【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-C

「だが、このデータがあれば、機動要塞の弱点を突く攻略法が見つかるかもしれない。……横田ユイさん」

「は、はいっ!?」

 

 別のことに意識を飛ばしていたユイだったが、唐突にシャルルⅢ世から名指しされ、跳ねるように返事をした。

 

「感謝する。君がもたらしてくれた情報のおかげで、この暗雲に光明が見えた」

「いえ、そんな……。私はただ、母の形見を預かっていただけですから」

 

 実際、ユイは自分の手柄だとは思っていない。母が遺してくれたペンダントが、たまたま鍵だっただけだ。

 

「いいや、それでもだ。そして、君を含めた401飛行隊の皆にも礼を言いたい。彼らと共に訓練を重ねたことで、ワタシは確かな自信を掴むことができた」

 

 確かに合同訓練は行っていたが、ユイとしてはトロワから教わった「部分的運動エネルギー付与」の恩恵の方が大きいと感じている。ただ、彼がレイやゴウガたちと親交を深めていたのは事実だ。ユイが納得しかけたとき、ある違和感に気づいた。

 

「えっ……? 陛下、まさかご自身も戦われるつもりなのですか!?」

「その通りだ。皇軍には感謝してもしきれないが、帝国皇帝との決着には、ワタシ自ら率いるフランクス軍が先陣を切らねば、王国民に示しがつかない」

「そんな、危険すぎます!」

 

 援護を求めて周囲を見渡すが、意外にも反対する声は上がらなかった。誰もが、王の決意を尊重しているようだった。

 

「危険は承知の上だ。我が王家には、古くから伝わる言葉がある。――「ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)」。高潔な地位にある者は、その地位に応じた相応の義務を果たさねばならない。その責任を他者に委ねたまま、国王を名乗ることはできないのだよ」

「!?」

 

 ユイは衝撃を受けた。ノブレス・オブリージュ……それは、亡き母から幾度となく教わってきた言葉だったからだ。あれは、フランクスの古語だったのか。

 

「もちろん、無駄死にをするつもりはないよ。親友である星菱レイ君からも、「頭は柔軟に使え」と教わったしね」

 

 少しだけ砕けた口調で笑うトロワ。レイと彼は、いつの間にそこまで深い親交を結んでいたのだろうか。

 

「当然、401飛行隊や皇軍の力も借りたいと思っている。帝国という巨大な壁を穿つには、君たちが必要だ」

「は、はいっ!」

 

 ユイは401隊の代表として、力強く返答した。トロワの表情から深刻な影が消え、晴れやかな笑顔が覗く。

 

 そして、隣では女帝が王の決意に静かに俯いていたが、やがて顔を上げて凛とした声で宣言した。

 

「もちろんです。古くから交流を重ねてきた、王家と皇家の絆ですもの。大八洲皇軍、必ずやお力添えをいたします」

「ありがとうございます。この恩、決して忘れません」

 

 女帝もまた覚悟を決めたようだ。彼女は佐世保シズカの方を向いた。

 

「シズカ、帝国の機動要塞は、どの程度の期間でフランクス領へ到達すると予測されますか?」

「連邦側からの情報によれば、あと一ヶ月ほどで到着する模様です。ただ、局所泡(ローカルバブル)ウォールを越えて以降、足取りが途絶えているのが気がかりではありますが……」

 

 一ヶ月。その短期間のうちに要塞の弱点を解明し、具体的な攻略作戦を立案しなければならない。

 

「あまり時間は残されていないようだね。この場は一旦、散会としよう。皆さん、ありがとうございました」

 

 フランクス王の号令により、会議は終了した。参加者たちが慌ただしく退室していく。

 

『あ、リンは残ってくれるかしら? 久しぶりにゆっくりお話ししましょう』

「はい、ニューズ……あ、ええと」

『いいのですよ、私的な場では今まで通りで』

「あはは、よかった」

 

 リンとニューズは、旧友同士の語らいのために会議室に残るようだ。邪魔にならないよう、ユイも席を立つ。

 

『ユイさんにも……いえ、今は帝国のことに集中していただいた方が良いですね』

「……?」

『ただ、先ほどシャルルⅢ世陛下が仰っていた「ノブレス・オブリージュ」。これは、始まりの四家の間でも大切に受け継がれてきた精神なのです。……これだけは、覚えておいてくださいね』

「は、はい。心に留めておきます」

 

 その言葉の意味を噛み締めながら、ユイは会議室を後にした。

 

――

 

 会議室を出た廊下では、父である横田ハジメ武将補が待っていた。

 

「すまなかったな、ユイ。急に呼び出して」

「ううん、大丈夫」

「しかし……ユリアが、母さんが始まりの四家の血を引いていたとはな……」

 

 長年連れ添った妻に大きな隠し事があった事実は、夫として少し寂しさを感じているようだった。

 

「だが、彼女なりの事情があったのだろう。ユリアが家を出る最後の日、どこか決然とした、思い詰めたような様子だった。ユイにあのペンダントを託したのも、いつか来るこの日のためだったのかもしれないな」

「……うん」

 

 先ほど、自分の手でペンダントを付け直した際、母の穏やかな顔がフラッシュバックした。

 

「でも、お母さん、最後は笑っていたよ」

「……そうか。そうだったな」

「お父さん……ちょっとだけ、ぎゅってしてもいい?」

「ああ。構わんよ」

 

 幼い頃、寂しくなるとよくこうして甘えていたが、軍に入ってからは一度もなかった。何年ぶりの温もり。

 

「お父さん、寂しい……?」

 

 ハジメの胸に顔を埋め、ユイの声がくぐもる。

 

「……いや。ユイがこうして元気にいてくれる。それだけで十分だ。本当に、ユリアに似てきたな、お前は」

「えへへ。……ねえ、もし良い人がいたら、再婚してもいいんだよ?」

「はは、そんな相手はいないさ。俺は今でも、お前のお母さん……ユリアを愛しているからな」

「そっか」

 

 しばらくそのままでいた後、ユイはパッと腕を解いた。

 

「では、横田ユイ2等武尉、部署に戻ります!」

「うむ。精進したまえ」

 

 最後は一軍人として、互いに敬礼を交わして別れる。戦争はまだ、終わっていないのだから。

 

 

続く

 

 




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【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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