【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
ブルーリボン01が瞬く間に帝国軍の一機を撃墜した時、その場にいた両軍の誰もが、その異次元の挙動に反応できずにいた。
「行け! 行け! 誰にも追い付けない速度で飛べ、零式!」
自らを鼓舞するユイの声に応えるように、機体はさらに加速する。
次の標的を捕捉し、突撃。二機目もまた、一刀のもとに切り捨てられた。
虚空に描かれる軌跡はジグザグと鋭く折れ、まるで本物の稲妻が宇宙を走っているかのようだ。青い彗燐光を激しく振り撒き、速度を上げ続けるその姿は、文字通り戦場で輝く『青い稲妻』そのものであった。
――
「そうだ! それでこそ、ユイだ!」
その青い光条を、たった一機で追い続ける血色のHF。ブルーリボン02。
普段は感情を面に現さないレイが、今この時ばかりは、狂おしいほどの歓喜に表情を歪めていた。
「行け! 行け、ユイ! 決して振り向かずに飛べ! 誰も届かない場所へ!」
ブルーリボン02もまた、全リミッターを解除し、霊子出力と速度を限界まで引き上げる。
「ユイの隣を飛べるのは、このボクだけだ……!」
――
青いHFの暴走とも言える突撃に対し、帝国軍のパイロットたちは為す術がなかった。一機、また一機と無残に撃破される様を目の当たりにし、盤石だったはずの隊列が急速に乱れていく。
唯一、冷静さを保っていたのは、帝国軍の中隊長だった。彼は愛機のティーガーを即座に反転させ、混乱する部下たちへ号令を発しようとする。
「やつを止めろ! 中隊全機反転、追撃を……」
だが、その言葉が完成することはなかった。背後から、心臓を鷲掴みにされるような凄まじいプレッシャーを感じ、彼は戦慄と共に振り向く。
「な……っ、赤い、彗燐光……!?」
そこにあったのは、巨大な圧力を伴う、禍々しくも美しい深紅の光を纏った一機の影。
「ひっ……!」
数多の戦場を潜り抜けてきた帝国軍のエースをして、本能的な恐怖を抱かせる圧倒的な存在感。ブルーリボン02の一閃が、抵抗の暇すら与えずティーガーを粉砕、爆散させた。
紅のHFを駆るレイは、ユイの背後を狙おうとする不届きな敵機を、片っ端から地獄へと叩き落としていく。
――
開戦直前、帝国皇帝フリードリヒⅣ世は、当然のように自らHFに乗り込み、最前線に立っている。
皇帝機『カイザー・ティーゲル』は、帝国HF群の中央最前列で、悠然と腕を組み仁王立ちしていた。
皇帝は開戦前から、戦域に漂う血と鉄の匂いに、心地よい高揚感を覚えている。
だが、開戦と同時に、自身のすぐ傍らを一筋の青い稲妻が突き抜けていく。
「ほほぅ、活きが良いのが一匹紛れ込んでおるな! どれ、儂が直々に引導を……」
『待て! 帝国皇帝フリードリヒⅣ世! このフランクス国王、シャルルⅢ世が貴公の相手だ!』
皇帝が機体を翻そうとした瞬間、全周波数をジャックする強烈な挑発が叩き込まれた。
深紅のマントを翻すフランクスのラファールM剣士型HFが、カイザー・ティーゲルへと肉薄する。
「がっはっはっは! 良い! 良いぞ、若き王よ! その果敢な挑戦、受けて立とう! お前らは手を出すなよ!」
皇帝は高らかに笑って一騎打ちに応じ、側近たちへ介入を禁じた。
ラファールが繰り出す鋭いサーベルの一撃を、皇帝機は巨大な両手斧『グレートアクス』で真正面から受け止める。
この最高首脳同士の激突は、瞬時に帝国軍全軍へと伝わり、指揮系統に一瞬の動揺を招く。
王国皇国連合軍はその隙を逃さない。各機があらかじめ割り振られていたターゲットへ一斉に突撃を開始し、戦場は目論見通りの大混戦へと突入した。