【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
地球自由連邦南西部にあるソルトレーク星系州ユタ星。主要産業は穀物農業や畜産で、適度に田舎で平和な場所――
連邦の領土再編で新たに赴任してきた貴族は元北東部の領主で、帝国の侵攻で領土を追われた……というより領民を置いて真っ先に逃亡してきた人物だ。
その伯爵は12貴族の親戚で、その権力を使って赴任。3ヶ月前くらいから領地経営を始めたが、以前よりも重税を強いており評判は芳しくない。
現在、帝国の侵攻で破壊されたカノープス運河とサルガス運河の施設は未だ再建の途上にある。霊符着空機などがなくとも安全性を犠牲にすれば航行自体は可能だが、わざわざ危険を冒す船乗りはいない。また
断絶された北東部だが、帝国の侵攻で連邦貴族がいなくなってから相応の時間が経ち、独自の経済圏を確立しつつある。連邦政府は南西部だけでも経済が回っており、北東部に興味はなく放置中。それよりも現体制を維持するのに手一杯で構っていられないというのが本音だった。
そんなユタ星の中規模都市。そこは宇宙港と各農地などの中間地点にあり、周囲の領民が食料や衣料、生活必需品などを買い求めるため、それなりに賑わっていた。
ここは地球時代にヨーロッパに住んでいた人々が入植したため、建物なども古いヨーロッパの街並みを再現している。
中心部にある商店街は大きな歩道が中央を貫いており、ランドマークになる噴水の周りが買い物客の憩いの場となっていた。
その噴水の前にある簡易ステージ上で、一人の女性が演説を行っている。周りには買い物客や周囲の民衆が大勢集まって、その演説に耳を傾けていた。
女性は太もも辺りまで伸びたストレートの輝くような金髪で、見目麗しい顔の横に一筋の髪を垂らしている。そこには青く細いリボンが編み込まれていた。青を基調としたワンピースは庶民的だが、それでも抑えられない気品を滲ませている。
熱心に演説を行う彼女を、聴衆から少し離れた脇道の入り口で見張っている男が2人いた。彼らは目立たないような服装で、小声で会話を交わす。
「あれが話題の?」
「ああ『青の聖女』と呼ばれている女だ」
「貴族制度批判をしているんですよね? 逮捕できないんですか?」
「直接的な批判ではないからな。平民の不満を聞いて回っているようだ。集会自体は連邦法でも州法でも禁止されてはいない」
女性は各星系州で集会を開き、人々と対話して今の制度の問題を提起。意見を聞いて自分の考えを伝えていた。その活動は銀河ネットで徐々に広がっており、特に帝国の侵攻で一度解放された民衆は、その女性を『青の聖女』と呼び、貴族制度に疑問を持つようになってきている。
男たちの目的は『青の聖女』の排除にあるようだった。