【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
隣の星系で今この瞬間に何が起きているのか、それを知る術がない。ゆえに国家は星系という単位でのみ成立する。それはまるで、かつての地球における中世ヨーロッパの都市国家のような閉鎖的な状況であった。
「だが、逆に言えばだ。技術的な問題さえ解消できれば、真の意味での『星系間国家』の樹立は可能になる」
ギルは射抜くような視線で、仲間たちの顔を一人ずつ見渡した。
「セリア。君は、某国の第二王女だったな」
「……うん。お家騒動に巻き込まれて暗殺されかけたところを、クロゥに助けてもらったんだ」
「アムル。君は、宗教対立の犠牲になりかけたのだったか」
「ああ。国のトップにザウエルとかいう邪教徒が居座ってな。アリーシャを生贄にするとか言い出したから、叩き伏せて国を出てきた」
「僕も同じだ。スーマール帝国を名乗る勢力に侵攻され、亡国の王子となって、巫女のカイヤと共に逃げ延びてきた」
『
「同じ悲劇を、二度と繰り返させないために。……僕らの手で国を造ろう。恒久的な平和を維持できる、星系間国家を」
「星系間国家……」
「まあ、すべては技術的な問題を解決できればの話だけどな。ひい爺さんによれば、先史文明人はかつて別の銀河で広大な星系間国家を形成していたらしい。可能性はゼロじゃないはずだ」
確固たる自信を漲らせるギル。部屋は再び、静かな熱を帯びた沈黙に包まれた。
沈黙を破ったのは、クロゥだった。
「……いいんじゃねえか? 冒険者稼業も面白かったが、そろそろ別のデカいことがしたくなってたところだ」
その一言で、他のメンバーたちの迷いも消えた。
「それなら、私は次元弾道跳躍の抜本的な改良を調査するわ。さっき、霊子の蓄積と開放に関する興味深い記述を見つけたの」
「頼む、カイヤ」
「私は、超光速の通信手段について調べてみます。以前から関心のあったテーマなの。他の星系の優れた技術者たちにも、協力を依頼していいかしら?」
「もちろんだ、アリーシャ。他のメンバーも、信頼できる協力者を募ってほしい。流石に六人だけでは手に余るからな」
「そういうことなら、あたしも! 最古の国、大八洲皇国に行って、昔の地球時代、何があったか調査してみるよ! 国造りの参考になるかも!」
「ああ、頼んだぞ、セリア」
「おいおい。俺たちはどうすればいいんだ?」
クロゥがギルとアムルに視線を向けた。ギルは迷いなく答える。
「決まっている。防衛だ」
「防衛? 一体、何からだ?」
「こんな『お宝』の山を、目ざとい無法者たちが見逃すはずがないだろう」
確かに、ここに眠る情報は文字通り「宝物」だ。ひとたびその価値が知れ渡れば、海賊どころか既存の国家すら血眼になって奪いに来るだろう。
「なるほどな。そいつは気合を入れねえと」
「ああ、その通りだ」
「ギル殿。腕の立つ他の冒険者たちに声をかけないのですか?」
「もちろん、公式に依頼を出すつもりだ。既に『信頼に値する』連中はリストアップしてある」
それぞれの役割が、明確に定まった。
「しばらくは、ここを拠点に活動しよう。資金を稼ぎ、有能な仲間を募るために、冒険者としての活動も当面は継続する」
全員が、力強く頷いた。
「さあ、始めよう。僕たちの星系間国家、建国への第一歩を!」
「おう!」「ああ!」「ええ!」「うん!」「はい!」