【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
「気が進みませんね、司令」
「そうだな、艦長」
艦橋で不満を漏らし合うのは、
『フランクリン』は空母打撃群の旗艦であり、司令部が設置されている。そのため艦橋は広く、大勢のスタッフが立ち働いていた。ただ、現在の軍艦において必須とされる
皇国の艦船の場合、艦長がHFRに搭乗してエネルギー供給のみならず、指揮や操艦までも一手に担うのが通例だ。そのため、艦橋にHFRが鎮座しているのが一般的な光景である。
対して連邦では、艦長は艦の指揮に専念し、HFRには魔女が交代で搭乗してエネルギー供給のみを行う。設置場所も艦橋ではなく機関部だ。分業による効率化を図ってはいるが、高い霊力を持つ元巫女の艦長がHFRと一体化して船体を強化する皇国方式に比べれば、純粋な防御力や反応速度では一段劣る。
しかし空母は直接戦闘を想定しないことを前提としているため、大きな問題とはされていない。
エセックス級空母『フランクリン』は、全長1,500mに及ぶヨークタウン級巨大空母には及ばないものの、それでも全長1,300mを誇る巨大な機動要塞である。乗員3000名以上、艦載機としてHFを40機、航空機型機動兵器を80機以上搭載。さらに惑星揚陸用の揚陸艇と地上軍をも収容しており、一隻で小国の軍隊に匹敵する戦力を持っていた。
だが前述の通り、自衛武装は近接防御用の光子砲のみと心許ない。そのため空母を護衛する重力子魚雷巡洋艦(CG)や駆逐艦(DD)が不可欠であり、それらが集結して空母打撃群を形成している。
現在、艦隊は空母防御のための球形陣を敷き、
重要な任務を一時放棄してまで命じられた作戦――それはエクス教の聖都を急襲し、たった一人の少女を拘束することだ。
熱心なエクス教の信者でもある司令や艦長にとって、これほど気の進まない任務はなかった。
『艦長、全艦
霊探員の魔女から報告が入る。
「そうか。全周
『
「分かった。各員、交代で休憩に……」
艦長が指示を出そうとした、その瞬間。別の魔女が悲鳴に近い声を上げた。
『待ってください! 霊探に反応あり! 6時方向! 距離約5光分! これは……HFです! 速い! 50pls(光速の50%)で本艦に向けて急接近中! あと10分で到達!』
「なんだと!? 全周霊探では捉えていなかったはずだぞ!」
『先ほどの探索では反応なしでした! 付近に敵母艦の反応はありません! HFだけが突然現れました!』
次元弾道跳躍の能力を持たないHFが、単独でこの空域に存在できるはずがない。背後には必ず母艦が潜んでいるはずだが、霊探には何一つ映っていなかった。