【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
「そんなわけないでしょ。例え数年とはいえ、私がユイちゃんを育てたのよ。娘みたいなものだわ。それに連邦に渡ったもう一つの目的は、ユイちゃんのお母様、ユリアについて調べるためでもあったの」
「ユリアさんの?」
「ええ、当初は事故だと言われていたけれど、不審な点が多かったからね。調べるうちに12貴族の秘密に迫ったの。それが今回の件にも関連して、情報を入手できたわ。ユイちゃんが狙われているって」
「12貴族か……」
あらましはレイも聞いている。ユイを暗殺しようなど、到底許せることではない。
「でも、ユイちゃんがユリアの遺志を継ぎたいと言った時は、正直嬉しかったわ。危険ではあるけれど、ユリアの娘らしい決断よ」
スージーことカズミは、ユイの母親ユリアと親友だったらしい。レイはよく覚えていないが、親友というならそうなのだろう。ユイが自らの意思で選択したのであれば、レイはその道に従うまでだ。
「分かったよ。ユイの決断であればそれでいい」
「ユイちゃんのために、アナタにも働いてもらうわよ」
「もちろん」
「これから敵になるのは、千年近く連邦を支配してきた12貴族よ。連邦すべてを敵に回すようなもの。それには綺麗事だけでは済まないわ」
「うん、ユイには光だけを見ていてほしい。影の部分は僕が担う」
固い決意を宿した表情で、レイは即答した。
「もうそこまで覚悟が決まっているのね。……本当に成長したのね、あの泣き虫レイちゃんが」
「今年で19歳だよ。ちゃん呼びはやめてくれ」
「そうね。大きくなったわね……頭を撫でてあげる」
「断る」
スージーが頭を撫でようとしたが、身長差があって全然届かない。レイも頭を下げてくれず、すげなく断られる。
「いいわよ、飛ぶから」
「え?」
指をパチンと弾くと、スージーがフワッと浮き上がった。レイの背丈より高く浮き、頭に手が届く。魔術でしかないが、普通、生身では不可能な芸当だ。
「なにやってるのさ!」
珍しく慌てるレイ。こんなところを誰かに見られたら、と周囲を見渡したが、通行人の誰も注目していない。むしろ避けて通るように、誰も近づいてこない。
「大丈夫よ。人除けの術を使っているから。古代呪術の応用ね。この体になってからできるようになったの」
ふわふわと浮きながら、スージーはレイの頭をなでなでする。
「この力でユイちゃんを守るんだから。受け入れなさい」
「まあ、いいけど」
もう一度、指をパチンと鳴らすと、スージーがストンと降り、周囲も避けるような仕草を見せなくなった。術を解いたようだ。
その時、ちょうどユイがトイレから戻ってきた。
「ユイちゃーん!」
スージーがユイに向かって走っていき、抱きつく。ユイは困惑した表情ながらも、それを受け入れた。
(母さん、確か今年で四十(ピー)歳だったような……)