【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第六十話 突破
Part-A


 後に『バトル・オブ・パリーヌ』と語り継がれることになるパリーヌ防衛戦の開始まで、残りわずか。

 

 帝国の機動要塞は依然として、パリーヌ星から384,400km離れた宙域で静かに沈黙を保っている。光の速度であれば一秒強で到達できる距離だが、ここは惑星重力圏の只中だ。霊子出力が制限されるこの環境では、通常の星間機動戦のような亜光速を出すことは叶わない。

 

 要塞はその巨体で恒星の光を遮り、惑星パリーヌの地表へ不気味な円い影を落としていた。

 

 フランクス・皇国の連合軍は、既に全機を所定のポジションへ配置。HF隊を前面に押し出し、艦隊を後衛に据える陣形を敷いている。対する帝国軍も、機動要塞の前面にHF隊を厚く配し、要塞の背後に主力艦隊を展開。

 

 双方が最強兵器であるHFを主戦力に据え、真っ向からの決戦を望んでいた。

 

 敵味方合わせて160機以上が激突する、銀河国家群の歴史上、最大規模のHF戦。

 

 その口火を切る大役を担ったコールサイン『ブルーリボン01』の機内へ、通信が入る。

 

『ブルーリボン01。こちらホワイトアイ』

「ホワイトアイ。こちらブルーリボン01。どうしたの?」

 

 今回、横田ユイは中隊指揮から外れているため、横須賀リンの早期警戒管制機との直接的な連携はない。

 

『あー……どうしているかなと思って。大丈夫、落ち着いてる?』

 

 どうやら、親友として心配してくれているらしい。流石は士官学校時代からの付き合いだ。

 

「心配無用よ、大丈夫。……力は、しっかり貰ったからね」

『力? ……まあ、それだけリラックスしているなら安心したわ』

 

 リンの声に安堵の色が混じる。

 

 力は、レイから貰った。今ならどんな困難も打ち破れそうな、底知れない万能感に満ちている。これこそが、かつてヒルダが口にしていた「愛の力」なのだろうか。

 

『私は全体への機体情報提供。シュユは霊電子戦で手一杯。アラヤはもし艦隊戦になった時に備えて待機中よ。ごめんね、402隊は直接戦闘には出られないわ』

「何を言ってるの、十分よ」

 

 作戦遂行のため、敵HFの情報を取得し、逐一味方HFへマッチングする膨大な作業。たとえ術式(Script)を併用しているとはいえ、余計な気を使う暇などないはずだ。友人として案じてくれているだけで、ユイは十分嬉しかった。

 

『気になったから、一点だけ。例のヒルダさんのHFだけど……今のところ、敵の布陣には出ていないみたい』

「えっ?」

『まだ要塞内に控えているのか、あるいは別の場所にいるのか。ちょっと不気味だから、気をつけて』

「分かった。ありがとう、リン」

『じゃあ、頑張ってね』

「うん」

 

 短く応じて通信を切る。

 

 ヒルダが所属する帝国国防軍第3、4機動隊群は、既に機動要塞と合流しているはずだ。先の戦闘で僚機はレイが撃墜したが、ヒルダのHFは無傷で残っている。

 

 嫌な予感は拭えないが、今はただ、己の役割を全うするのみ。

 

 仮想空間の時計が、作戦開始の時刻を告げようとしていた。

 

 その時、友軍の全体通信が割り込む。

 

『……こちらフランクス国王、シャルルⅢ世だ』

 

 メインモニターに、見慣れた顔が映し出される。今日の彼は、一人のパイロットとしてHFのスーツに身を包んでいた。

 

『まずは、謝辞を述べたい。フランクス国民、協力してくれたローマリア軍。そしてワタシを正しき道へと導いてくれた大八洲(おおやしま)皇国の女帝陛下、ならびに皇軍の諸君。連合軍の同志たちのおかげで、我々はついにここまで来ることができた。心より、感謝する』

 

 スクリーンの中で、若き王が静かに頭を下げる。

 

『さて、全HF戦闘員の諸君。我々はこれから帝国機動要塞への侵攻を開始する。青い稲妻(éclair bleu)とその僚機以外は、このワタシも含めてすべてが囮だ。だが、我々が一人でも欠ければ、作戦は成立しない。「一機一殺」。帝国機動要塞の前に立ちはだかるすべてが敵である。諸君らの健闘を期待する』

 

 一度言葉を切り、彼は力強く拳を握りしめた。

 

『この戦いこそが、最後の戦いとなるだろう! 我々は必ずや、勝利を掴み取る!』

 

 気合の入った宣言が、全軍の士気を爆発的に高めた。艦内各所から、地鳴りのような歓声が上がっているのが伝わってくる。

 

 士気は最高潮。精神で負ける要素はない。あとは、開戦の瞬間を待つだけだ。

 

 

『作戦開始まで、残り一分』

 

 国王に代わり、オペレーターの冷静なアナウンスが響く。

 

 ユイは仮想空間のコックピットで深く息を吐き、覚悟を定めた。

 

『……残り三十秒』

 

 仮想コックピットの操縦桿から手を放し、HFの素体と意識を完全に同調させる。愛用の薙刀を、魂ごと握り込む。

 

『十秒前』

 

 アイドリング状態だった素体が一気に活性化し、凄まじい出力が機体を駆け巡る。

 

『五、四、三……』

 

 静止していた味方HF群の中で、ブルーリボン01がひときわ鮮やかな青い光を放ち始めた。

 

『二、一……作戦、開始!!』

「ブルーリボン01、エンゲージ!」

 

 弾かれたように飛び出したブルーリボン01は、目にも留まらぬ一閃で、最前列に居た帝国軍HFを一瞬のうちに葬り去った。

 




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【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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