【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第一話 初陣
Part-A


 大八洲(おおやしま)皇国の皇紀4900年12月9日。

 

 皇都から遠く離れた宇宙空間を航行中の人型搭載護衛艦DDH-5184『かが』。その艦内に警報が響いたのは3分前だ。

 

「あ、艦長!お休みのところ申し訳ありません」

「いえ、状況は?」

 

 『かが』の艦長、呉ナナ1等術佐は休息時間中に警報で叩き起こされた。

 

 長い黒髪は少しほつれているが、最低限の身だしなみを整えているのは妙齢の女性ならではの意地だろうか。白の幹部制服にタイトスカートをしっかりと着こなし正帽を被っている。

 

 広い艦橋の中央にある赤色の艦長席に座り、男性の副長から状況を確認。

 

「軍艦?こんなところに?」

「ええ、恐らく駆逐艦クラスが3隻。艦種と所属国は確認中です」

「なんと間の悪いこと、わざわざ航路から離れた宙域を選んだのに」

 

 そう言って嘆息する。

 

 大八洲皇国の新造艦であるDDH-5184『かが』は第04護衛隊群第04護衛隊に配備され、最終的な訓練期間中だ。

 人目のある場所は避け、主要銀河航路外のNGS 6633と呼ばれる宙域付近まで遥々やってきたというのに。

 

「それはあちらも同じかもしれませんね。船舶自動識別装置を作動させていません」

「あら」

「あちらも人目に付きたくない行動中のようですね。哨戒中の魚雷023から、映像入りました。スクリーンに投影します。超円環素子(Super torus element)通信のリアルタイム映像です。本艦から4光時の距離」

 

 AI搭載の無人機である魚雷023からリアルタイム映像が届く。艦橋正面の3Dモニタに、該当の軍艦3隻が映し出された。確かに500m級駆逐艦のようで。砲塔や魚雷発射機が確認できる。巡航しているだけで戦闘態勢にはまだ入っていないようだが。

 

「映像からデータベースで検索、艦種と所属国がでました」

「どこの?」

「ヨソン国軍所属のナジ級駆逐艦。マンジュン国からの払い下げですね。搭載HFは、ミコヤ21兵士型を3機。3世代ほど古い機体です」

 

 現代戦では、HFと呼ばれる人型機動戦闘機(Human Frame)が主力だ。

 

 軍艦よりもHFの数で勝敗が決まると言っていい。該当駆逐艦に3機づつ。計9機が敵戦力となる。

 

「ヨソン国……赤壁連合かぁ」

 

 ナナ艦長が困ったような声を上げる。

 

 赤連壁合(Red Cliffs Union)は、七つの国からなる国家連合だ。大八洲皇国とは宇宙塵の巨大な壁を隔てた隣国でもある。簡単に事を起こすのは避けたい。

 

「今のところは敵国認定はしていませんね。味方でもないですが。……しかし別の理由ができました」

「なに?」

「どうやら手配中の駆逐艦のようです。過去に国際定期航路上で海賊行為をしています。我が国の客船、貨物船も被害に会っています」

 

「私掠船ね……」

「どうします?」

「ほっとく訳には行かないわね。群司令部へ連絡、あと、そうりゅうと通信を」

「はっ!」

 

 今回の訓練航海には『かが』だけでなく霊電子戦艦SS-5501『そうりゅう』も随伴していた。『そうりゅう』は霊電子戦術に優れており、こちらより状況を把握しているはずだ。

 

「そうりゅうと通信が繋がりました」

『お姉さま……じゃなかった呉ナナ1等術佐お呼びでしょうか!』

 

 通信が繋がりスクリーンに出たそうりゅう艦長は、黒髪ショートカットの少女とも言っていい年齢の女性だった。軍服ではなく白い着物(白衣)に緋袴(ひばかま)。いわゆる巫女装束を着ている。

 

 そして何故か笑顔。ナナとは従妹の間柄で大分懐かれている。

 

「呉ナゴミ2等術佐。状況は把握してる?」

『はい!ヨソン国軍の駆逐艦3隻ですね。既に『穢れを祓って』周囲1.2光年を支配下に置いています』

「さすがね、ナゴミ」

 

 ナナより幼さを残したナゴミは照れた様子を見せた。

 

『えへへ、うちの巫女たちは優秀ですからね!敵に一切気付かせないで撤退も可能ですが?』

「そうもいかないわ。手配中の海賊船なので拿捕・攻撃を考えています」

『りょーかいです!霊電子戦で補佐します!』

「お願いね。以上」

 

 呉ナナ艦長は方針を固め即座に行動を開始する。

 

 まず第04護衛隊群の司令部に連絡し、敵艦の攻撃許可を取る。群司令部が状況を確認し、海賊退治を理由に群司令からも了解を得た。

 

 

 方針が決まり、各部門の長を艦内通信で集め指示を出す。

 

「機関長。機関状態は?」

『問題なし。いつでも全力を出せるよ』

 

 通信ウィンドウに出たのは、色黒で恰幅のいい中年女性だ。艦長がとても頼りにしている。

 

「了解。HFを発艦させますので準備をお願いします」

『あいよ!』

 

 

「砲雷長。雷撃戦の準備を。哨戒と直掩、後、星間機動戦の結果で対艦攻撃実施へ」

『はい!』

「魚雷配置は……ここに対艦攻撃用6機」

 

 艦長は、宙域マップで配備位置を示す。敵艦から少し離れた位置に輝点が付いている。

 

 まだ若い青年男性の砲雷長は、その位置の意図を図りかねた。

 

『ここですか?』

「ええ、今回はHF戦を主戦にしますので念のための予備と思ってください」

『承知しました!』

 

 

 次に通信に出たのは、艦長と同じくらいの年の男性。茶色い後ろ髪を少し伸ばし纏めている。顔は悪くなくモテそうな雰囲気があった。いわゆるデキる男に見える。

 

「飛行長。今回の主役はあなた方です」

『はっ!』

「第401人型機動戦闘飛行隊第一中隊全機で敵HFを迎え撃ってください」

『では、早期警戒機を先行させ、第二中隊は直掩機として待機します』

「よろしい。今回がHF隊にとって初の実戦です。彼等のサポートをお願いします」

『了解です!』

 

 新造艦である『かが』は初の実戦になるが、乗員の殆どが経験者で問題ない。

 

 ただHFのパイロットは、全員成人になったばかりの15歳の少年少女だ。

 

 真の意味で初の実戦になる。搭乗するHFも最新型の星菱零式人型機動戦闘機。今回の戦いで真価が問われる。

 

「では改めて、行動開始とします!第一種戦闘配備!」

「はっ!第一種戦闘配備!」

 

 副長の復唱で全艦に再び警報が響き渡る。

 

 乗員全てが戦闘配置に着き、人型搭載護衛艦DDH-5184『かが』は、まるで一つの生き物のように動き出した。

 

「ヒューマンフレーム隊。発艦始め!」

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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