【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
「聞いてはいたけど、ホントに若返ったのね赤髪。こんなに肌がモチモチに」
理事長室でスージーの両ほほを引っ張るアイナ。
「いひゃいいひゃい。はなひてー」
アイナが手を放すとパチンと元に戻る。
「いてて。アイナよく私だって分かったね?二十年ぶりくらい?」
「だってアンタ、その姿、学院のときのまんまじゃない」
「あ、そっか」
約二十年ぶりの四十代同士の友人。片方は年齢相応。と、言っても
「気になる?やり方教えようか?」
「……いや、どうせ魔術に失敗した結果なんでしょ。アンタはいつもそう」
一瞬間があったアイナ。スージーは魔女学校で成績は良かったが、よく魔術の実技で失敗もしていた。それでも挫けずに続けるからこその実力だろう。
「あ、ばれた。ところで理事長に用だったんじゃないの?」
「はっ!」
理事長室に飛び込んできた当初の目的を思い出す。
「り、理事長!12貴族を脱退しろとはどういうことですか!」
アイナが12貴族会議を欠席してまでしてここに来た理由。それは突然来た理事長からのメッセージだった。
「どういうことも何も、そのまんまよ」
カロリナ・ノーフォーク理事長は即答。彼女も2人と同じくらいの年齢だ。
「理由を教えてください!」
「貴女も知っているでしょう?ボストン軌道爆撃事件」
「うっ」
「あれでウチの支部も被害にあったわ。同盟員数十人が亡くなった。明確な魔術同盟への攻撃よ。これは看過できない」
ノーフォーク魔術同盟は各州に支部を持つ。そこは魔術師の互助会としてだけでなく、研究機関や技術開発拠点として機能している。支部と同盟員を失うのは技術情報も失うということ。技術情報の保護を命題にしている魔術同盟として許すことはできない。
アイナは12貴族である前にノーフォーク魔術同盟に所属する魔女。先々代が12貴族に加入したのは立場上都合良かっただけ。そもそもマルムストローム家の理念は魔術の探求だ。12貴族より魔術同盟の方が優先される。
「くっ!あのファッ〇ンフランシスが!」
見えない貴族を踏みつけるように地団太を踏んでると、スージーがニヤニヤしながら告げる。
「アイナ、今の内に12貴族を離れた方がいいよ」
「は?何言ってるの赤髪」
「カイヤ・ナンム・フォン・デヴォンポートって知ってる?」
「当たり前でしょ。魔術師の始祖であり魔法を極めた
始まりの四家の一つ。デヴォンポート家の初代当主ギルバート・デヴォンポート。その妻のカイヤ。魔術同盟を創ったアリーシャ・ノーフォークに魔術師の管理を任せ、自身はまだ世間に浸透していない魔術を理論的に纏め系統構築に尽力した。
「そう、その大賢者の末裔が生きていたとしたらどうする?」
「え?」
「その娘の名前はユイフィリア・ユリアーネ・フォン・デヴォンポート。未来の歴史書に載る名前よ」
だぶだぶで袖から手が出ていない腕を腰に当てドヤ顔するスージー。
「……まさかアンタが絡んでるの?」
「さて、どうかなー?」
スージーの顔をじっと見る。くるりと理事長の方に向き直る。
「理事長。分かりました。12貴族を脱退します」
「よく決断してくれたわ。お願いね」
「さすがアイリ!判断が早い!」
スージーのお気楽なセリフにギロっと睨むアイナ。
「アンタが絡むと碌なことにならないからよ!」
続く