【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
上空から突如として現れたのは、HFF-16とは細部の装備が異なる青色のHFだった。それは立ちはだかる敵機を背後から一刀両断にした。
しかし、まだ終わってはいない。後方からさらに2機の敵HFが姿を現した。
『ローズ・ナイト。姫を頼む』
通信を繋いでいた元同僚、三沢ゴウガが別の機体に指示を飛ばすと、上空からさらなる一機が降下してきた。HFF-16をカスタマイズしたその青い機体は、左肩にペリースと呼ばれるバラ色のマントを装備していた。
『姫! こちらに!』
「ローズ・ナイト」と呼称されたそのHFの外部スピーカーから響いたのは、半年前の仲間だったフランクス人の女性、デルフィーヌ・ランディヴィジオの声だった。
「その声はフィー? それに姫ってアタシのこと!?」
デルフィーヌのHFが手を差し出した。ユイにそこへ乗れという合図だ。
レイは抱えていたユイを降ろし、HFへ向かうよう促した。ユイは戸惑いながらも巨大な掌に乗り、指を掴んで落ちないように身を固定する。
それを確認するとローズ・ナイトは跳躍し、上空へと退避して姿を消した。
「それでいい。ユイが最優先だ」
残されたレイに、再び通信が入る。
『バイパー・ゼロ。お前にはまだ働いてもらうぞ』
「ああ」
『2時方向を見ろ』
またしても唐突に、空中から青いHFがゆっくりと降りてきた。着陸した機体は片膝をつき、左手の手のひらを降ろして前面装甲を展開する。操魂球を露わにして姿勢を固定したその姿は、搭乗を促す降着ポーズだった。
レイにこれへ乗って戦えという意思表示だろう。
「乗ったことのない機体だ」
レイにHFF-16の搭乗経験はない。通常、機種転換を行う場合は、何週間もの訓練期間を要するものだ。
『あー、乗れば分かる。俺は1機を相手にする。もう1機を頼むぞ』
そう言い残し、ゴウガは通信を切った。
ゴウガの機体がゆっくりと動き出す。
HFが本領を発揮できるのは、本来は無重力の宇宙空間だ。
しかし重力圏内である惑星上ではそうもいかない。重力制御を用いると防御が疎かになるため、人間のように脚部を使って移動することになる。
それでも、40m級の巨人が動く様には凄まじい迫力があった。全力機動を行えば、その手足の先端は時に音速を超え、衝撃波を撒き散らす。それはまさに人型の嵐そのものだった。
HF同士の戦闘に巻き込まれないよう、レイは全速力で新たなHFへと駆け寄る。
外観はHFF-16ファイティングファルコンに近いが、細部が異なっている。HFF-16カスタムといったところか。塗装はディープオーシャンブルーとシャロウオーシャンブルーという濃淡二色の青色で塗り分けられており、かつての航空機に見られた洋上迷彩を彷彿とさせた。HFF-16の標準カラーである灰色とは明確に区別されている。
HFの手に乗ると自動で持ち上げられ、操魂球の目前で停止。レイは迷わず乗り込み、操魂球の中へと身体を溶け込ませた。
次に目を開けた時、彼は仮想空間のコックピットに座っていた。
「これは……」
コックピットの計器類を見て、レイは驚愕した。似ているなどというレベルではない。
コンソールを表示させ、システムバージョンを確認する。
”HHI-HFOS Ver.A6M.21”
これは、星菱零式人型機動戦闘機21型用OSのバージョンだった。
レイが乗り慣れてきた星菱零式HF、そのものだったのだ。外装こそHFF-16を装っているが、中身のフレームとシステムは零式のままだった。
ゴウガの言った「乗れば分かる」とは、こういう意味だったのだ。
意識を同調させて腕を動かす。慣れ親しんだ、心地よい感触が伝わってきた。
「ありがたい。これなら全力を出せる」
装備を確認すると、重火器はなく、HF用の刀がマウントされていた。その刀のステータス画面には、一つの銘が添付されていた。
”長曽祢虎徹”
確か、春日飛行長の私物だったはずだ。それを譲ってくれたということか。
レイはHFF-16カスタムを立ち上げ、鋭く抜刀した。
「バイパー・ゼロ、エンゲージ」