【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-C

 スージーが強襲霊電子空母『伊ー400』と呼んだ軍艦にレイたちが収容されると、艦全体に熱光学迷彩の発展形が展開され、その姿は再び虚空へと消えた。

 

 そのまま惑星を離脱するが、本艦は霊電子戦艦でもある。対霊探隠蔽霊符術が施されており、霊探や霊測に引っかかることはない。敵が本艦を捕捉するのは、もはや不可能に近いだろう。

 

 新造艦内部の案内は、ゴウガが買って出た。レイを連れ、解説を交えながら通路を歩く。

 

 途中、十代前半とおぼしき二人の少女とすれ違った。彼女たちは、鮮やかな巫女装束を纏っている。

 

 少女たちはすれ違いざま、軍隊式の敬礼ではなく、ぺこりとお辞儀をして、きゃっきゃとはしゃぎながら通り過ぎていく。ニヤニヤとした顔のゴウガが手を振りながら呟いた。

 

「巫女さんはいいよなぁ……なあ、レイ?」

「……」

「どうした?」

「なんだか、乗艦してから気持ち悪くて……」

 

 口を押さえながら、レイが呻く。これまで乗り物酔いなど経験したことがなかった彼にとって、初めての感覚だった。

 

「ああっ! 悪い、教えるのを忘れていた」

 

 ゴウガには、レイの症状に思い当たることがあるようだった。

 

身体強化(Physical Magic)をしてみろ」

 

 言われるがままに意識を集中し、身体強化を施してみると。

 

「あれ……直った」

 

 先ほどまでの不快感が嘘のように、頭がスッキリとした。

 

「おう。それは霊子酔いだ。通常の艦船より霊電子戦艦は霊殻体(Aether Force Shell)内の霊子濃度が高いんだよ」

「なるほど。それで身体強化で霊子を消費すると直るのか」

 

 霊子酔いとは、許容範囲を超えた霊子を吸収することで生じる、乗り物酔いに似た症状だ。通常の軍艦ではそこまで濃度は高くないが、空気を介して霊子を吸収するため、男性は厚着、女性は薄着を好む傾向にある。

 

 一般に、女性は男性よりも霊力が高く、受け入れらる霊子量も大幅に違う。そのため、通常の霊電子戦艦には女性しか乗務しない。この艦においても、男性はレイとゴウガの二人だけのようだった。

 

「女性は逆に、肌を空気に晒すほど霊子を効率よく吸収して強くなる。つ・ま・り! 合理的な状況下であれば、ビキニアーマーにも戦術的な意味があるってことだ!!」

 

 ゴウガが拳を握りしめ、熱く力説する。

 

「なんの話だよ……」

 

 いつものように意味不明な持論を展開するゴウガに、レイは心底呆れた。

 

--

 

 一方その頃、ユイは艦橋を訪れていた。

 

「強襲霊電子空母……ですか」

 

 強襲霊電子空母とは、元々は汎ペルセウス帝国で開発された艦種だが、大八洲(おおやしま)皇国においても霊電子戦艦の空母化を狙い、試作が行われた。それがこの『伊ー400』である。正規戦では不要と判断されたが、今回の特殊任務には最適であるとの理由で、半年前から偽装と改修が開始され、なんとか運用に漕ぎ着けたのである。

 

「そう。突貫作業で半年で完成させたのよ」

 

 艦長席に座るスージーから説明を受ける。

 

 艦橋に詰めているスタッフは、すべて若い女性だった。その大半が巫女装束を着用している。

 

 最初に紹介されたのは、副長を務める女性、呉ナトミ1等術尉だった。

 

「ナトミは副長兼、霊電子戦の担当よ。私が不在の時は艦長として艦を指揮してくれるわ」

「初めまして、横田ユイさん。呉ナトミです。ナナ姉様……呉ナナ1等術佐の艦にいらっしゃったそうですね」

「ああ、ナナ艦長のご親戚ですか」

 

 彼女は『かが』の艦長、呉ナナの従妹だという。呉家は五大術家の一つであり、優秀な術士を多数皇軍に輩出している名門として知られている。

 

「でも、よろしいのですか? この艦に乗るということは、正規の軍務からは外れるということになりますが……」

 

 ユイの問いに、ナトミは誇らしげに胸を張った。

 

「はい! 連邦のビッ……魔女たちと戦えるのは望むところです! 『そうりゅう』の艦長はご存知ですか?」

「ええ、確か呉ナゴミさんですよね」

「はい、私の姉です。彼女は魔女と戦えない任務に回されたと、相当悔しがっていましたから!」

「そ、そうですか……」

 

 鼻息を荒くするナトミに、ユイは少し引き気味だった。

 

「ナトミの有能さは私が保証するわ。こんな風に、各方面の有能な人員と多大な協力があって、この『伊ー400』は動いているのよ。期待してね!」

 

 ユイはスージーの言葉を聞きながら、先ほど説明された艦の成り立ちを反芻した。

 

 『伊ー400』建造に際しては、帝国に打診し、強襲霊電子空母の運用ノウハウを譲り受けることができたという。その帝国では、3ヶ月前に新皇帝が即位していた。

 

 帝国はフランクスとの最終決戦『バトル・オブ・パリーヌ』で敗北し、敗走。その後、次期皇帝の座を巡る内乱へと発展したが、有力候補だったアルブレヒト熊公、ハインリヒ獅子公ともに、これまでの戦乱で疲弊しており、わずか3ヶ月で決着がついたのである。

 

 新皇帝はフランクス王国に賠償金を支払い、和平条約を締結した。皇国とも条約を結び、侵攻の意図がないことを保証。それに伴い、サッポロ条約機構も解散の運びとなった。

 

 新皇帝の名はジークフリート・ビルケンフェルト。そして皇妃となったのは、ヒルデガルド・ビルケンフェルト。ヒルデガルドの強力な後押しにより得られた情報こそが、強襲霊電子空母の運用に目処を立てる決定打となった。

 

 帝国と皇国、フランクス王国の技術と資金。スージーの伝手で連邦のHFメーカーから入手した最新機種。さらにはノーフォーク魔術同盟からの霊電子技術サポート。それらが集結した結果、本艦は現時点における銀河国家群最強の霊電子戦艦となっていたのである。

 

「ヒルダのおかげでもあるのね……」

 

 ユイとヒルダは帝国の機動要塞『月』で死闘を繰り広げ、ユイが勝利した。戦闘後に言葉を交わす機会はなかったが、今でも友人だと思ってくれているのだろうか。

 

「それにしても、ヒルダが皇妃だなんて」

「何を言っているの。ユイ、あなただってお姫様なのよ?」

 

 ユイの独白に、スージーが突っ込みを入れる。

 

「ええ……」

「あなたはこれから『ユイフィリア・ユリアーネ・フォン・デヴォンポート』を名乗って、12貴族打倒の旗振り役になるのでしょう?」

「そうですけれど……」

「なら、始まりの四家デヴォンポートのお姫様ね」

「うう……まあ、名前にお母さんの名前が入っているのは、嫌じゃないけれど」

 

「なら、覚悟を決めなさい。さあ、艦橋の皆に挨拶を。お姫様」

 

 姫という呼称には困惑するが、これから成すべき大業に比べれば些細なことだ。

 

「分かったわ。では、始めましょう! 連邦50億人を救う旅を!」

 

 ユイが凛とした態度で宣言すると、艦橋は熱烈な歓声に包まれた。

 

「まあ、その前に猛特訓だけどね!」

「あ……デスヨネー」

 

続く

 




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【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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