【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第六十二話 崩壊
Part-A


『ユイ! 大丈夫!?』

「ええ、平気よ」

 

 なんとかヒルダを退け、もう一機と共に撤退させることに成功した。

 

 本当に、紙一重の勝利だ。薙刀が損壊した時にはどうしょうかと思ったが、おじい様の言葉を思い出して棒術に切り替えたのが功を奏した。奇襲に近い戦法だったが、それがなければ今頃どうなっていたか分からない。

 

 最後に繰り出した技は、低重力下ゆえに肩車のような形になってしまったが、本来は敵の鎧兜に飛び乗り、自重と筋力で首の骨を折り、そのまま引き倒して首を狙う。

 

 (いにしえ)の戦場において、鎧を着た将軍などを討ち取るための最終手段。だが、これを使えば自身も無防備に地に伏すことになる。周囲に敵兵がいれば、そのままなぶり殺しにされるだろう。奥義などではなく、まさに命を賭した捨身の技であった。

 

 まさに薄氷を踏むような勝負。次に戦って勝てる自信は、正直に言ってない。目の前に横たわるヒルダのHFアードヴァークの無残な姿は、一歩間違えればユイの零式の姿だったかもしれないのだ。

 

 だが、感傷に浸っている暇はない。すぐに出発したいが、手元には主武装がない。匕首(あいくち)だけでは、これから待ち受けるであろう難関を突破するのは不可能だ。

 

(ヒルダ、これ……借りるね)

 

 アードヴァークが手放していた長槍(ロングスピア)を拾い上げる。愛用の薙刀とは勝手が違うが、同じ長柄の武器として手には馴染んだ。

 

「さあ、急ぎましょう。アダムズ・クレーターへ」

 

――

 

「レ・ブルー5、敵機撃墜! これで5機目です!」

「グリーンフラッグ09中破! 戦闘不能のため帰艦します!」

「ブルーリボン03敵機撃墜! 自機も小破していますが、戦闘を継続します!」

 

 DDH-5184『かが』のブリッジには、HF隊の戦況が次々と飛び込んでくる。

 

「整備班、中破機体の受け入れ準備! 砲雷科、援護の魚雷を放て!」

 

 艦長、呉ナナ1等術佐の鋭い檄が飛ぶ。

 

 入ってくる報告は吉凶が入り混じり、ブリッジの面々は固唾を呑んでモニターを見守ることしかできない。味方が損害を受ければ救援を出すのみ。ナナは、そのもどかしさに歯噛みする。

 

 戦況全体を見れば、敵味方ともに約二割の損耗で拮抗していた。もしこの均衡が崩れれば、フリーになったHFが軍艦を襲う地獄絵図となる。味方に有利に傾けばよいが、敵に押し切られれば敗戦は必至だ。

 

 作戦の主攻であり、敵陣を突破したブルーリボン01が月面に到着したとの報告は既に受けている。彼女たちが機動要塞のコアを破壊するまで、この戦線を維持し続けなければならない。

 

「オーガー01、反応消失!」

「!?」

 

 コールサイン『オーガー01』。近衛仕様のHFを駆る春日ツクモ3等武佐の機体だ。ナナは思わず腰を浮かせそうになった。

 

「救援信号を確認! 機体は大破した模様です!」

 

 信号が出ているということは、操魂球(Cockpit Sphere)による緊急脱出に成功したということだ。ツクモ本人は、まだ生存している。

 

「直ちに救援魚雷を射出!」

 

 放出された操魂球を回収するため、無人回収機を急行させる。通常、脱出した操魂球を攻撃することは戦時条約上の禁忌だが、戦場では何が起こるか分からない。逆上した敵に狙われる前に回収するのが鉄則だ。

 

『こちらオーガー01。……すまん、落とされちまったよ』

 

 ツクモからの通信が、直接艦長席へと繋がれた。通信士の計らいだろう。ナナは公私混同を厭う立場ではあったが、今は彼の声を直接聞きたかったため、その越権を不問に付した。

 

「大丈夫なの!?」

『ああ、怪我はない。相手の赤いイーグルも脱出したようだ。なかなかの強敵だったが、なんとか相打ちに持ち込めた。約束通り、一機は落としたぞ』

「もう……分かったから、さっさと帰ってきなさい」

『あいよ。……あ、悪いが長曽祢虎徹も回収しておいてくれるか?』

「そんなものより、自分の身を心配しなさい!」

 

 突き放すように言って通信を切るが、彼女はすぐに刀の回収用魚雷も手配した。

 

 ナナは改めて姿勢を正す。ツクモの無事に安堵したが、戦闘はまだ終わっていない。前線で死闘を繰り広げるHF隊を、持てる力のすべてでサポートしなければならない。

 

 あとは、ユイの結果を待つのみだ。

 

「お願い……横田さん……」

 




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【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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