【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
皇紀4903年12月24日。惑星パリーヌの首都シャンゼリゼ市は、歓喜の渦に包まれていた。本日、この地で国王の帰還とフランクス解放を祝す凱旋パレードが行われ、その掉尾を飾る演説を国王シャルルⅢ世が行う予定となっていた。
かつての英明なる国王たちが築いた凱旋門を起点とし、シャンゼリゼ市の中央通りを練り歩く。広大な目抜き通りは、立錐の余地もないほど王国民によって埋め尽くされていた。
聴衆の中には、他星系から駆けつけた者も少なくない。それは既に国内航路の安全が確保されている証左でもある。帝国領邦軍は既に国内から一掃され、取り残された保安隊はすべて拘束。各州の法に基づき、厳正に裁かれることになった。帝国への協力者たちの摘発も、着々と進められている。
皇軍とフランクス軍の主力は、一ヶ月後に予測される機動要塞の襲来に備え、ローマリア国境付近へと集結を始めていた。おそらく帝国は、敗走した帝国国防軍第3、4機動隊群を回収した上で、全戦力をもってこの地を再侵攻してくるだろう。
それが、避けては通れない過酷な決戦になることは明白だった。
だが、今はただこの解放の瞬間を祝いたい。王国民は総出でお祭り騒ぎに興じていた。中央通りには公式発表で100万人が集まり、沿道のみならず建物の窓からも、無数の人々が身を乗り出してパレードを見守っている。
凱旋門の前に、ラファールM剣士型HFが左右一列に並び立つ。
現地時間の正午ちょうど。二機のラファールがサーベルの切っ先を合わせ、光り輝くゲートを形成すると、雲一つない青空の下でパレードが開始された。
まず凱旋門を潜り抜けたのは、パレードの先導を務める軍楽隊だ。高らかな行進曲が中央通りに鳴り響くが、それをかき消さんばかりの歓声が沿道から沸き起こる。色とりどりの紙吹雪や花びらが舞い、喜びに狂う群衆がパレードを熱烈に歓迎した。
上空を九機のミラージュ剣士型HFが通過し、フランクス王国の象徴たる
車列の中央を行くのは、国王シャルルⅢ世が座るオープンカーだ。力強く手を振る若き王の隣には、
王国解放の立役者たる皇国は絶大な歓迎を受けており、特に国王と同年代で気品に満ちた女帝の人気は極めて高かった。
国王を乗せた車が通過するたび、地鳴りのような歓声が一段と大きくなる。
凱旋パレードが、まさに最高潮を迎えようとしたその時だった。
突如として、空一面が白濁した光に包まれた。
群衆はあまりの眩しさに目を細め、パレード関係者も不測の事態に困惑の声を上げる。
数秒後、眩暈を誘うような光が収まると、今度は急速に世界が影に沈み始めた。つい先ほどまで雲一つなかったはずの空が、不自然な闇に浸食されていく。誰もが不可解な恐怖を覚え、一斉に天を仰ぐ。
首都星系ヴェルサイユ州を照らす恒星が、何かに喰われるように欠け始める。だが、この惑星パリーヌには日食を引き起こすほどの巨大な衛星は存在しない。
つまり、これほどの規模で恒星を遮蔽できる存在は、ただ一つ。
それが帝国軍の機動要塞であると悟った瞬間、歓喜の叫びは悲鳴へと変わり、人々はパニックに陥って逃げ惑い始めた。
パレードを護衛していたフランクス軍も、車列を止めて呆然と空を見上げることしかできない。
恒星は完全にその姿を隠し、空には漆黒の円盤と、その周囲に立ち昇るコロナの光――皆既日食が完成した。
正午だというのに夜の如き暗黒に包まれた中で、シャルルⅢ世が静かに俯いて呟いた。
「ふふふ……。せっかくの晴れ舞台を、台無しにしてくれる……」
「トロワ……」
隣に座る女帝は、痛ましそうな表情で彼を見つめる。
しかし、フランクス国王はゆっくりと顔を上げると、その唇に不敵な笑みを刻んだ。
「もう一度、パレードをやり直さなくてはね。……今度は、帝国の皇帝を討ち倒した後に!」
「はい、陛下!」