【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
連邦軍の軍旗には二頭の竜が描かれている。それは連邦軍黎明期の航空機型機動戦闘機を
シロウにとっても、その変更はショックだった。正面にいるアラスを見ると、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。やはり事前に聞かされていたのだろう。
納得のいかないシロウは問いを投げる。
「理由を伺っても?」
「端的に言えば、
リチャードの説明によれば、先の戦争で帝国が敗北したことにより、正規軍同士の大規模戦闘は減少傾向にあるという。今後は非対称戦に重点が置かれるようになり、これまでのような艦隊決戦ではなく、惑星上での戦闘が増えることを考慮した配置転換なのだという。
「つまり、主な敵は地上部隊になる、と」
「……HFで歩兵を相手にしろというのですか?」
「まあ聞け、シロウ。帝国との戦争により北東部が断絶されているが、あちらでも軍備の強化が進んでいるらしい。艦隊規模は小さいが、HFも保有しているようだ」
現在、北東部と南西部を結ぶ二つの運河が使用不能となっており、大規模な軍隊を送ることができずにいる。しかし、西側の
「そいつらが、我々の相手になるわけですか……」
「それだけではない。南西部でもデモやテロ、ゲリラ活動が頻発している。それらにも対処する必要がある……と、貴族の一部が主張している。臆病者どもめ」
リチャード自身も、この決定には納得していないようだった。
「象に蟻を踏み潰せと言うのか。まったく……」
(蟻、か……)
シロウは口には出さなかったが、リチャードのぼやきに微かな違和感を覚えた。南西部でのデモやテロにHFを投入する。相手は同じ連邦人のはずだ。連邦市民を守るのが連邦軍の使命ではなかったのか。
それ以上の質問がないことを確認すると、リチャードは改めて告げた。
「では、新規の編制と、それに伴う昇給・昇進を発表する。正式な辞令は後日送付するが、今は口頭で伝える」
師団となればそれなりの大部隊となるため、現在の階級のままでは指揮を執れない。
「アラス・エルメンドルフ」
「はっ!」
「
「拝命いたします!」
「本来、師団長は将官が務めるべきポストだが、今回は特例措置だ」
「次、シロウ・カデナ」
「はっ! はい!」
考えに耽っていたシロウは、一瞬返答が遅れた。
「
「拝命いたします!」
順に名前が呼ばれ、新たな所属と階級が言い渡されていく。
マクスウェルは第四、ビリーは第五、ラファエルは第六師団。そして階級はいずれも中佐から大佐へと引き上げられた。軍人としては若い彼らが大佐に任じられるのは異例の事態だ。それだけHF乗りの存在が重要視されている証拠でもあった。
「やった! 昇進だ!」
周囲の冷ややかな視線に気づかず、ラファエルだけが手放しで喜んでいた。能天気なものだ。アラスをはじめ、年若いビリーでさえ、この組織改編には疑念を抱いている。
「そして、ナイトメア」
「……」
「
リチャードは黒い動甲冑に向けて言い放った。階級も告げず、返事も待たない。
(あいつが『ナイトメア』か。コードネームか何かなのか?)
シロウは疑問を覚えたが、言葉を飲み込んだ。他のメンバーも沈黙を保っている。
「そして、私が
一通りの通達を終えたリチャードが退出すると、全員が敬礼で見送った。