【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
しかし、強大になり敵のいなくなった連邦の領主たちは金儲けに走り、それまでの協調路線は競争へと発展した。各州で上下の序列を決めるようになったのだ。
そのために作られたのが爵位である。広大な領地を持つ領主は
爵位が制度化されたことで世襲が固定され、競争はますます激化していった。
金儲けの下手な貴族は発言権を失い、没落していく。競争に勝つため、本来は領民を守るべき領主が領民を食い物にする。そうして成り上がろうとしたのだ。
『ちなみに、金儲けに長けていたのが現在の12貴族で、始まりの四家はあまり得意ではなかったようです』
「ああ、なんとなく分かります……」
母はおっとりとした、ほわほわとした人だったと聞いている。確かに、金儲けとは縁がなさそうだ。
『もし『王』がいれば傲慢な貴族を抑えることもできますが、連邦首長は貴族の中から選ばれるため、彼らに対して従順なのです』
『そうして絶対貴族主義などが台頭し、連邦の状況は末期的なものとなりました』
「はぁ……」
皇国で平和に暮らしてきたせいか、正直なところ実感が湧かない。
『前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。ユイさんのお母様は、ある人物に呼ばれました。それが先日、テロで殺害された前連邦首長と前教皇なのです』
「え?」
『今の連邦の腐敗を憂う層は、一定数存在します。しかし12貴族の力はあまりに強大で、なかなか行動に移せません。そこで始まりの四家の末裔に、12貴族打倒の象徴となっていただき、世論を味方につけて革命を起こそうとしたのです』
「それが、お母さんだったんですか?」
『ええ。現在の貴族と比べて、始まりの四家の人気は依然として高いままです。今の爵位では測れない格がありますから。始まりの四家が旗揚げをするのであれば、追従する貴族も多いでしょう。これが、12貴族が始まりの四家を排除しようとする理由です。ユリアさんの計画は、道半ばで頓挫してしまいましたが……』
「なぜお母さんは、そんなことを……」
ユイが知る限り、始まりの四家は暗殺や亡命によって消滅していたはずだ。唯一、母であるユリア――ユリアーネ・マリー・フォン・デヴォンポートだけが生き残りだったのだろう。
しかし、ユリアは安全な皇国へ逃れた身でありながら、なぜ危険な連邦に戻ったのか。
『ユリアさんは、非常に高潔な方でした。困っている人がいるならば助けたい。持てる者には、その立場に応じたなすべき務めがある、という精神をお持ちだったのです』
「それって、ノブレス・オブリージュ!」
『はい。ユイさんからも、同じ高潔さを感じます』
ユイは母が遺してくれた唯一の言葉を思い出す。母が何を思って連邦へ向かったのか、その理由が分かった気がした。
「……スージーさん」
『はい』
「私も、連邦へ行ってもいいですか?」