【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
『以上が、地球自由連邦建国のあらましです』
普段から多くの信徒に向けて講話をされているためか、
ユイはまるで、幼い頃に絵本の読み聞かせをしてもらっているような感覚に陥る。あまりにも滑らかに耳に入ってきたため、一度深呼吸をしてから、その内容を反芻してみた。
(連邦がたった六人の冒険者から始まったなんて……。それに地球の衛星が先史文明の遺跡で、それを研究して国を造ったって……んん?)
「先史文明!? それって、宇宙人ってことですか!?」
思わず、静寂を破る大声をあげてしまったユイ。
「はっ、す、すみません聖下っ」
『いいのですよ、ユイさん。これらは最高機密として公表されていませんから、驚くのも無理はありません』
ウィンドウ越しのニューズは、慈愛に満ちた笑みを浮かべていた。
『ユイさんの仰る通り、地球の衛星「月」は先史文明の遺構……私たちとは異なる、かつての知的生命体が遺したものです』
この驚天動地の事実に目を丸くしているのは、ユイと正面で口を半開きにしているリンだけのようだ。他の参列者たちは、既にこの事実を周知している様子であった。
『その文明の主たちは、地球に巨大な遺跡を遺してどこかへ去ってしまったようです。連邦の始祖たる六人は、その遺跡の技術を紐解き、新たな科学を打ち立てることで連邦を建国するに至りました』
今の高度な科学技術の根底には、異星の英知が流れている。ユイは言いようのない不思議な感覚に包まれた。人類が銀河に進出して二千年以上。いまだに知的生命体はおろか、原始的な生命すら発見できていないはずだったのに。
『始祖たちは、当時の自分たちに理解できる範囲の調査を終えると、その遺跡を「封印」しました』
「え? どうしてでしょう。もっと時間をかけて調査を続ければよかったのでは?」
『その疑問はもっともです、ユイさん。ですが、制御しきれない強大な技術は、時として破滅を招く……。だからこそ、封印したのです』
「破滅……?」
『地球歴2000年。かつて「大破壊」が起きたことは知っていますね?』
「はい。初等部の歴史の授業で習いました」
皇国の歴史教育において最初に学ぶのが、皇紀2660年(地球歴2000年)に発生した『大破壊』である。そこから地球脱出、移民、入植、そして現在の大八洲皇国建国へと繋がっていく。大破壊以前の記録は考古学の領域であり、高等教育以上の専門分野として扱われている。
『その「大破壊」こそ、先史文明の遺跡が暴走した結果だったのです』
「ええっ!?」
歴史の教科書では、巨大隕石の衝突や環境激変など諸説あり、人類が半減した大災害という認識しかなかった。それが、地球を捨てることになった真の理由だったというのか。
『南極に存在した遺跡の暴走により「大破壊」は起きました。遺跡とは、それほどまでに危険なものなのです。だからこそ、ギルたちは後世のために封印を施した。……ちなみに、S-Filesの「S」は、おそらく
「封印された情報……それが、始まりの四家に託されていたのですね」
『はい。そしてここからが本題ですが、帝国はその情報の一部を解読し、月の封印を解いてしまいました。そして現在、あの月を「機動要塞」として復活させているのです』
「な、なんてことを……」