【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
『かが』の艦橋でも、HF隊の状況はリアルタイムで共有されていた。戦域の視界が開けたことで、艦長ナナは安堵の吐息を漏らす。
「あちらは何とかなったようね。こちらも即座に霊電子対抗手段を――」
「霊測に感あり! 方位右65、仰角+25、距離1.5光分! 駆逐艦クラス6隻が着空しました!」
霊測員の鋭い報告が飛ぶ。敵の増援はまだ止まらないらしい。ナナは間髪入れずに飛行科へ指示を飛ばした。
「飛行長! 直掩の第一中隊を回して、敵駆逐艦およびHFを迎撃させて!」
『了解!』
「敵艦の数が多いわね……人型対艦攻撃機は出せる?」
『出せます! 402ブラックボマー、発艦準備!』
飛行長ツクモから、第402人型術式作戦隊、コールサイン『ブラックボマー』のパイロット――佐世保アラヤ2等術尉に出撃命令が下る。銀髪の少年は、待機室で不敵に独りごちた。
「ふん、ようやく俺様の出番か」
人型対艦攻撃機に搭乗するアラヤは、巫術を操るリンやシュユとは異なり、より攻撃的な「魔術」の行使を得意としていた。
もっとも、対艦攻撃魔術は隙が大きく、混戦状態のHF戦では使いどころが限られる。敵艦が着空した直後の今こそが、彼にとって最大の好機であった。
第一中隊は、直掩としてガイとケイの二機を残し、新たな敵駆逐艦隊へと急行する。中隊長のユイから、アラヤへ通信が入った。
『ブラックボマー、こちらブルーリボン01。護衛に03と04を付けたわ!』
「ブルーリボン01、こちらブラックボマー。了解だ」
『敵HFはこちらで引き付ける! 敵艦の方、少しでも削って頂戴!』
「任せておけ。……ブルーリボン03、04、よろしく頼むぞ」
『おう、派手にやらかしてやれ!』
人型対艦攻撃機は、早期警戒機や霊電子戦機と同様に零式をベースとしたカスタム機だ。その外装は
二機のHFを護衛に従え、アラヤは対艦攻撃が可能な有効射程へと到達した。機体をその場に静止させ、『かが』へとコンタクトを図る。
「レインボータワー、こちらブラックボマー。所定の位置へ到達した」
『ブラックボマー、こちらレインボータワー。了解。敵艦データを霊網でリンクする』
「リンク了解。――これより対艦攻撃を開始する」
『レインボータワー、了解。健闘を祈る』
アラヤは深く呼吸を整えると、操魂球内の仮想空間で両腕を伸ばし、複雑な印を結んだ。彼の動きに連動し、人型対艦攻撃機もまた厳かな手印を結んでいく。
「青龍、白虎、朱雀、玄武、勾陳、帝台、文王、三台、玉女。四柱神を鎮護し、五神開衢、悪鬼を逐い、奇動霊光四隅に衝徹す。光神の力を以て、悪鬼羅刹を滅する槍を現ぜん!」
HFの左右に、赤く燃えるような環状の霊符が幾重にも重なり合い、その中心に白銀に輝く神々しい槍が出現した。
「霊網同調。射距離・方位角・仰角、調整。目標設定完了!」
槍はさらに輝きを増し、鋭く伸長していく。
「
二本の巨大な光の槍が、漆黒の宇宙を貫いた。向かう先は、敵駆逐艦二隻。
アラヤの行使する魔術は、皇国の古式陰陽術をベースに、西洋伝来の魔術を融合・発展させた独自の体系だ。
今回放たれたのは
光子の槍が二隻の敵駆逐艦を直撃。撃沈の報が『かが』より即座にもたらされた。
「はぁ……はぁ……、ブルーリボン03、04。帰艦する。護衛を頼むぞ……」
『ブルーリボン03、了解。上出来だ、お疲れさん!』
魔術攻撃は、その威力に比例して霊探に極めて派手な痕跡を残す。このままでは敵HFの格好の標的となるだろう。何より、術者への精神的・霊的な消耗が激しい。これほどの規模の術式は連発できないのが、唯一にして最大の欠点だ。
三機のHFは、敵の追撃が及ぶ前に、全速力で母艦『かが』へと帰還を開始した。