【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

26 / 292
Part-C

 HF戦が始まったころ、『かが』及びDD3隻は、第三惑星ケブラ3229cに向かっていた。

 

 惑星上空の制空権を確保しておかないと、いざHFが大気圏内に突入するとき妨害に会ってしまう。敵艦隊も同様に惑星に真っ直ぐ向かっている。

 

「惑星領域侵入準備」

「了!惑星領域侵入準備!針路そのまま、両舷前進最微速!相対速度合わせ!」

 

 艦長の指示で、航海長が号令を出す。

 

 惑星は自転しながら恒星を公転し、恒星は天の川銀河の中心を周回し、天の川銀河は宇宙空間を疾走している。その速度は秒速600kmにも達し、惑星に接近するのも大変だ。

 

「HBLCフィン停止、イオンドライブ切替!艦長操艦!お返しします!」

「艦長操艦、了解。イオンドライブスラスター起動」

 

 惑星至近では、HBLCフィンが使用できないため、イオンドライブに切り替える。

 

 惑星の重力影響下に置かれ繊細な操舵が必要。そのため艦長が操舵を変わる。HFRで艦体同調している艦長にとっては自分の手足を動かすようなものだ。

 

 目の前には青い惑星がある。ケブラ3229cは当初海がなかったが、惑星開発公社が彗星を何個かぶつけ、海を作ったらしい。テラフォーミングは豪快だ。

 

--

 

 第04護衛隊の4隻は、『かが』を先頭に単縦陣で惑星低軌道に沿って移動する。

 

 この艦隊行動は、事前に艦長4人で集まって決定した。『いなづま』艦長、佐世保フミ2等術佐を始め『さみだれ』『さざなみ』の艦長全員が女性だ。

 

 女性艦長は珍しいものではなく一般的。単純に男性よりも女性の方が平均霊力が高い。

 

 敵艦隊は惑星の反対に位置し、主砲の射角に入ったとたん撃って来るだろう。まずは惑星を盾にして接近する。

 

「このままでは頭を抑えられますね」

「いわゆる丁字戦法をやられる感じね」

 

 副長の指摘にナナは冷静に答える。

 

 艦橋の画面には、惑星低軌道上で艦隊行動している自軍と敵軍の状況が映されている。

 

 敵艦隊も単縦陣を組んでおり、このままでは同じ単縦陣のこちらとぶつかりそうだ。

 

 敵艦隊の方が先に進んでおり、こちらの頭を敵艦が横一列に抑え込む形になる。その場合、敵艦6隻全部の回転砲塔が向けられ先頭の『かが』が集中砲火を受けてしまう。

 

「艦長このままでは……」

「大丈夫。シミュレーションの予想通りよ副長。砲雷長」

『はっ!』

「砲戦準備、今から送るデータを諸元として」

『分かりました……これは?』

「砲撃タイミングはこちらから指示するわ」

 

 副長と砲雷長は疑問を浮かべた顔をするが、ナナは構わず各艦の艦長に連絡を取る。

 

「こちら『かが』、当艦の操艦、射撃管制と同調をお願い」

 

 3隻のDDから了解の返事を受ける。しばらくしてから、ナナが号令をかけた。

 

「全艦回頭!取舵90度!単横陣移行!」

 

 4隻全てが一斉に左を向いた。縦一列に進んでいた艦隊が横一列に変わる。

 

「全艦主砲一斉射撃準備!」

 

 惑星の影でまだ敵は見えていない。今砲撃しても敵艦に当たらない。

 

「砲雷長!5秒後に一斉射!」

『了!4、3、2、1。撃て!!』

 

 『かが』とDD3隻の前部砲塔から、一斉に砲撃する。

 

 いつもであれば光速の90%の砲弾を真っ直ぐ撃つことになるが、今回の砲弾のスピードはそこまで早くなかった。速度約8km/s。それは低軌道を回っている人工衛星の速度。

 

 砲弾は惑星の重力の影響を受け真っ直ぐに飛ばず、惑星の丸みに沿って飛ぶ。その先は敵艦隊の真横だ。

 

 敵もまさか惑星の影から撃って来るとは思っていなかったのだろう。回避行動をする前に砲弾が届き、敵艦の側面を直撃する。

 

「直撃合計32!敵艦6隻大破を確認!一部惑星に落下していきます!」

 

 霊測員の報告で艦橋が湧いた。

 

 砲雷長が感心したように呟く。

 

『いやー、まさか宇宙空間で曲射砲撃を行うとは……』

「よく当てたわね。砲雷長」

『艦長から頂いたデータのお陰です』

「砲術士を労ってね」

『了解!』

 

 これで惑星の制空権は確保した。

 

 もし敵HFが無理やり降下しようとしても、艦隊からの迎撃ができる。

 

 

「後は、HF戦の状況次第ですね」

「ええ。霊探員、HF隊の状況はどう?」

「はい、艦長。HF隊はこちらが圧倒しています。敵HFは残数が7」

「そう、そろそろHF回収の準備を……」

「待ってください!惑星上に感あり!HFと思われます!」

 

 霊測員の叫ぶような報告で艦長の指示が遮られた。

 

「霊紋解析中、データベース照合、ミコヤ29兵士型、敵HFです!」

「何ですって!?」

 

 惑星開発公社の人間は、戦闘開始前に全員退避していた。開発用資材は残っており、巨大なコンテナなどが並べられている。

 

 その中の一つの扉が動いた。少し開いたところで扉が弾け飛ぶ。コンテナの中から蹴り飛ばしたようだ。ゆっくりとHFが姿を現す。纏っていた黒いシートを投げ捨てた。

 

--

 

 HF隊でも皇国側が圧倒していた。特にブルーリボン01。ユイのスコアが飛びぬけている。

 

 小銃だけでなく銃剣や薙刀も使用して見敵必殺。前へ前へ、前方だけを見て速度を落さず次々に敵HFを落していった。ここまで11機撃墜。5機撃墜でエース判定だがそれを上回る。

 

『各リーダー。こちらホワイトアイ。敵HF残6』

 

 敵HFは残り少ない、後少しだ。そして今ユイが追っているのが、その内の1機。完全に逃げの体制に移っているようだが、零式の方が速い。追い付いて残弾を叩きこむ。

 

「ブルーリボン01、1機撃墜!」

 

 これで12機撃墜。銃剣も折れ小銃の弾も尽きた。後は薙刀のみ。

 

『各リーダー。敵HFより降伏信号。レインボータワーから降伏受諾確認』

 

 敵が降伏したことで戦闘が終了した。味方の状況を確認すると、大破2、中破4。大破は操魂球で脱出して人的損害はなし。敵は大破23、中破5。圧勝だ。

 

 ユイはやっと一息ついた。ようやく後ろのレイを確認する。

 

「02、こちら01。大丈夫だっt……」

 

 最後まで言えなかった。レイの乗ったブルーリボン02の姿を見て絶句する。

 

 02の機体はボロボロだった。

 

 小破判定だが、全身のモジュール装甲に着弾跡や刃傷が見て取れる。

 

 戦闘中はまったく背後からの攻撃がなかったから安心していたが、レイが身をもって守ってくれていたらしい。

 

「レイ!!大丈夫!?」

『こちら02。問題ない。行動に支障はないよ』

 

 思わずコールサインも忘れて本名を呼んでしまう。しかし、レイは冷静に返す。

 

「よかった……ごめんなさい」

『謝罪じゃなくて感謝が欲しいな』

「ふふっ、そうね。ありがとう!」

『うん』

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。