【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第七十五話 勝利
Part-A


「気が進みませんね、司令」

「そうだな、艦長」

 

 艦橋で不満を漏らし合うのは、第13空母打撃群(13th CSG)司令と、空母『フランクリン』艦長であった。

 

 『フランクリン』は空母打撃群の旗艦であり、司令部が設置されている。そのため艦橋は広く、大勢のスタッフが立ち働いていた。ただ、現在の軍艦において必須とされる人型出力炉(HFR)の姿は、そこにはない。

 

 皇国の艦船の場合、艦長がHFRに搭乗してエネルギー供給のみならず、指揮や操艦までも一手に担うのが通例だ。そのため、艦橋にHFRが鎮座しているのが一般的な光景である。

 

 対して連邦では、艦長は艦の指揮に専念し、HFRには魔女が交代で搭乗してエネルギー供給のみを行う。設置場所も艦橋ではなく機関部だ。分業による効率化を図ってはいるが、高い霊力を持つ元巫女の艦長がHFRと一体化して船体を強化する皇国方式に比べれば、純粋な防御力や反応速度では一段劣る。

 しかし空母は直接戦闘を想定しないことを前提としているため、大きな問題とはされていない。

 

 エセックス級空母『フランクリン』は、全長1,500mに及ぶヨークタウン級巨大空母には及ばないものの、それでも全長1,300mを誇る巨大な機動要塞である。乗員3000名以上、艦載機としてHFを40機、航空機型機動兵器を80機以上搭載。さらに惑星揚陸用の揚陸艇と地上軍をも収容しており、一隻で小国の軍隊に匹敵する戦力を持っていた。

 

 だが前述の通り、自衛武装は近接防御用の光子砲のみと心許ない。そのため空母を護衛する重力子魚雷巡洋艦(CG)や駆逐艦(DD)が不可欠であり、それらが集結して空母打撃群を形成している。

 

 現在、艦隊は空母防御のための球形陣を敷き、カノープス(Canopus)運河の防衛任務を離れて航行中であった。

 重要な任務を一時放棄してまで命じられた作戦――それはエクス教の聖都を急襲し、たった一人の少女を拘束することだ。

 

 熱心なエクス教の信者でもある司令や艦長にとって、これほど気の進まない任務はなかった。

 

『艦長、全艦着空(touchdown)しました』

 

 霊探員の魔女から報告が入る。第13空母打撃群(13th CSG)が到達した銀河航路は、あと一回の次元弾道跳躍(Dimension ballistic leap)で聖都のある星系へと跳躍できる距離だ。

 

「そうか。全周霊探(Aether Rader)の結果はどうだ?」

不明艦(ストレンジャー)なし。至って静かです』

「分かった。各員、交代で休憩に……」

 

 艦長が指示を出そうとした、その瞬間。別の魔女が悲鳴に近い声を上げた。

 

『待ってください! 霊探に反応あり! 6時方向! 距離約5光分! これは……HFです! 速い! 50pls(光速の50%)で本艦に向けて急接近中! あと10分で到達!』

「なんだと!? 全周霊探では捉えていなかったはずだぞ!」

『先ほどの探索では反応なしでした! 付近に敵母艦の反応はありません! HFだけが突然現れました!』

 

 次元弾道跳躍の能力を持たないHFが、単独でこの空域に存在できるはずがない。背後には必ず母艦が潜んでいるはずだが、霊探には何一つ映っていなかった。

 




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【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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