【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
グレース大聖堂の裏手に広がる広大な広場。そこに集った10万人の民衆は、一様にざわついていた。
ナノボットによる大型ビジョンパネルを見上げ、人々が顔を見合わせていると、群衆のどこからか声が上がった。
「青の聖女だ!」
その叫びは、一箇所に留まらず次々と波及していく。ざわつきは次第に大きくなり、ナノボット端末で銀河ネットを検索する者も現れた。ネット上にはすでに多くの情報が溢れており、彼女の顔写真も即座に一致した。
人々の動揺はさらに深まる。ネットの情報によれば、彼女は連邦各地に出没しては庶民と対話し、親身に相談に乗ったり、山積する問題の解決を示唆したりしているという。
少数ではあるが、実際に彼女と接したことのある人間もおり、興奮気味にその時の印象を周囲に語っていた。
『青の聖女』は、概ね好意的に受け止められていた。特に現状の連邦が抱える歪みについて、逃げずに提起する姿勢が民衆の強い支持を集めているようだ。
庶民に分け隔てなく接するその姿がエクス教の聖女を彷彿とさせ、常に青い服を好んで着ていることから、いつしか『青の聖女』という通称が定着したらしい。
情報が群衆の間に行き渡るまで、聖女教皇は沈黙を保っていた。そして、ざわつきが静まる絶妙なタイミングを見計らって再び口を開く。
『そして、彼女の仲間たちを紹介します!』
その宣言とともに、舞台に6人の男女が姿を現した。聖女教皇と青の聖女を挟むようにして、左右に3名ずつ整列する。
彼らは一様に青いローブを身に纏い、フードを深く被って顔を隠している。かろうじて体格の差で男女の判別がつく程度だ。
民衆の間に、再び困惑のざわめきが広がる。
しかし、右側に立つ男女2人がフードを外し、その素顔を晒した。ビジョンパネルにその顔が大きく映し出される。
「あ、聖騎士様だ!」
「ジョージ様!」
「ソフィア様もいる!」
聖騎士団の存在は、エクス教信徒の間ではあまりに有名だった。
特に、先の連邦軍による急襲に際し、聖都防衛の最前線で戦った聖騎士団長ジョージ・ホワイトマンや副団長ソフィア・エルスワースは、今や信徒たちの憧れの的であり、英雄でもあった。
不気味なローブ姿の集団に当初は警戒していた信徒たちも、知った顔が現れたことで安堵の溜息を漏らす。だが同時に、彼らは一体何者なのだろうかという、さらなる疑問が会場を支配していく。
次の言葉を待つかのように、広場は再び静まり返った。
『彼女たちは、この聖都を防衛するために真っ先に駆けつけてくれました。すでにお気づきの方もいらっしゃるようですが、『青の聖女』と呼ばれている彼女を中心としたグループには、聖騎士団からこの2人にも加わってもらいます』
聖女教皇自身も『青の聖女』の名を承知しているようだ。ネット上で自然発生した呼び名だったが、これで事実上、公式に認められた形となった。
『彼女たちはこれから、エクス教だけでなく連邦の民衆すべてを救うために活動します。では、『青の聖女』から直接お話を聞きましょう』
紹介を受けた彼女は、わずかに緊張を滲ませた表情ながらも、凛とした態度で話し始めた。
『皆様、初めまして。私の名前は、ユイフィリア・ユリアーネ・フォン・デヴォンポートと言います』