【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
「なにしてるのさ? 母さん」
「な、な、な、何を言っているのかしら?」
突然のレイの言葉に、動揺を隠せないスージーが目を泳がせる。
「その演技、十代半ばというより初等部低学年だよ」
「え? そ、そうかな……」
「やっぱり
「……」
レイの誘導に引っかかったスージーは、一転してスンとした表情になった。
「何で分かったの?」
「母親との死別が、物心つく前だったユイと違って、僕は当時7歳だったからね。いや、実際は死んでなかったみたいだけど」
「でも、背丈とか全然違うじゃない?」
「髪の毛、顔、声、あと匂い?」
「におっ!?」
スージーは自分の腕をくんくんと嗅いだ。
「いや、匂いそのものじゃなくて、気配とか空気かな。僕はそういうのに敏感なんだ」
「……本当にお父さんの言う通り、口が上手くなったのね」
嘆息して、落ち着いた表情を見せるスージー。
「その親父の言動も怪しかったから、前から疑ってはいたよ」
「あの人も嘘が下手だからね……」
「で、なんで生きてるのさ。そんな姿で」
「ある程度は知っていると思うけれど」
スージー・アツギ改め、レイの母親である星菱カズミは経緯を話し始めた。
きっかけは公表通り、HFの開発中の事故だ。詳細は機密になっているが、スージーの口からその詳細が語られた。
「試作の
「やっぱり
「えぇっ、そこまで知っているの? そうよ。次世代HFを目指していたの」
昔、ある国でAI戦争と呼ばれる事件が起きた。その時に活躍したのが
「
かわいらしく照れ笑いを見せたが、レイはノーリアクションを貫く。
「まあ、母さんのドジは置いておいて」
「置いていかないでよ」
「なんでそんな無茶をしたのさ」
下手をすれば命を落としていた行為だ。なぜそれほどの無茶をしたのか、レイには理解できなかった。
「そうね。泣き虫レイちゃんはともかく、ユイちゃんは武家だからね。必ずHF乗りになると思っていたから。彼女の未来のためにね」
「そっか。でも、生きていることを僕にも内緒にする必要はなかったんじゃない?」
この姿を機密にする理由は分かる。失敗したら若返りました、などと公表すれば、世の女性たちが放っておかないだろう。それはそれとして、実の息子であるレイにまで秘匿していたのはなぜか。葬式の時の涙を返してほしい。
「それに関してはごめんなさい。小さい頃は万が一を警戒して秘密にしていたけれど、成人に合わせて明かす予定が、色々忙しくてタイミングを逃してしまったのわ」
「忙しいって、今回の件? そもそも、なんで連邦にいるのさ」
身を隠すなら皇国でよかったはずだ。なぜわざわざ連邦まで来たのか。
「この姿から元に戻るために、ノーフォーク魔術同盟を頼ったのよ。あそこには双子の魔女という前例があるからね。結局、解決はできなかったけれど」
「え? その姿から戻りたいの? 若いままの方がいいんじゃない?」
「いやよ、息子より若い姿なんて。私は孫、曾孫、玄孫に囲まれて老衰で死にたいの!」
その割には、この状況を楽しんでいるようにしか見えないのだが。
「他に、このことを知っているのは?」
「お父さんと女帝陛下、その側近。それとフランクス国王陛下かな。ああ、あとハジメさん。ユイちゃんのお父さんにも知らせたわ」
「ユイには言わないの?」
「ええ。私は生きていたけれど、ユイちゃんのお母様、ユリアさんは本当に亡くなっているからね。ショックが大きいかと思って」
確かに、レイの母親だけが生きていたというのは、ユイにとっては残酷なショックかもしれない。
「まあいいや。今回の件、ユイを何かに利用しようっていうんじゃないだろうね。もしそうだったら、例え母さんでも容赦しない」
ユイ自身が望んだことならば力になりたいが、彼女を利用しようとするなら、それはレイの敵だ。例え母親であろうとも、そこは譲れない。