【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
今度は、驚きのあまり声も出なかった。
銀河に進出して久しいが、未だ人類以外の知性的生命体は見つかっていない。だというのに、外ならぬ母星・地球に、明らかな異星文明の痕跡が残されていたのだ。
「先史文明……。人類よりも遥か昔に文明を築き上げた異星の技術を、我々は知らずのうちに利用していたということだ。ひい爺さんの話では、既に先史文明人自体はこの銀河には存在しないらしいが、遺跡だけは残されている。そして、その遺跡に秘められた科学は、未だ人類には解明できていない部分が多い」
先ほど表示されていたホログラムのメッセージが、静かに更新された。
『封印は解かれた。ようこそ、元地球の民よ。先史文明の情報をここに残す。科学が進歩した君たちならば、新たな発見があるだろう。これが人類の発展のために正しく使われることを願う。――地球統合政府』
「これこそが、僕が地球へ、この月に来た本当の目的だ」
コントロールルームに、重苦しいまでの静寂が降りる。
やがて、長年のパートナーであるカイヤが、震える声でポツリと呟いた。
「衝撃的な内容だけど……ギル、あなたの目的はこの先史文明の情報なの? だとしたら、そのオーバーテクノロジーを使って、一体何をするつもり?」
それまで険しい表情を崩さなかったギルが、不敵にニヤリと唇を歪めた。
「この技術を使って……造らないか? 僕たちの、理想の国を」
「「「「「はぁぁっ!?」」」」」
今度は、ギルを除く五人が一斉に絶叫した。
「待て待てギル! 国だと!? 国を造るって、本気で言ってるのか!?」
「そうですよギル殿! 流石にそれは無茶が過ぎる」
「情報の波が凄すぎて、もう頭が痛いよー……」
「……あまりに突飛な発想ですわね」
クロゥ、アムル、セリア、アリーシャが口々に困惑を漏らす。
「……詳しく話してくれる?」
ただ一人、カイヤだけが落ち着きを取り戻し、言葉の続きを促した。
「ああ、そうだな。順を追って話そう。……カイヤ。まず、現状の国家間における最大の障壁は何だと思う?」
「ええ……そうね。国と国との物理的な距離、つまり航路の問題かしら。それと、情報の伝達速度。これは致命的な問題だと思うわ」
現在、星系間を移動する唯一の手段として超光速航行
結果として航路を一定に保つことができず、軍による防衛も困難となり、海賊の跋扈を許している。海賊に遭遇するかどうかは「運が悪かった」で済まされるのが一般の認識であった。
また、跳躍先に未知の障害物があっても
星系間の移動は、言わば命懸けのギャンブルに近く、貿易や人の往来に多大な支障をきたしていたのだ。
さらに、超光速の航行手段はあっても、超光速の通信手段は未だ存在しない。星系内にはネットワークが敷かれているが、星系間を跨ぐとなると、途端に通信は途絶する。宇宙船による物理的な郵便が、今なお最速の通信手段となっているのが現状だ。
「この技術的限界があるために、未だに複数の星系を束ねる広域国家は存在し得ない」