【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
「まったく。軍が動かんから儂がやらなきゃならんじゃないか」
「そうですよね! 叔父さん!」
裕福さを象徴するような恰幅のいい貴族が、ソファーに沈み込みながら愚痴を言っていた。傍に座る痩せた若い貴族がそれに追従する。
ソファーの前のテーブルにはフルーツの盛り合わせなどが置かれており、太った貴族が時々手を伸ばしては、高級ブドウを数粒だけ食べ、残りを放り投げた。
まるで豪華な応接室のようだが、ここは軍艦の司令室だ。古い巡洋艦を個人的に買い取り、改造したものである。他にも2隻の駆逐艦が随伴している。
その3隻で構成された私設艦隊は、修復されたばかりの
目標は運河に近い星系州首都ボストン星。帝国の侵攻で統治していた貴族が逃げ出し、領主がいなくなった星系だ。
その逃げ出した領主こそが、ここに居る痩せた若い貴族である。
彼としては自分の領地に帰る認識だが、一度帝国に占領されてから解放され、既に自治を開始していた。民主的な方法でできた新政府は、戻って来た貴族を拒否。惑星への降下も禁止する。
事前にある程度情報を得ていた彼は、叔父であるフランシス卿を頼った。フランシス卿は12貴族の一員で強大な権力を持ち、独自の軍も持っている。
甥に泣きつかれたフランシス卿は連邦軍に打診したが、艦隊編成中のため断られた。憤慨した彼は私設艦隊を動かし、ボストン星上空に停泊した。
巡洋艦から脅しをかけるが、新政府は頑なに拒否してくる。
「司令! まだ降りられんのか!」
「申し訳ありません。あらゆるルートで問いかけていますが効果なく……」
ソファーの後ろに控えていた私設軍艦隊司令が、フランシス卿の怒声に答える。司令は元連邦軍人で、その実績を買われ艦隊司令に雇われた男だ。
「もう無視して惑星降下はできんのか?」
「いけません! 既にHFの反応をキャッチしています! 無防備に降下すると撃ち落とされてしまいます!」
新政府は軍備を固めており、HFも持っていた。そのHFは帝国が置いて行った重装甲のティーガーで、私設軍の旧式HFでは歯が立たない。
フランシス卿は正面の大型スクリーンに映った惑星を睨む。
「ふん、小賢しい。そうだ! ここから艦砲を地上の都市に撃て」
「な!? 駄目です! 軌道爆撃は地球条約に反します!」
惑星上空から艦砲などで都市に攻撃する軌道爆撃は、非人道的行為として地球条約で禁止されている。
もし行った場合、報復が報復を呼び、連鎖した大虐殺を引き起こしてしまうからだ。
「それは国家間戦争での話であろう?今回は単なる空き巣の駆除だ。首都ではなく中規模都市にでも攻撃すれば、連中震えあがって降参するだろう。甥よ。ちょっと領民が減ってしまうがいいか?」
ソファーの隣に居る元領主の甥に語り掛ける。
「はい! 叔父さん!
領民をまるで家畜扱いしている。あまりのことに司令が慌てる。
「いけません! そんなことをしたら!」
「おい司令。お前の爵位はなんだ」
「……子爵です」
「儂は?」
「侯爵であられます……」
「じゃあ分かるな?」
「はい……」
絶対貴族主義が蔓延している連邦では爵位が全てだ。逆らうことは許されない。
「弾種は派手に反陽子弾にしろ。ターゲットはそうだなぁ。あそこの首都の隣の中規模都市にしよう。目の前で吹っ飛べば抵抗する気も失せるだろう」
「はっ……」
司令は諦めて部下にインカムから命令する。
「艦長、私だ。砲撃戦準備」
『え?目標はなんですか?艦隊司令。何に砲撃を?』
階下にあるブリッジに伝える。唐突だったため動揺する艦長。
「座標北緯42度21分28秒、西経71度03分42秒の都市だ。弾種は反陽子弾」
『何を言ってるんですか! 軌道爆撃は禁止されています!』
「フランシス卿の御命令だ」
『そんな……』
「全て私の責任だ。君らは命令に従っただけ。聞かれたらそう答えろ」
『艦隊司令……』
「これは歴史に私の名前が残ってしまうな。虐殺者として」
『……了解しました』
5分後、惑星の都市に巡洋艦の主砲一門が向く。
中規模都市に向け発射された反陽子弾は数秒で到達。都市上空で炸裂し巨大なキノコ雲を発生させる。
一瞬で5万人が消えた。
30分後。新政府から降伏を伝える連絡が届く。
フランシス卿とその甥は手を叩いて喜んでいた。
「わっはっは! どうだ! 儂の言う通りになったろう!」
「はい! 叔父さん!」