなかったが、当時の国家は宇宙進出にすべての国力を注ぎ込んでいた。国民の、そして人類の未来そのものが懸かっていたからだ。
「そして移民船団がすべて太陽系を脱出した時、地球統合政府は役目を終えたとして解散した」
まるでその日のために結成されたかのように、組織はあっさりと解体された。それが彼らの真の目的だったのかもしれない。実際、何十光年という距離に散らばった人類を、単一の政府が統合管理し続けることなど、物理的に不可能なのだから。
「長くなったが、ここからが本題だ。解散する直前、地球統合政府はあるものをこの場所に遺した。それがここさ。カイヤ、ここの詳細マップを出せるか?」
「え? ええ、ちょっと探してみるわ……あった。表示するわね」
カイヤの操作により、正面のモニターに立体的な図面が展開された。
まずは現在地のマップ。それが縮小され、クレーター内部の構造が明らかになる。同様の設備が別のクレーターにも点在しているようだ。さらに全体図を縮小していくと、月という天体そのものの内部構造が映し出された。
月の中心核に、異質な何かが存在している。
マップの説明欄には、ただ一言『コア』とだけ記されており、直径13.75kmの巨大な球体であることだけが示されていた。
「そのコアと呼ばれているもの。……どうやら、現代の
「えっ!?」
ギルの衝撃的な説明に、その場にいた全員が息を呑んだ。
現代、宇宙船の制御に不可欠なものとして普及している操縦球。だが、それはせいぜい拳大のサイズでしかない。
「あの操縦球と、同じ……これが?」
「そうだ、カイヤ。この巨大なコアこそが、現代のあらゆる操縦球のオリジンなんだ。そして、このコアを内包する月という天体そのものが――先史文明の遺した、巨大な遺跡だったんだよ」
続く