【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
レイはHFF-16カスタムを疾走させる。生身では固い荒野も、HFにとっては砂場のように心許ない。だが、砂上での歩法も修行済みであり、問題はなかった。
40m超の巨人が駆ける。一歩ごとに衝撃波が発生し、周囲のすべてを吹き飛ばしながら進撃する。もし歩兵や車両などが立ち塞がっていれば、ひとたまりもなかっただろう。
前方では、ゴウガが既に交戦を開始していた。
相手のHFF-16ファイティングファルコンは、
盾はHFF-15イーグルの大きく重い
対するゴウガのHFF-16カスタムも、同様の
当初、お互いに盾を構え、慎重に剣を合わせる様子見の攻防が続いた。しかし、操縦技術はやはりゴウガの方が一枚上手なようで、次第に敵を圧倒し始める。
ゴウガが敵の剣を弾き飛ばし、そのバランスを大きく崩した。絶好の好機が訪れる。
鋭い斬撃を加えるかと思いきや、ゴウガは深く踏み込み、なぜか左腕の小型長方盾を敵機の肩口へと叩きつけた。その瞬間、盾に接続された装置が牙を剥く。
轟音と共に装置から超音速の金属杭が打ち出され、敵HFの肩を根こそぎ粉砕した。直後、装置の排気口から巨大な薬莢のようなものが吐き出される。
「今の、なんだ?」
『パイルバンカーだ!!』
独り言のつもりだったが、ゴウガから即座に応答があった。
「何さ、パイルバンカーって」
『いわゆる杭打ち機だな! それを武装化したんだよ!』
確かに、射出された金属杭が相手を深く貫いていた。威力は申し分ないように見える。
「でも、普通に杭を固定して突き刺せばいいだろう? わざわざ撃ち出す必要はないじゃないか」
『それはロマンだからだ!』
「あっそ」
そんな漫才を繰り広げている場合ではなかった。もう1機の敵機が、ゴウガの側面に横槍を入れようと動いていた。
そこへ、レイのHFF-16カスタムが間一髪で割り込む。
レイは既に「長曽祢虎徹」を両手で正しく構えていた。時間をかけるつもりはない。
(テン・シント流太刀術四の太刀――
全力疾走の勢いを乗せたまま下段に構え、掬い上げるような斬撃を一閃。そのまま敵機の脇を通り抜ける。
敵HFの胴体は鮮やかに切断され、地面へと崩れ落ちた。その切断面は恐ろしいほど鋭利であり、「長曽祢虎徹」の凄まじい切れ味を物語っていた。
レイは油断なく次の攻撃に備えたが、周囲に敵の気配はなく、遠巻きに様子を伺っていた車両群も一斉に撤退を開始していた。敵HFのパイロットも操魂球から這い出して逃走し、仲間の車両に回収される。戦闘は終結したようだった。
『レッドヘアー。こちらブルー・ナイト。周囲クリアだ』
ゴウガのコールサインは「ブルー・ナイト」というらしい。武士を自称するくせに、とレイは思った。
『ブルー・ナイト、バイパー・ゼロ。こちらレッドヘアー。お疲れ様』
スージーの声が通信に入った。どこにいるのかとレイが周囲を見渡すが、何もない。不思議に思っていると。
前方の空間が陽炎のように歪み、空中に巨大な質量が姿を現した。
その輪郭がはっきりするにつれ、それまでの無音状態を破り、重力制御特有の重低音が響き始める。
それは、葉巻型をした漆黒の軍艦だった。外見は霊電子戦艦の趣を湛えている。
スージーが誇らしげに宣言した。
『ようこそ! 強襲霊電子空母『伊ー400』へ!』