【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第六十七話 追跡
Part-A


「なにしてるのさ? 母さん」

「な、な、な、何を言っているのかしら?」

 

 突然のレイの言葉に、動揺を隠せないスージーが目を泳がせる。

 

「その演技、十代半ばというより初等部低学年だよ」

「え? そ、そうかな……」

「やっぱり()()だったんだ」

「……」

 

 レイの誘導に引っかかったスージーは、一転してスンとした表情になった。

 

「何で分かったの?」

「母親との死別が、物心つく前だったユイと違って、僕は当時7歳だったからね。いや、実際は死んでなかったみたいだけど」

「でも、背丈とか全然違うじゃない?」

「髪の毛、顔、声、あと匂い?」

「におっ!?」

 

 スージーは自分の腕をくんくんと嗅いだ。

 

「いや、匂いそのものじゃなくて、気配とか空気かな。僕はそういうのに敏感なんだ」

「……本当にお父さんの言う通り、口が上手くなったのね」

 

 嘆息して、落ち着いた表情を見せるスージー。

 

「その親父の言動も怪しかったから、前から疑ってはいたよ」

「あの人も嘘が下手だからね……」

 

「で、なんで生きてるのさ。そんな姿で」

「ある程度は知っていると思うけれど」

 

 スージー・アツギ改め、レイの母親である星菱カズミは経緯を話し始めた。

 きっかけは公表通り、HFの開発中の事故だ。詳細は機密になっているが、スージーの口からその詳細が語られた。

 

「試作の操魂球(Cockpit Sphere)をテストしていたのだけれど、そこから出ると、もうこの姿だったの」

「やっぱり(バイパー)を目指したの?」

「えぇっ、そこまで知っているの? そうよ。次世代HFを目指していたの」

 

 昔、ある国でAI戦争と呼ばれる事件が起きた。その時に活躍したのが(バイパー)という名前の機動兵器だ。現在の航空機型機動戦闘機の元となった機体である。その機動兵器は今のHFに匹敵するほどの高霊子出力を誇っていたが、現在に至るまで再現は不可能とされていた。

 

(バイパー)はパイロットの脳をそのまま霊力増幅機(Aether Amplifier)にしていたのだけれど、それだと共鳴現象が起きてしまって再現できないの。それを研究して、共鳴を起こさないように調整できたはずだったのだけれどね。ミスっちゃった。てへっ」

 

 かわいらしく照れ笑いを見せたが、レイはノーリアクションを貫く。

 

「まあ、母さんのドジは置いておいて」

「置いていかないでよ」

「なんでそんな無茶をしたのさ」

 

 下手をすれば命を落としていた行為だ。なぜそれほどの無茶をしたのか、レイには理解できなかった。

 

「そうね。泣き虫レイちゃんはともかく、ユイちゃんは武家だからね。必ずHF乗りになると思っていたから。彼女の未来のためにね」

「そっか。でも、生きていることを僕にも内緒にする必要はなかったんじゃない?」

 

 この姿を機密にする理由は分かる。失敗したら若返りました、などと公表すれば、世の女性たちが放っておかないだろう。それはそれとして、実の息子であるレイにまで秘匿していたのはなぜか。葬式の時の涙を返してほしい。

 

「それに関してはごめんなさい。小さい頃は万が一を警戒して秘密にしていたけれど、成人に合わせて明かす予定が、色々忙しくてタイミングを逃してしまったのわ」

「忙しいって、今回の件? そもそも、なんで連邦にいるのさ」

 

 身を隠すなら皇国でよかったはずだ。なぜわざわざ連邦まで来たのか。

 

「この姿から元に戻るために、ノーフォーク魔術同盟を頼ったのよ。あそこには双子の魔女という前例があるからね。結局、解決はできなかったけれど」

「え? その姿から戻りたいの? 若いままの方がいいんじゃない?」

「いやよ、息子より若い姿なんて。私は孫、曾孫、玄孫に囲まれて老衰で死にたいの!」

 

 その割には、この状況を楽しんでいるようにしか見えないのだが。

 

「他に、このことを知っているのは?」

「お父さんと女帝陛下、その側近。それとフランクス国王陛下かな。ああ、あとハジメさん。ユイちゃんのお父さんにも知らせたわ」

「ユイには言わないの?」

「ええ。私は生きていたけれど、ユイちゃんのお母様、ユリアさんは本当に亡くなっているからね。ショックが大きいかと思って」

 

 確かに、レイの母親だけが生きていたというのは、ユイにとっては残酷なショックかもしれない。

 

「まあいいや。今回の件、ユイを何かに利用しようっていうんじゃないだろうね。もしそうだったら、例え母さんでも容赦しない」

 

 ユイ自身が望んだことならば力になりたいが、彼女を利用しようとするなら、それはレイの敵だ。例え母親であろうとも、そこは譲れない。

 




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【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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